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異世界転生したらペットたちが美人のモン娘になりました  作者: 爆微風


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第七十六話 馬車の旅路と思いやりと




 空は晴れだが曇は多く流れていく。

 俺たちは異界溢れ(パンデミック)を引き起こしているらしい黒衣(こくい)の存在の拠点を目指して、馬車を進めていた。


 情報源が闘技神(バルファロス)…… 神様だと言う状況に、以前だったら正気を疑っていたなぁとか思うものの、既にこの世界に慣れても居るのでとなりに座ったプチの寝息や、風景にはしゃぐキィクの表情にホッコリしたり。


 周囲は騎馬兵士に護衛されているので、剣星さまもへルートさんと昼寝していた。


 この馬車はコビニ侯爵からの借り物だ。

 アーマトへと向かうワケだけれど片道になってしまうかも知れないので、馭者(ぎょしゃ)ごと雇ってある。


 いつもの小型船(ボート)も積み込んである。

 が、上に乗せる時に車体が軋んだので重量オーバーじゃないかと少々心配だ。



「ご主人様、お顔の色が優れません…… 何かご心配が?」



 と横から、馬車の後方監視をしてくれているシーヴァが話し掛けてきた。

 護衛がいても全方位警戒してるんだな、俺の表情からそんなトコロまで理解してくれて。



「あー、うん。本拠地だとしたら、最終決戦でしょ。緊張もするよ」


「いいえ。ご主人様…… その他にも不安があるのですね。私では相談の相手として不足かも知れませんが、お話を聞くくらいならばいたします」



 さすがに付き合いが長い。

 俺の心情を察して、シーヴァは手を握ってくれた。

 ……あたたかい。


 ため息をついて、もう一度考える。


 絶望の訪れに近しい異界溢れ(パンデミック)

 それを操ると思われる存在、黒衣の者たち。

 その拠点へ、調査に向かう。


 どう考えても死亡フラグだ。


 しかし、今までは世界のためというよりも自分にできることをする、それだけの気持ちでやってきたのだ。


 今さら、誰かを生け贄にするようなコトしたくない…… だけど、みんなと一緒に来てしまったコトを後悔してる。



「ごしゅじぃん…… いっぱい食べてぇ……」



 と、寄り掛かっていたプチが、寝ぼけて俺の膝の上に倒れる。

 途端に、ふっと肩の力が弛む。


 ずっと緊張していたのだと、そこで気付く。

 ははっ、この幸せそうな寝顔には何度も癒された。



「これから向かうのは、敵の本拠地。危険度は今までの比ではないかも知れないし、危険なのがわかっているよね」


「ご主人様。あなたが為さるべきを成すため、私たちは居るのです。危険があらば、それを防ぎ立ち向かうのが使命。前世での心残りを、果たしたいのです」


「マスター、私もやっと鎧としての力を使えるようになりました。ちゃんとお守りいたしますからねっ」


「マニル…… うん、頼りにしてる」



 実際、マニルはチートキャラだから頼もしい…… しかし敵の(ふところ)に足を踏み入れてしまえば、他のみんなを俺が守るとも言い切れない。



「あるじ。帰ったら、みんなでまたおいしいお魚食べようね♡」


「ユルギ……」


《ぶわさっ、ピトピトッ》



 明るくニパッと笑う彼女に抱き締められ、羽根に包まれ…… いや水着みたいな胸元は直だから、離れて。



「生での接触はダメだってば。ソーシャルディスタンスっ」


「あん、やーだーぁあっ」


「ユルギ、いけません」



 うん、すっかりみんなのお姉さんだな、シーヴァは。

 今、18才の彼女はこの小さな俺を支えてくれて…… あの頃とすっかり立場が変わってしまった。



「ご主人様、お任せください。この身を賭して絶対にお守りいたします」


「それじゃ、ダメなんだよ」



 いつの間にか、俺の視界は歪んでいた。

 涙が、溢れて。



「俺は、君たちを絶対に傷付けたくない…… なのに、自分から危険に飛び込もうとしてる。何でこうなったのか…… 何でみんなを連れてきちゃったのだろうか。それを、今、とっても後悔してるんだ」



 したいことと逆の方へと進んでしまった現在を後悔して、そして温かな仲間を愛おしく思ってる。



「泣かないでください。あの、もしも私たちが傷付いてもご主人様が治してくださいますよね」


「うん、当たり前だ。絶対に治してみせる」


「なら、変わりませんよ。ご主人様は私たちが絶対に守ります。そして、私たちをご主人様が癒してくださいます。それなら、誰も死んだりしませんよね」



 ちょっと弛い語り口でシーヴァが言う理論は、どう考えても子供じみた考えで。

 でも、その気持ちはしっかりと、真っ直ぐに見つめられて届いた。



「ご主人…… 泣いてるの?」


「うぅん、だいじょうぶ…… んむぅ!?」


《チュ……》



 ()ぼけ(まなこ)のプチがそう(たず)ねたので答えると、彼女は顔を上げキスをした。



「ぬぁ」



 シーヴァから、普段聞かない声が上がる。

 ビックリして、俺も動けなかった。

 唇が、顔が、離れて。

 プチが真っ赤になっていた。



「ゆ、夢じゃ、ない……!?」


「う、うん、おはようプチ」


「プチぃいっ、何を#$%&*☆¥※!!」


「ぎゃあぁあぁっ!?」



 この後、二時間ほど馬車の周りを二人が駆け回るのだが、お陰で俺の心はだいぶ落ち着いた。

 ありがとう、みんな。


 薄目を開けて、剣星さまとへルートさんは嬉しそうに微笑んでいた。




 ☆




 港町だけあって、アーマトには船からの補給、救援物資が多く届いていた。


 この街へと続く街道に、第一の侵源地がある。


 さっき通り過ぎたばかりだが、そこはお父様が守り、ボレキさんが亡くなった場所。



「敵の襲撃を警戒して、見付かると逃げ場のない船での移動は控えていますが…… この街は半数以上の家屋が火災で焼失しており、廃墟となった区画には身を隠せる場所も多い。タズマ君。捜索する手段に心当たりはあるのかい?」



 もちろん。

 先行して内情視察というか斥候をしてくれているトットールさまが、俺を心配そうに覗き込む。

 デカイ近い。


 今は身を隠しているとしても、あの黒衣の者たちが潜んでいるなら…… 魔物を従えている可能性が高い。


 魔法として力を行使すれば、誰かが気付くかも知れないけれど…… 魔法になっていない魔法なら。



「回復魔法の基礎で、人間の身体を検査する力を使います。暫定的に捜査波動(サーチウェイブ)としておきますね。これで広範囲を調べたり対処したことなかったんですが、やってみたら可能だったので。魔物の反応をまず探してみようと思います」



 異常な箇所や内臓の損傷、骨の内の亀裂とかと『(まと)』を絞って調べる力だから、警戒していようと自分に向けられていなければ掛けられたって気付かないハズだ。


 だが、練習はしたけれどこの範囲は結構広い。



「【捜査波動(サーチウェイブ)】ッ……!! あ、居ました、魔物の数は、50…… 地下です」



 港から割と近い、倉庫の並ぶ地区だ。

 この街の中でもレンガを使用していて珍しいと感じたが、どうやら元々は貿易商社が魔法の素材などを貯蔵している場所だったらしい。


 そして、屋根が焼け落ちて今は人が近付かない区画…… 何者かが潜んでいても、おかしくはない。



「タズマ君が見付けてくれたのは魔物。まずは、その対処を念頭に。そして、黒衣の者たちの可能性を考慮して進むよ。良いですね?」


「はい」



 何が隠れているのか分からない闇に、いざ……!








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