第四十一話 修行、街道、鍛練行軍
「このままじゃ経験不足もいいところだ。少し遅れたとしても、やはり実戦経験は欲しい。あとスキルの運用もね」
昨日は、城塞都市マウロスの周辺の生活圏確保を成し遂げた。
が、それは自分の能力とは言い難く、ただ『付与魔法三種盛り』を仲間に掛けて任せただけ。
自分の手で魔物にトドメを刺すのも経験していない。
これでは、乱戦になったり、いざというときに何も出来なくなりかねない。
「なので、しばらく【浮遊飛行】は使わず、街道を歩いて進もう。第二侵源地に近付くから、激戦になるかも知れないけど…… いいかい?」
「私はご主人様の剣となり盾となるだけです。わぅん」
「ボクも構わないよ。その方がくっついていられそう」
「わっちもかまいやしまへんけど…… タズマはん、休憩ん時にゃあ、わっちを寝床にしておくれやす……?」
「あるじー、あるじー、飛ばないの~?」
賑やかな旅だなあ。
まぁ、暗くなるよりはいい。
そうして、俺たちは街道を東へと進み始め…… 昼前に魔物の集団と接敵した。
「うおー、あーるじー、黒いのいるよー」
「どれくらいだ~!?」
「おっきーのと、おっきーのと、でっかいのと、ちゅうくらいのと…… たくさん」
「うん、ありがとう。大型がいるなら、キヨ、一緒に前進しよう」
「はいな。うれしぃわぁ♡」
「プチ、俺とキヨのガードを頼む」
「はーい。昨日焼き菓子も買ってきたから、お茶の時に出すね」
全く緊張感がないのも、どうかと思うんだよな……。
「シーヴァとユルギは前衛で、出過ぎないで一撃離脱、いいね?」
「はいっ!」
「バシバシぴょーんだよね、知ってる知ってる!」
少し不安だが、ちゃんと昨夜話したから信用しておく。
「行くよ!」
☆
結果。
ここではコンビネーションも学べなかった。
あ、ユルギは普段の会話より戦闘に関してのことのが覚えがいいという事は分かった…… さすが猛禽類。
皆にかける付与魔法はレパートリーが少ないので、代わり映えのないものの。
今回は俺のスキル『支配者の祝福』の検証をしたかったんだけどなぁ。
相手の魔物が『クモ』タイプで。
《カサカサカサカサカサ……》
「ひんっ、ひいああああ……」
「ど、どうしたキヨっ!?」
目の色を変え、構えも取らず、キヨは大魔法で森を凍てつかせてしまったのだ。
「尽く冷気の腕に抱かれ永遠に眠りつけ……【氷柱の墓場】!」
《キン…… キンキンキン…… ピシッ》
「うううわっ、シーヴァ、ユルギ、無事か?」
「はい、ご主人様!」
「寒いよぉ、ちょっとお」
「はぁん、かんにん…… かんにんしておくれやす…… クモはあかんのよ……」
「そっか、昔からクモは食べられなかったもんな。仕方ないよ」
キヨの前世は『アオダイショウ』だが、怪我の治療時、餌として虫を捕まえてもクモだけは食べなかった。
普通は食べられるハズが。
「食べず嫌いなんは分かっとります。せやけど、この身体でも受け付けられんのです…… うう、クモだけはあきません」
まぁ凄い魔法を見たよ、さすが大魔法使い…… これだけの魔法を使えるヒトは少ない。
更にその中でも、頂点と言われる魔法使い『賢者』ともなると最上級クラスを並行して使えるらしいんだよな。
「まぁまぁ。キヨの不得手を忘れていて悪かった。次からは気を付けるよ。慎重にいこう。この先はもうそろそろ王都の管轄、侵源地とはいえ人通りが増えてくるハズだから、大きな魔法は控えようか」
と、思っていた瞬間が俺にもありました。
「魔法で落とせる?」
「分かりました。風の守りは我が手に依りて…… 【撹拌風車】!」
飛行タイプが三十匹いっぺんに出現とか。
「助かりますキヨ、ふぅうっ!」
「討って倒して誉めてもらお」
「コイツらまずーい」
「ダメだぞ、ぺっしなさい」
その後、角の生えた黒いトカゲ十体だとか。
「く、硬い」
「ご主人、何で仕留める?」
「攻撃は『刺突』、魔法は風系統氷結、収束して!」
「はい、【氷柱撃】!」
「刺突蓮華・惨ッ」
「旋風斬りッ」
「ばーん☆」
硬化魔法をまとった、とても大きなサソリ型の魔物数体とか……。
先に誰かが通っているハズの街道は、魔物だらけだったのだ。
「まさか、ここまで多いなんて……」
もうすぐ港町ビゼが見えてくるハズなのだが…… そこは冒険者ギルドも置かれるような大きな町だ。
前世の独り暮らしは港の近くで、この地形は何とはなしに懐かしい。
だが、到着直後にまた戦いになる。
「町が襲われてるっ、キヨ、魔法でまた空中の敵を落として!」
「はぁい」
先に駆け出したプチとユルギに付与魔法をかけ、今度はスキルでキヨを『強化』する。
「キヨ、俺のスキルを使うっ」
「よろしく頼みますぇ」
付与魔法と同じように、その程度の認識で『支配者の祝福』をキヨに対して発動する…… 途端に、既に放っていたハズの魔法【撹拌風車】が勢いを増した。
そんな異常に、放った本人は……。
「こ、こんなぁっ、タズマはんん♡」
なぜか悶えていた。
でも、このスキルを使ったのは初めてじゃないハズ…… 魔法がこんなに強くなってる理由が分からない。
あと、未成年なので、あんまりそんな声を出すんじゃありません。
「タズマはん、初級が中級の威力になっとります。魔法の増強、なんぞ割り増ししはったんですか?」
「いや、そんなつもりは……」
何が影響したのか分からないが、今は都合がいい。
ただ、この不明点に関しては後でしっかり検証しようか。
「シーヴァ、お前にもスキルを使うよ」
「はいっ! お任せくださいっ! わぅん!」
そして、攻められていた跳ね橋付近の戦闘を終了させる頃には、日が陰っていたのだった。
☆
「助かりました。お強いのですね、そちらの亜人の戦士たち、そして亜人の大魔法使いさまは。先代町長に代わり、お礼申し上げます」
たくさんの人々が亡くなった侵源地では、しかし王都からの軍勢によって町の周辺を取り返し、駐留した騎士たちが出入口を守るようになり、見張りを立てて弓兵を配置し、守りを固めていた。
しかし、先ほど飛行型の群に襲われ、窮地に陥っていたのだそう。
町長の役職を引き継いだ彼は、俺が一応このパーティーのリーダーだと知って恐縮し、子爵家の息子と知って恐縮していた。
トップに居るにはちょっと頼りなかったが仕方ないよな…… がんばれ~、と、あんまり関わりないところでそんな感情に囚われた。
そして俺たちは町で一泊し、先の戦闘協力のお礼として連絡の馬車に乗せてもらえることになった。
キヨの身体が馬車にギリギリで収まったのは、あまり言わないであげて欲しい。
馬車の中では昨日のスキルの『増強』について考察し、フォーメーションについて話し、そんなこんなの旅路はこれで、一段落となるのであった。
一応、剣を使って魔物にトドメを刺すのもやった。
昔、前世のほうだが、池遊びをしていて、知らずに魚を踏み潰してしまった後の気持ちを思い出した。
この先、ためらわないようにはしたい。
何度か魔物の襲来もあったが、二日後、王都に到着。
この戦いの時に、国軍として戦うというのも実感はなかったけど…… 初めて訪れる都情緒は、これ以上なく気持ちを昂らせた。
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