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異世界転生したらペットたちが美人のモン娘になりました  作者: 爆微風


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第四十話 幕間その三 最古参の古兵




 前回の異界溢れ(パンデミック)どころか、前々回まで経験している古兵(ふるつわもの)はこの大陸にもそうはいまい、が。


 もう何年かで『剣星(けんせい)』を譲る予定だったものを、世界はどうにも空気を読まない。



「経験豊富な我が父にご指導願いたい」



 心にもない、が、領内の安全を図るために最善を尽くす名領主となった我が子、カッター侯爵の救援だ。


 協力は惜しまぬと、愛剣を片手に共に王城へと出頭した。



 公国の王、大公殿下からは『じいや』などと、ふざけて呼ばれているが、今回はそう言っている場合ではない。



「一同、自領の混乱の折に急遽の招集に応え、まことに大義である……」



 家臣団からの挨拶もほどほどに、一同の心を乱す一大事に話が移った。



「さて、常ならば四十年の輪を崩し、始まってしまった『異界溢れ(パンデミック)』について…… 公国としての意思を束ねておきたい」



 王都周辺の貴族を集め、緊急会議を開いた一番の議題だ。



「先日、ビゼの宿場町付近で第二の異界溢れ(パンデミック)があったと報告がありました。備蓄用の飼料も、糧食も今年は少ない。去年の不作があったから……」


「戦力として、既に冒険者ギルドには通達がされておりますが、今年くるとは思っていなかった部分が多々あり…… 城壁の整備ができておらず、最悪そこを攻められると王都の機能が麻痺する可能性も……」



 話し始めるとどいつもこいつも御託が多い。



「結末が肝要だ、至る部分はいい。可能性はいくらでもある」



 しかし、大公殿下はどうしたら良いのかが分かっていた。



「城の備蓄を開いて回せ。商業都市と大教会領の穀倉地帯を頼るため、使者を出せ。直せる場所は直せ。時間が掛かるならば放っておいて構わぬ、状況を理解し、対応すればよい」


「それは、しかし……」


「たかだか一年、パンとスープで過ごせばいいのだ」


「は、はははぁっ」



 儂の経験など、まるで必要はなさそうだ。

 そう思い笑っていると、ギョロリとこちらを睨まれる。



「じいや。お主の知識を披露してくれ。役に立たないとは、言わせないからな」



 まったく…… 平凡なサラリーマン家庭に生まれ、しかし不思議な出来事に巻き込まれ、この世界に『転移』し、自分の剣道の腕と『異能(スキル)』によって成り上がったが…… ここまで才気溢れる王は一人しか見ていない。



 御家騒動の気配すらない『賢王』の相談に乗れるというのも、逆に怖いか。



「さて。儂は必要ないような気もするんじゃが」


「休ませないぞ、兵力としても、軍師としても」


「老人は敬うモノじゃよ。まぁ、孫のような賢王に頼られるのは悪くないが」


「敬っておったぞ。年に二回の園遊会以外の責務は免除していた」


「儂は剣陣会の会長なんじゃ。国の(まつり)に引き出すでないというに」



 とにかく儂は、この賢王…… トーマラン大公殿下になるべく過去の事例を詳しく伝えた。


 無論、被害やどのような魔物が現れたかなどは資料も残っている。


 儂が披露するべきはそこではない、対応する時……『戦う』ための知識をこそ求められていると理解し、重点は絞った。


 魔法部隊を主力とした大型の魔物の殲滅と、歩兵部隊による哨戒・接敵と、騎兵隊と弓兵による防衛・戦線維持を運用として心がけ、騎兵隊のみでの運用は避けるように具申したのだ。



「騎兵隊のみで、過去に町を救った例もあったハズだが」


「それは運が良かっただけじゃ。大型の魔物が十もいたら、歩兵や騎兵隊では太刀打ちできませぬぞ」


「して、騎兵隊のみを避ける理由は」


「速いがゆえに、孤立の上での殲滅の恐れがあるからじゃ」



 機動力を活かそうと走れば、仲間からも離れる。


 この状況が加速していけば、魔物のいない場所のが少ない可能性もある。



「探知の魔法を活用し、不意の接触を避け、戦力の維持を第一にしてくだされ。相手は話の通じるモノではない。終わりが来るのが果てなく遠い。ならばこそ、安全を求めなされ」


「ふむ…… わかった。なおのこと、国庫を開かねばならんな」


「徴兵が始まれば、金は集まりますが物資は一気に減ってしまいますから仕方ないことじゃなぁ」



 おっと、歳をとると話が長くなっていかん…… そろそろ話を切って、後輩たちの意見なども聞かねばな。



「殿下の『ダイエット』にもなるかと……」


「うん、コレはなぁ…… 余も痩せたいので丁度いいわ。はっはっは」



 さすがに『賢王』でも、仕事柄の体型は気にしていたか…… 食事会のない日がなかったので、当然のメタボではあろうが。




 ☆




 徴兵された人員は、確認がとれ次第に軍の管理する港へと集められる。


 既に半分家を出ているようなあぶれ貴族も居るはいたが、国が大枚をはたいて作った『払拭の蒼(ブルーカラー)の剣』は一応身に付けてくれていた。


 中には生活に困り『売った』という犯罪者も居たので悪酔いに似た感覚を覚えるが…… それでも徴兵に応じれば許されるとでも思ったのだろう…… 無論、そんな恩赦はないので捕縛。



「いいか、貴族とは民を守る(つるぎ)なのだという証明がこれだ。何処かで魔物に襲われる命が、助けを求めている民が、その力があれば生き残れるかも知れんのだ。法的に貴族家の庇護下にある者全てに、また貴族とは名ばかりの成人にも、この剣を持たされるという責任感を理解して挑んでほしい」



 逮捕する場面でこんな高説を流さねばならず、年寄りの不幸を味わったわ。


 この剣は国が『貸し与えている』モノ、売り払えば買った方も刑罰が待っているというのに…… 身の安全を図りたい気持ちがそれをさせるのだろうが、なんとも世知辛く矛盾したことよ。


 とはいえ、ここに集まったのは継承順位三位以下の子供たち…… 貸与している払拭の蒼も、ショートソード型の者が多かった。


 そのせいで配置が面倒になっているのだが。



「家名と所持と人数を記載してから、再配置なのです。王都で兵士として雇うわけではありません! 出頭の早い方からご家族の近くに配置されるのは通例です、食事の配給は赴任先でのことで……」



 王都まで来て、食事ももらえず待たされるのか、と騒ぐあらくれ。


 金を払うためだけに夜を徹して参じた代行者はここには居ないが、傭兵を連れてたむろす貴族は多く…… 規律が取れていなければヤクザの集会と見間違いそうだ。



 魔法使いは出頭した先から伝達用の魔道具を持たされ、早馬で被害の大きな街へと配置されている。



 田舎の騎士や勲爵の出にも関わらず、覚悟を決めて並んでくれる者の異質さが悲しいな。



「で、どれくらい使()()()でしょうね?」



 もし戦闘になったら、という意味だろう。



「それを見るのもお役人の仕事だと思うんじゃがの~」


「私はお役人ではなく、出資者ですから」



 カッター侯爵、我が息子は貴族だが、剣の才能がないと自分から裏方に徹している努力の人だ。


 別に贔屓目によっての評価ではない。


 軍の管理にアドバイスをし、簡単な装備品の流通を助け、情報伝達の手助けをし…… 裏方で肝心なモノはほぼ関わるという細やかさのエキスパートとでも言うのであろうか、そんな存在だ。



「今のところ、目立ったステータスを持っている者も、これはというスキル持ちもおらん。つまらん。これなら剣陣会から何人か引っ張ってくるべきかも知れん」


「そこはお父様が指揮をとれば、こう……」


「やじゃよ、大声張り上げるのは。儂ももう歳じゃ」



 見栄というか、アピールしたい貴族も居る。

 (いくさ)(ばたら)きを待っていた者は少ないだろうが、それでも居ないわけでもないだろう。


 あとはそいつらに責任だけ押し付け、実際に『使える』者が指揮をしてくれれば言うことはない。



「そんなワガママを。私より体力、気力共に充実されているでしょう」


「そりゃあ体質じゃ。スキルもある…… だがな? ただ戦うだけでは、この危機は乗り越えられん……」


「前回の『異界溢れ(パンデミック)』では戦いこそしませんでしたが、私も経験者。生まれついての兵法者の親を持つ苦労なら誰にも負けません」


「お前が支えてくれたから、儂もアイツも戦えた。感謝しているよ」



 急速に人が集まり、物資の積み込みと人足の整った船から出航していく。


 大規模な戦いは、準備がまだ追い付いていないが。

 相手は魔物。

 時間は足りなくとも、待ってはくれない。



「この中の何人が、生き残れるのか……」


「神のみぞ知る、じゃよ。さて、儂も働くとするか」


「このお仕事は近隣で戦いのない内だけ、ですよ」


「分かっとる、これだけやってる方が疲れるわい」



 受付脇で常に『観察』スキルを使い、知った情報を即、係に伝えて配置の目安にしてもらうのだ。


 これも役目と言えば役目だが、名前の存在しない仕事なので基本はパッと見で終わり。


 それ以外は商業ギルドの上役をからかい、届ける荷物の行き先に、ついでに手紙をと頼んだり…… 息子の真似事をするだけ。



 だがまぁ、こんな場所で『ご同胞』に会うとは思っていなかった。







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