第五十五話 影の尾
重く苦しい時が、途絶えた。
深く深い眠りから叩き起こされた。
そのお礼をしてやったら、目覚めの使者は命を助けてと言う。
その願いも叶えたら、自由にさせてくれと喚く。
もう煩いので、魔法使いを残してみんな傀儡とした。
水路を掘っていた?
確保したのは死出の路だったなぁ。
しかし…… 待てよ、俺には今や、身体がない。
魔法使いの身体はあんまりしっくりこない。
もっともっと、良い身体が欲しい。
となると傀儡は捨てられないな。
身体を探すために、もっと傀儡が必要だ。
探せ探せ、俺の身体を。
あの白いヤツに封印された、俺の身体を……。
そして、俺を殺した武器を壊すのだ。
きっと、魔法の武器に決まっている。
殺された瞬間が思い出せないが、叩き起こされた時に似たような体験をしたと感じた。
きっと、叩き潰されたのだ。
さあ、探せ探せ。
傀儡たちよ探せ。
……と、魔法の武器を探していた時、傀儡としやすそうな女を拐ったが。
なかなかイイ…… 収まりが良いな、気に入った。
しばらくこの身体に入っておこう。
悪意を振り撒くのに慣れているのは、実に心地イイ……。
さあ、もっとだ。
もっと壊せ。
もっと探せ。
混乱を起こして、魔導素材をかっさらえ。
その成果を使い、また『異界溢れ』を引き寄せてやる。
世の終末を堪能し、必然の不幸に酔うがいい。
「猟犬が語り、死人が歩く。さあ空の裂け目を目撃しろ」
☆
魔物の死骸が、街道の端に転がっていた。
どうやら通りすがり、兵士に退治されたのだろう。
焼け焦げた跡が残るソレらは、魔法使いの手柄だが…… 他にもその先々に転々と黒い塊が残っていた。
「ああ、前回の…… 港街コームの『侵源地』の影響だろう」
「ここまで、届いてるんですね」
俺たちは今、王都の東、竜爪山の麓にいる。
前の異界溢れによって魔物が増え、王都の一部でも立ち入り困難となった森があった。
そして、港街コームの更に東、大教会が管理する緩衝地帯、今や大穀倉地帯となった『大教会領』にも魔物が多く住み着いているので、その魔物退治に出張しているワケだ。
「ランダー伯爵…… 今回の作戦、掃討戦ですが、あの、私の探索魔法が作戦の要となっているのが、すんごいプレッシャーです……」
「ふふふ、泣き言は聞かんぞ。タズマ殿の仲間の大魔法使いが距離を置いて同じく北上してくれるのだから、ペースを合わせられる君に全部乗っかるしかないんだよ」
「うう、がんばります……」
「ご主人はボクが守るよ、安心して」
「うん、ソコは疑ってないさ」
「んふんふん、にしし♡」
魔物の津波、デスマーチによって奪われた村も、騎兵隊により何ヵ所も開放されている。
国が軍勢を出しての『解放戦線』により、安全地帯は街道を起点にドンドン広がっていった。
軍勢は犠牲を少なくして進軍しているので、人々の希望として待ち望まれていた。
「そんなに固くなることもないぞ? 幸いと言おうか、ここには精鋭で当たると決まっていたし、二千もの軍勢が一度通過したのだ。魔物の数も少なかろう」
「そういうのが匂わせなんですよぅ。無事に済めばいいんですが……」
だが、俺の心配はここでは発生しなかった。
「閣下、東の軍勢百名、無事に帰投いたしました!」
「ごくろう。しかし僅か二十九体しか居なかったか。こちらも三十二体、掃討戦としては肩透かしだな」
「午前中で済んで良かったですよ」
「範囲が広い探索魔法の使い手だからこその追い込みだったぞ?」
当然、隣の探索魔法の使い手は大魔法使いのキヨ。
そちらの護衛にはシーヴァとユルギを配置した。
俺も肩書きは大魔法使いなので、その二人による掃討作戦だった…… ソレは無事に終わったのだが。
フラグは折れなかった。
北東の空、竜爪山の向こうに『死の帳』が降りてきたのだ。
「紫色の、空……!」
「前回から、約一月…… 見上げた早さだな、チクショウ!」
「馬車を出せ、タズマ殿は剣星様と合流を!!」
「分かりましたっ! プチ、掴まってくれっ、【浮遊飛行】!」
「にゃにゃぁん♡」
ここからなら距離は近そうだが、俺の役目は『最大戦力を運ぶコト』である。
移動力を活かし急行するにも剣星様が居なくては叶わない。
ああタイミングが悪い…… そう思いつつ、何よりまずは合流と、近くの村に待機してもらっているへルートさんと剣星様を思っていた。
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