第二十三話 頼れるのは地下世界の建築家
俺、今日頑張ったんだけどなぁ。
「では、協力者を募りに行きましょう!」
「おお~……」
「ご主人、元気ないね。おにぎり食べる?」
「私が背負いましょうか」
「いや、それは最終手段で……」
行かないワケにはいかんよね。
時間もないし。
昼前にザーマス担当官 (メガネはなかったけど)のミズ・トバークを追い払って、これからある種族の助力を願うべく遠出をする。
目指すはあのリザードマンの居る湿地帯の先、山裾の洞窟だ。
男爵邸のリフォームにも力を貸してくれていたらしいけど、屋敷が整った時点で帰ってしまったのだそう。
だから初顔合わせになるんだ。
「ドワーフですが、彼らは日の光を嫌います」
「え、じゃあどうやって手伝ってくれたの?」
「ハーフとなった一族が、地下都市ドワフラウの窓口となって、商いなどもしているそうです」
鉱山小人の血縁である一族の『ウムリ族』、更にその中の建築家マッハバトという人が前回の助っ人だったそう。
ドワーフ建築家かぁ、なんかスゴそう。
「その方にまたご助力願えないかと手紙は出したのですが……」
「返事はない、か」
まぁいきなり大規模な工事の打ち合わせを打診されてもね。
しかし、俺たちには彼しか頼る人材がない。
『詳細も明かせぬ工事など言語道断、委細つまびらかにせぬ場合、工事責任を他家へと引き継ぎの上、男爵家をとり潰す』
という脅迫の手紙を置いていったザーマスさん。
そんな権限は彼女にはない。
とはいえ、結果をなる早で出さなくてはならないのは事実。
建築家マッハバトさんを頼るべく、俺たちは大森林南部の洞窟へと向かった。
☆
そして、ラッキーが重なって当日の内に到着できた。
リザードマンの集落で泊まるつもりだったんだけどね。
ヤマブキの顔を見たかったし。
でも、途中で見知った双子に出会ったので。
「あっタズマじゃん」
「おおタズマじゃん」
「レタとエド、久しぶり」
今でこそフレンドリーだけど、大人に邪魔されていた時はギスギスだったね、懐かしい。
それほど時間は経っていないのにな。
「どこ行くの?」
「どこまで行くの」
「ああ、南の洞窟、ドワフラウって分かる?」
「知ってるよ、近付いちゃダメって言われてる」
「知ってるとも、よく遊びに行くからな」
「そこに行って、マッハバトって人にお願いしなきゃいけないことがあるんだ」
「ひひひん、タズマはいつもお願いしてるね」
「ぶひひん、タズマはいつも損な役回りだね」
この二人は水馬だ。
父の族長の鼻面に水をぶっかけ遊び回ってるやんちゃ盛りで、親の警戒心バリバリな姿勢があって最初は話しもできなかった。
だがその辺の事情を察して、二人のイタズラに少し加担してからは関係が好転。
全てこの二人のお陰でケルピーの一族と上手くいっているようなモノだ。
「あはは、まぁ、また遊ぼうね」
俺は一息ついて身体を起こし、周囲を探知しながらまた道を進もうとして。
「連れてってやるよ」
「タズマなら乗せてやる」
「えっ、いいの?」
この辺りにも獣はいるし、最近は魔物が出るらしいから警戒しつつ進んでいた。
一応リザードマンの縄張りの中だから、弱い魔物なら彼らに任せられるだろうとか考えていたのだが。
「女は乗せねえぞ」
「荷物も持ってやるよ」
「タズマ様、私たちは走れますから」
「お馬の二人、追い越しちゃうよ」
魔物の心配より、俺の足の遅さのが致命的だった。
仕方ないでしょ、沼地歩きなんて経験ゼロに近いし、普通の熊や狼などは現れるので警戒は必須だし。
俺がヘトヘトなのを見透かされたのかな。
ありがたく、甘えることにした。
「言うじゃねぇかネコムスメ」
「タズマ乗せるのなんかハンデにもならねぇ」
「ちょっと、タズマ様を乗せるなら、粗っぽい走りは困ります」
あとで、もう少し体力強化に励もう……。
☆
「ここがあのドワーフの洞窟だね」
レタとエドの二人は近くまで送ってくれて、しかし親から呼ばれているらしく来たときの倍のスピードで帰ってしまった。
二人の背中は水でできているのでとても心地よく、もっと乗っていたい感触だったね。
「さあ、行こうか」
「はい」
幸運を活かして、説得も早くに終わらせたい。
洞窟は入り口こそ小さく、馬車が入れるかくらいだったが、中はとても広い。
「待ちな、ニンゲン」
入って数歩、暗い洞窟の奥に松明が揺らめいていた。
小柄な女の子が、こちらを睨んでいる。
行く手を塞がれているので、進めず言葉を待つしかない。
「あんたは男爵様のお使いか? またイチャモン付けにきたんだろ、白状しろ」
「そんな、まぁ面倒かも…… 知れませんけど……」
ごもっともな指摘なので、言いよどんでしまった。
「どうなんだ? 坊主」
「タズマ様に失礼な……」
「シーヴァ、待て」
「きゃんっ」
俺はこの時点で分かった事を反芻した。
この女の子には歓迎されていない。
とはいえ、事情はある程度理解しているようだ。
ドワーフは他部族と戦争などせずに貴金属の製造や武具の整備点検で食い繋いでいるらしい。
なので部族同士の小競り合いなどは稼ぎ時で、短気な種族はだいたいお得意様だ。
……誰か、男爵領の問題に一枚噛んでるのかも。
実際、まだ近隣の集落全てと仲が良いとは言えない。
いくつかはそこまでよろしくない。
「申し遅れました、私はアレヤ男爵家三男、タズマと申します」
「あ、ああ、あたしはマッハバト。わりいな、ボウズとか言って」
あれぇ、ドワーフ建築家さん?
ごめんなさい、てっきり男性だとばかり。
「坊主、じゃねえや、えー、タズマ。で、今日は一体何の用だ?」
「お手紙は見ていただけましたか。お返事がないので、直に伺いました」
「そうか、それはすまねえ、実は工房が火事になってな?」
「それは、大変でしたね……」
「んん、炉が燃えてんのはいいんだが、回りが燃やされてな。したら道具が失くなってやがってよお」
「それで、気が立っていたのですか」
「いや、男爵家の使いとか言うイヤミなババアが来て、これからはこの都市にも税金の義務が発生するとか騒いでたから」
イヤミなババア。
さすがに違うとは思うけど、一応聞いてみようかな。
「その方の、お名前は」
「おん? たしか、ビバークだかトバークとか」
ギルティ。
「我が男爵家とは関係のない使者ですね……」
そもそもこのドワフラウという都市からではなく、個人が販売する商品について『交易税』を掛けているので、交易をする度にこちらには利益がある。
わざわざここまで出向き税の有無を説く必要はない。
が、この都市は地図に載っていた…… だからザーマスさんが現れたのか?
「まあ、そうだろうとは思ったんだが…… 大森林の亜人種族として加入するなら税を払えというものでさ、感じ悪くて仕方なかったよ」
まぁ、あの人は後でどうにかするとして。
「本当は新しい町を作りたくて、お手紙を送りました。どうか、お力をお貸しください」
今一番の問題を、男爵家三男として誠実に告げるのが仕事だ。
「ああ、それが本題か。いいよ」
「軽い」
「工房が燃えて、道具がねえんだ。他に稼げるならやるに決まってんだろ。ホラ」
まぁ、確かに。
そんなワケで、職人ゲット。
しかも、マッハバトさんは師匠をしていて、何人かの弟子を連れてってやるよという約束もしてくれた。
「ありがとうございます。貴女の腕を見込んでここまで来て、良かった!」
「ば、バカ! 握手だよ、なんでアタシの手に頬擦りしてやがんだ!」
「はっ! すいません何か感動して」
こうして、半袖シャツにサロペットの女の子、マッハバトさんが仲間になった!
水面下で、黒い何かが動き始まっている気配を感じつつ、頼もしい協力者と改めて握手した。
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