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良い子にするから

 昔、大きな赤い目をした黒い悪魔が世界を暗黒に突き落とした、その悪魔が倒された後も1000年の時を超え、今もなお語り継がれる邪悪。人々は赤い目を今でも恐れる。


挿絵(By みてみん)


 これはユーゴが広場でポーションを売っていたときのこと。


「珍しい、黒髪の青年がいますねぇ……」


 ユーゴを見ながらアキアラは呟く。彼の目の色は何色だろう、ここからでは遠くてよく見えない。黒髪青年はしどろもどろになりながらポーションを売ろうと頑張っているようだが、あまり調子は良くないらしい。アキアラは近くにいた子供冒険者パーティーに声をかけた


「こんにちは、少しいいですか?」

「はい、なっ!ひっ……な、何ですか……」

「な、なんだよお前!」


 少年少女達はアキアラの赤い目に気づくと身構えた。


「お小遣いをあげるので、あの黒髪青年のポーションを買ってやってくれませんか?その代わり……彼の目の色を僕に教えて欲しいのです」

「お、おう……」


 硬貨をちらつかせて少年少女を向かわせる、……よかった、あの黒髪青年は子供を相手にして少し緊張がほぐれたらしい。……いや、いけない、あの黒髪青年は少年少女に3つのポーションを手渡した。値札には400の文字、僕は少年少女に1000しか渡していないのに。


「あいつの目の色はほぼ黒だったと思うぜ!」

「ポーション二つ買ったらひとつおまけしてくれたの」

「わかりましたありがとうございます。お釣りは持っていって良いですよ」


 少年少女は喜んで駆け出行った。黒髪青年を見ると冒険者達に群がられている、ああ、いけない、彼はどんどん冒険者達に3つのポーションを渡していた。最初は僕と同じ黒髪赤目かどうか気になっただけなのに……どうしよう……ああ、僕のせいだ。


「あわわ……」


挿絵(By みてみん)


 目の端に憲兵を確認する、いけない、僕は勇気を出して黒髪青年の前に出た。


「こんにちは」


 ここから先は皆さんご存じの通り、僕は追い払った黒髪青年のポーションを片手にその場に腰をおろした。


「ふう……」

「おい貴様」

「……何でしょう?」


 目の前に憲兵が現れた。


「この辺りでポーション取引法を無視した値段でポーション売買をしている輩がいると聞いたが」

「それはそれは、ゆるせませんねぇ」

「とぼけるな!!貴様のことではないのか!!」

「何のことだかサッパリ」

「ではその手に持っているポーションはなんだ!!」


 アキアラはポーションを右手でもてあそびながら答える。


「ついさっきここで商売をしていた商人から買った物です400ゴールドでね、ちなみにその商人ならあっちの方へ歩いて行きましたよ」


 でたらめな方向を指さす。


「ふざけるのもいい加減にしろ!!」

「では、周りの物売りに聞いてはいかがですか?……おや?貴方の剣幕に皆怯えて待ったようですねぇ」


 気がつけば賑わっているはずの市場なのに、二人の周りには円を描いたように人が似いなくなっていた。


「この悪魔の子が……」


 憲兵は捨て台詞を吐いて立ち去る、元々真面目に取り締まりをする気はなかったのだ。僕はいつものようにニヤけ面でそちらを見る、まるで何も感じていないように、何も気にしていないように、何も辛くないように。


『えっ目が赤いのって何か関係あるの?』


 不思議ですねユーゴ君、貴方は僕のことが大嫌いなのに一度だって目のことを言わなかった。


『髪の色も肌の色も瞳の色だってただそれだけでは人を殺すことは出来ないんだぜ!』


 そのユーゴ君は今、目の前でボロ雑巾のようになっていた、怒りで我を忘れた武闘家娘に思い切り蹴られたのだ。治癒術を施しても意識は戻らない、マドカ君が一生懸命ポーションを飲ませようとするがその口は全く動かない。ああ、僕のせいで、僕のせいで。


「……か…さん……」


 ユーゴ君が目を覚ます。


「……れは……ぃじょうぶ……」

「ユーゴ君!!」

「めんなさい……」

「ユーゴ!今は喋らないで!!もう大丈夫だから!」


「いたくないです……」


 僕は何を捧げても治癒師としてユーゴ君を助ける。先ほどの戦闘で限界に近い体と心を無理矢理動かした。

挿絵(By みてみん)

 


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