ごめんなさい
逃げ帰ってきたマドカ邸。
「すみません……」
「い、いいのよ!そもそも私がちゃんとポーション既定のこと話してないのが悪かったんだし……そのっ……そんなに落ち込まないでよ!」
ことのあらましを話したら、思いのほかマドカさんは優しくしてくれた。
「正直、あんたバカァ!?くらい言われると思ってました」
「泣きながら牛の世話をしてるアンタを見ちゃったもの……そもそも最初は子供を思ってのことでしょ?しかも憲兵から逃げられたんだからラッキーじゃない!だから、その、元気出しなさいよぉ……」
「情けなくて恥ずかしくて……」
「そうだ!今日は私が夕飯作ってあげるから!元気だs」
「やったーーーーー!!!」
「元気になるの早いわねぇーー!?」
ちなみに本来飯を作る仕事は俺です。
数日後
「よし!ユーゴ!勉強しなさい」
「俺マドカさんより計算できるからいいです」
「7×9は!?」
「63」
(計算中……)
「あってるじゃない!いやそうじゃなくて!」
実は、俺が前に作った徹底殺菌ポーションの保存期間が実際長かったらしく商人にレシピを売ることにしたらしい、その際俺に同席してほしいのでポーション取引規定なとなど商売について勉強しといてほしいとか。
「別にいいじゃないですか金なんて、それよりこのレシピを皆に広めて皆で使いましょうよ」
「アンタバカァ!?」
「ありがとうございます!?」
「何で感謝してんのよ!あのねぇ、そのレシピを悪徳商人が知ったらどうなるか考えたことある?」
悪徳商人?
「そりゃあそのレシピでポーション作って売るんじゃないですか?」
「違うわ、そのレシピを自分が作ったと偽ってレシピを高値で売るだけならまだしも、レシピを公開せず、周りにレシピ使用許可を出さずに高価独占販売するのよ」
「た、確かに!!クソじゃないですか!」
「だ・か・ら・私達がギルドに登録して売るの、分かったかしら」
「さすがマドカさん!賢い!美人!」
「も、もう、褒めても何も出ないんだから!お弁当作っといてあげるから午後には町へ出かけられるように準備しときなさいよね!」
「やったーーーーー!!!」
ここ最近はマドカさんの扱い方も一層分かってきて、俺たちの中も一層深まった……気がする、そして俺はあれ以来町に行くことは無かったが、今日はついに行くことになりそうだ。
「私が所属してるパーティーに治癒師兼商人の人が居るの」
「へぇ、変わった組み合わせですね」
「そうでもないわ、冒険者の言うとこの商人って経費とか税金とかの計算する人のことだから賢さつながりで魔法系職業と兼任してる人は多いの」
ああ、事務員とか会計士みたいなもんか
「で、その人をユーゴの先生として雇いました!今日は私と一緒に商売の基礎をお勉強しましょう」
「あれ?マドカさんも勉強するんですか?」
「たまには復習したらどうですか?とか言われてねー……正直めんどくさいわ」
マドカさん知り合いかぁ、どんな人だろう?俺たちはギルドの貸部屋の部屋を空ける。
「おや?あなたは……」
「……あぁーーーー!!!お前ーーーー!!!」
「えっ?何知り合い?」
そこにいたのは長い黒髪を後ろに束ね、眼鏡の奥に伏し目がちな赤色の目を隠している長身の男!!
「あのときのポーション泥棒!!」
「ポーション泥棒だなんて人聞きの悪い、僕は貴方を憲兵から逃がしてあげたのですよ?本当はポーション代だって払おうとずっと貴方を捜していたのです」
嘘つけ
「じゃあポーション代払いなさいよ、500ゴールド」
こっちも嘘つきだった、本当は400ゴールドだよ。
「冗談よ、アンタからポーション代は受け取らないわ」
「いえいえ、たださえあのとき赤字になってしまったようなのですから、受け取ってください」
赤い目がチラリとこちらを見る、ああそうだよ俺のせいで赤字だよ、クソッ
「ユーゴ、コイツはアキアラ、良く勘違いされるけど本当は良いやつなのよ、恐ろしく不器用なだけで」
「そうですよユーゴ君、僕は悪いアキアラじゃないです」
正直信用できないが、マドカさんの面子を立てるためにこの日は大人しくアキアラにポーション取引規定などなど教えて貰った。
マドカ離席中……
「……」
「……」
「ユーゴ君、そんなに見つめられると照れてしまいます」
「気安く君付けするんじゃねぇ」
「ユーゴさん」
「何」
「マドカとは中が良いので?」
コイツ!!マドカさんを呼び捨てにしやがった!!
「気安くマドカさんを呼び捨てにすんじゃねぇ」
「おや、失礼、僕はマドカ君とは幼い頃からの腐れ縁なので」
「お、お、幼馴染み……!?」
「ふふふ、そう言われると恥ずかしいですね、ああ、でも貴方が嫉妬するような仲じゃ無いですよ」
アキアラがニヤリと笑う、俺の心が見透かされて、踊らされているような気がして気分が悪くなった
「マドカ……さんが遅いから見に行ってくる!」
「はい」
俺は悔しさでいっぱいになって外に出た
「……ふふ、可愛らしい人ですね」
アキアラは怪しく笑う。
マドカさんを探しに行こうと部屋の外に出ると声が聞こえる、マドカさんは階段で女の人と話し込んでいた。
「マドカさん何してるんですか」
「あっごめん!その、友達と偶然会って、つい話し込んじゃって……」
「長いうんこしてるのかと思いましたよ」
「しし、失礼ねーー!!もう!悪かったわよー!!」
次の日、俺はポーション室でレシピを紙にまとめながら、何だかやっぱり自分が情けなくて鬱々としてしまった。
「はあ・・・恥ずかしいほど嫉妬してしまった」
そしてほぼ初対面の相手に見透かされるほど俺のマドカさんへの好意はただ漏れらしい。マドカさんにもただ漏れなのだろうか。
「マドカさん遅いな……夕飯作り始めちまうか……」
こっちの台所の使い方を早く覚えられたのは、マドカさんに美味しい料理を食べてほしいからだ。
「俺、マドカさんに男として見られてないかもな~」
そういえば最初は子供だと思われてたくらいだし、全然意識されてないかもしれない、こっちは完全に意識してるのに。
「まじかー」
思ってたより好きだなー!だってあんなにかわいい娘が近くにいたら好きになっちゃうよ!あの青い髪!健康的な肌!そして何よりあの笑顔!それでいて性格も明るくて世話焼きなんだから仕方がない、あれで眼鏡か猫耳なんて付けられたらたまらない。
「フフ、フフフ…」
「何一人で笑ってんのよユーゴ」
「ワッっマドk」
そこにいたのは眼鏡をかけたマドカさんだった
「眼鏡だーーーーー!?!?」
「え?あっ!かけたまま帰って来ちゃった!どうしよう借り物なのに」
「どどどどうしたんですか」
「ユーゴこそ……もしかしてアンタこういうの好きなの?」
眼鏡のマドカさんがニヤニヤ笑いながらこちらを見てくる、かわいい
「ハイ……実は……」
「ふふっ!しょうがないわね」
何がしょうが無いのだろう、もしこの後「はい♡存分に見ても良いわよ♡」なんて言われたらもう俺は空も飛べるよ
「はい!存分に見ても良いわよ!眼鏡!」
マドカさんは眼鏡を渡してくる
「わ、わーい、めがねだー」
「ふうん、もー本当に男ってこういうの好きよね!ちなみにこれはね!図書館で借りられる眼鏡の中では最新の物で従来品の物よりうんと軽くて私も家に帰ってくるまで全然気づかなかったくらいなんだけどそもそもフレームが」
眼鏡ってこっちの世界ではロマン的な何かを持っているのだろうか……
「いや、違う、違うんですマドカさん」
「え?」
少しでもマドカさんに男として意識して貰いたい、眼鏡も好きだけど俺は眼鏡をかけたマドカさんが可愛いと思ったんだ。
「マドカさん!俺はですね!」
眼鏡をマドカさんに返す、眼鏡が好きなのではなくて眼鏡をかけたマドカさんが可愛いんだ!
「眼鏡が好きなのではなくて眼鏡をかけたマドカさんが好きなんです!」
「へぁ!?」
俺は今なんと言っただろうか、マドカさんの顔が真っ赤になっている。
「あれ!?違います!!」
「違うの!?」
「眼鏡をかけて無くてもマドカさんが好きです!!」
「えっ!?」
「あっ!?」
数秒の沈黙
「アッッッ!!!」
俺は思わず森へ逃げ出した。
「……えっあっ、とりあえず眼鏡は明日返そ……」