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あらすじ・ネタ置き場

眠らぬ森の王様は美男で魔獣

作者: とびらの

非公開のプロット、自分用メモだよ。

読んでも面白い物じゃないですよ。

 プロットたれながし

『眠りの森の王と魔獣』


 キャラクター


 主人公 

 ジゼル・シルバーバック 十七歳 女 その希少な美しさと力強さを伝説の霊獣になぞらえて、通称「ゴリラ令嬢」。銀髪碧眼、才色兼備、代々騎士の家柄、兄7人の一人娘。質実剛健な父や兄を見て育ったため男=強者でないと愛せない。嫁き遅れ気味。根っからポジティブで努力家。愛と勇気で全力疾走するパワフル令嬢。


 ヒーロー

 レオニダス・ウァラ・ベラニオ 二十二歳 男 百五十年戦争で活躍した英雄が特別に領地をもらい独立したベラン帝国の現帝王。黒水晶のように透明感のある黒髪に白皙の美貌。見た目に合わぬ剛剣と豪胆な政治ぶりで『静かなる獅子王』と呼ばれる偉丈夫だったが、2年ほど前から突然「一日に夜の四時間ほどしか起きてない」になった。誰にも秘密だったが、実は日中、かわいい子猫の姿に変身してしまう呪いにかかっている。


 サブキャラ 

 ハリル・シュメール 二十五歳 男 赤い髪に褐色の肌。レオニダスの宰相であり狂信的とすら言える忠実な従僕。実は前ベラン王がイプスの側妻に産ませた子どもで、レオニダスの異母兄にあたる。レオが生まれるまでは第一王位継承者だった。細身で優しそうな青年でレオニダスには似ていない。2人の恋のライバルではなくサポートキャラ。



<序章>

 フラリア王国の下級貴族令嬢、ジゼル。

 フラリアの王子から婚姻を迫られる。それほどに美しい女ではある。「わかりました、では、わたしに剣で勝てたならば」

 ジゼルの圧勝。

 城から立ち去ろうとしたら、

 「王太子に剣を向けるとは何事だ」と衛兵に捕まりかける。

 家族のためにも、大人しくついていこうかと思ったが、ハリルが助けに入る。

「やめといたほうがいいですよ、変な冤罪着せられて開放する代わりに嫁入りを強制されるでしょう。いっそこのまま僕と亡命しませんか?あとのことは我が帝国がどうにかしますので」

「帝国だと?」

「帝国の解説。いったいなぜここに」

「よくご存知で。なぜここに、かというと、王の嫁を探しに来ました」

「嫁?」

「あなたが国を追われるならこれ以上ない好都合です」

 ハリルは領主代行として商売の話に来ただけだったが。

「悪いけど、わたしは自分より強い男でないと…」


「強い男をお求めならば、我が主を紹介しましょう。実は我が領主、レオニダス王も女性の理想が高すぎて嫁が取れず、宰相である私はお世継ぎに悩んでおります。二年前にこのフラリアの社交界で王があなたを見初めていたのを思い出し、あなたを探しに来たのです。王は必ずご令嬢のお眼鏡にかないます。どうぞ私の国へお越し下さい」

「もし、そのひとがわたしとの一騎打ちに負けた?」

「この腹を十字に切り裂いて詫びます」

 あまりの言いように面白くなってしまったジゼルは、フラリアより河をくだって、ディルツよりも南の帝国領へ行くことにした。


大河を渡る船の上。

 記憶を思い出す。船に乗る直前、実家の両親と兄弟に挨拶。

 娘が心配な両親と七人の兄が慌てて止める。

「ベラン領の新帝王は魔性の美貌、誰もが惑わされとりこになる」

「それはきっと誤解でしょう。このハリルの様子を見ていれば決して美しいだけの王ではないと分かります」

「しかし……実はもうひとつ、噂を聞いたことがあるのだ。かの帝王はひどい怠け者で、日中寝てばかりなのだと」

 ジゼルは取り合わなかった。相反する噂のどちらが真実だろう、と、ちょっと怖いけど、ドキドキしてしまう自分がいる。それよりも「魔性の美貌と怠け者」という情報の真偽が気になって、悠々と船旅に出るのだった。



<森の王との出会いと婚約>


 小国ながら独立した強国として繁栄していた土地、ベラン領。

 若き帝王の城は意外にも美しく心地のよさそうな城。たどりついたのは夜。

「ようこそ、ジゼル嬢。我が名はレオニダス」

 そう言って迎えてくれた王は、確かに魔性の美貌。

 視線を合わせて、ジゼルは即、言った。

「好き。結婚して」


「はっ私ったら思わず…!なるほどこれが噂の魔性、たしかに恐ろしい!」

「いや顔見た瞬間に逆プロポーズしてきた娘はおまえが初めてだが」

 呆れて苦笑する王。

「だが断る」

「えっ、ハリルさん話が違う!」

「話とは?」

 ハリル、二年前にジゼルを気に入ったと言ったはずだと進言。

「忘れた。いや、過去は何であれ、断る。俺の噂は知っているだろう?『眠りの王』だと。女騎士殿にとっては相手にする価値のない男では」

「同時に、たいへんまじめでやり手の王だという声も聴きました。もしや体調が悪いのでは?」

「そんなことはない」

「ならばジゼル嬢を妻にお迎えください。二年前の社交界で気に入ってらしたじゃないですか」

「えっそうなの?」ここで初めて知る。

「妻を迎え子をなすのは帝王の義務です」

 ハリルに詰め寄られても返事なし。返事に窮する王。

「……わかった。だがジゼル嬢にも選ぶ権利はある。ひとまず婚約ということで、お互いに親睦を深めよう。三か月を起源にして、お互い気に入らなければ破棄をしよう」

「分かりました、わたしレオニダス様に気に入って頂けるよう頑張ります」

 なんとなくはぐらかされたような気はしたが、婚約は成立した。ジゼルはガッツポーズを取った。


「とりあえずもう夜も遅いので、お休み下さい」と客室へ通されたジゼル、ドキワクでベッドへ。

「お試し、ということではあるけど、婚約成立……もしかしてそれって『体の相性』も確かめにこられるのでは?どうしよう、ちょっぴり怖い♡でも怖いだけじゃない♡」

 王が訪ねてくるだろうと期待して……そのまま夜が明けた。翌日も、翌日も。

「なんでや!?」

 焦れた令嬢、とうとう王の自室に夜這いならぬ昼這いをかける。とにかく交流しないと始まらない。夜は四時間ほどたしかにいつも玉座におり、昼間はずっと寝ているらしい。いくらなんでも大人が一日二十時間も寝ていられるわけがない。お茶を持って訪ねたが、デスクに王の姿はなく、ベッドからかすかな寝息が……なんだ本当にお昼寝してるのね、と諦めながらも、婚約したのだし寝顔くらいみたってバチは当たらないわよね……とシーツをめくりあげてイケメンの寝顔とご対面!と臨んだら、そこにいたのは美しい王ではなく、漆黒の毛並みに紫の目を持つ、美しい猫だった。

 猫は侵入者の気配に飛び起き、令嬢を蹴飛ばして窓から飛び出していった。


「???なぜ王の寝床に猫が…それより王はどこに?」


<獅子王=にゃんこ?>


 不機嫌な王が令嬢を呼びつける。

「俺の部屋に勝手に入ったそうだな?」

 イケメンの怒り顔は怖い。ハリルも震え上がるが令嬢は負けない。

「勝手に?ノックはしましたわ。それに私たちは婚約者、日中の部屋を訪ねて何が悪いの?」

「んんっ?」

「むしろ婚約者を何日も放置するほうが罪深いかと」

「仕事が忙しいし日中は眠っているといっただろう」

「それでどうやって夫婦の交流をするの?三か月という期限があるのに。そうやってのらりくらりと躱して煙にむくつもりでしたの?」

「う!?……む、う。いやそれは分かっているが、しかし………」

「ならば添い寝をさせてください!寝ているあなたのそばにいられるだけで結構です」

「えっっ?」

 素っ頓狂な依頼に驚く王。

「お忘れですか?わたしはあなたに恋をしているの。たとえ会話ひとつできなくても、あなたのそばに居たいのよ」

令嬢の熱烈な告白を浴びて、王はワタワタ。やがて、「分かった、時間を作ってそなたの部屋を訪ねる」と約束する。

「だから、日中に俺の部屋を覗くのだけは絶対にやめろ」

 それだけは強く言われて、了承する。


(なぜかしら?…それに今日、わたしが部屋を訪ねたことをどうして王は知っていたのだろう。あの場には猫しかいなかったのに)


「あなたは思いのほか面白いヒトですね」と話しかけてきたハリルとの対話。

「嘘つき。日中ずっと寝ているといったけど、いなかったわ」

「それは変ですね。王城は要所要所に衛兵がいますが、王が出入りするのを見たものはいなかったはず。それに、王はちゃんと仕事をしているはず」


 いわく、昼寝するといって部屋にこもった王は、それでも夜にはちゃんと仕事を終わらせているらしい。やはり昼間はずっと寝ているというのは嘘だろう。

「じゃあ王が嘘をついているの?昼寝していると嘘をついて仕事をしている?どうして!?」

「わかりません…そうなったのは2年ほど前から。それまでは普通に、夜に眠り昼に執政と粛清を行ってました」

「粛清とは?」

「タチの悪い魔女がいて、王が騎士団を率いて討伐したのです」

 ハリルも王が昼寝ばかりしている理由はわからず、部屋には入れてもらえなかった。かつては何でも相談してくれたのに…と。

 ハリルも、自分と距離を置かれたことと、王の体調を心配してヤキモキしていた。

「さてはハリル、王の嫁取りを急いだのは、世継ぎのためじゃなく、彼の真意を探るためだったのでは?」

「その通りです。やはりあなたは聡明で、王を思いやってくれる方だ。もしかすればあの方の心を溶かし、真実を明らかにしてくれるかもしれない。王をお願いします」

「ハリル……ありがとう。任せて。わたし、今度こそ王を誘惑してみせるわ!!」

「なんか違う気がする」


 ってことでハリルの応援を得た令嬢、夜通し働く王のあとをつけ、夜明け直前に王が部屋へ入るのを見て、すぐに追いかける。出ていったら後をつけてやるつもりで忍び込むと、王はデスクに突っ伏してうたた寝していた。

「あれ?今日は本当に寝ているのか…」

 とほほえみながら、毛布をかけてあげようとする令嬢。そのとき、遠く、教会から夜明けを報せる鐘がなる。そして令嬢の目の前で、王は小さなモフモフ……小猫の姿に変わったのだった。


 令嬢の悲鳴で飛び起きる王。

「なっ、なんでおまえがここに!?」

 猫の姿でも話はできるらしい。

 騒ぎを聞きつけ駆けつけたハリルが扉越しに安否確認をしてくるが、「何でもない、扉を開けるな!」と一喝。王が昼間は猫になるという真実は、ハリル含め誰にも秘密だった。

 変身の瞬間を見た令嬢には観念して、事情を話してくれる王。


「2年ほど前、イバラ森の魔女を討伐したさいに呪われた。働き者の王に、堕落の魔獣となる呪いをと。以来、日が出ている間は猫の姿だ。ひと目に出られない上、どうやらこの獣はやたらと眠る生き物らしく、どれだけ寝ても眠くてかなわん」

「な、なるほど…それでは、書類仕事はどうやって?」

「字は問題なく読めるし、サインくらいなら猫の手でもどうにか書ける」

「でも、眠いんですよね…?」

「だが俺は国の王だ。ヒトの姿でいられるのが短いぶんどうしても仕事が溜まってしまう。瞼に薄荷を塗ってでもやらねばならん」


 実際にうまくペンを握り込んで仕事をすすめる王……ぐらぐらウトウトしながら。

 そして限界を超えて眠ってしまった。そのふにゃふにゃであたたかな体温に自分もうとうとしてくる。猫を抱いて眠りにつきながら、令嬢は決意する。

「なるほど、確かにこれでは新婚イチャラブどころでは…ならば、わたしがするべきことは3つ。ひとつ、王が猫になることをばれないように護りぬく。ふたつ、過労死しないよう少しでも仕事を手伝う!そのために帝王学の勉強!みっつ、魔女の呪いを解く!そのために魔法の勉強ね!」


<ジゼル、頑張る! そしてハリムの加入>


 さっそくバリバリ努力を始めた令嬢。勉強と筋トレを兼ねた剣の練習で毎日くたくたに。


  魔女はこの国に四人いる。父が崩御し喪が明け、レオが王となった日、四人の魔女に招待状を出した。ところが死者が途中で事故に遭い、四人目のイバラの魔女は仲間外れにされたと思た。それにより呪いをかけに来たという。

 王に無礼をはたらいた魔女は追放されたが、そのあとのイバラの森には、黒いイバラが張り詰めたままだという。「うーんあやしい」

 ハリルが栄養のあるお菓子や疲れの取れるになるハーブティなどを差し入れ。そんなものがあるなら王に上げてよと言うと、王はこれまで疲れたとか眠いと弱音を吐いたことがなく、こういったものは不要と突き返されてしまうらしい。

 ハテなんでじゃろ?と首を傾げつつ、自分用にと頂いて、王の部屋へ。案外素直に受け取る王。令嬢はピンときた。

「王様、もしかしてハリルの前でカッコツケてません?」

「!?」

「仔猫になることも眠くてしんどいこともハリルにちゃんと相談していれば色々と手助けしてくれるでしょうに」

「…!それは……その、いやだ」


 ハリルは王の異母兄だった。正妃である母はなかなか妊娠せず、父が異国の娼婦に産ませた子で、数年間はハリムが王太子として育てられた。しかしのちにレオが生まれた。ハリムの母は狂ったように泣き叫んだが、幼いハリムは、能力的にもレオニダスのほうが王にふさわしいからと実母を説得して退いた。

 文武両道、政治手腕にも優れたパーフェクトキングとなったのも、ハリルの期待に応えるため、自分が譲って良かったと思えるだけの最高の王になろうと気を張り続けた結果である。その彼に弱味を見せるのが恥ずかしく、王は独りで頑張っていた…。


 令嬢は笑いはしたが、男のプライドを理解して、

「まぁいいですよ、私があなたを支えますし。それにあなたの秘密を私だけが知っているのは、ちょっとシアワセですから…」

 実際、令嬢は本当によく働いて、王の助けになっていた。王が表に出られない日中、王からの伝言を城中走り回って伝え、訪問客の対応をしているのも彼女。イケメン姿の王とは昼夜で交代制のような状態で触れ合えないのに、王のためにと…。

「無理をするなよ、お前こそ倒れそうじゃないか」

「夫婦ですもの、倒れるときも一蓮托生です」

 夕刻、猫姿の王を膝に載せ、デスクでうたた寝をはじめた令嬢……妻に、王は鼻先を擦り寄せた。日が落ち、ヒトの姿になるのを待ってから抱き上げ、ベッドへ運ぶ。

「…もうヒトの姿に戻るのは諦めていた。このまま誰にも知られず、誰かと触れ合うことも叶わず、惰眠の王と呼ばれたまま朽ちてもいいと思っていた。…だけどまた、できることをしてみようか。夜におまえを抱き、ともに夜明けを迎えられる日がくるように」


 翌日の夜明け前。そろそろ王がまた猫の姿になるかなというころ、王はハリルを自室へ招いた。令嬢とハリルの前で夜明けの鐘を待ち、猫の姿に。

「今まで内緒にしていてすまなかった。これが『獅子王』の真の姿だ…ニャァ」

 ハリルは失神した。

 すぐに気を入れて復活。王は恥じ入りながらも己を鼓舞し、この呪いゆえに執政に支障が出てきて、それを妻が手伝ってくれていること、だが妻も無理をしているので、おまえにも助けてほしいと願い出る。プライドの高い王は、妻のために己の恥部を晒したのだった。

 令嬢、キュンキュンで感動。ハリルももちろん笑うことなどなく、今まで距離を置かれて嫌われてるのではないかと恐れていたんですとオイオイ泣き出す。

「お任せください、そうと知ったからには私、この全身全霊をかけて国王夫妻をお助けします!魔女の呪いを解く方法も、一緒に探しましょう!」



<魔女の呪いを解こう!>


 魔女の森を、ハリルとともにたずねたジゼル。なにやらゴネて付いてきた王(猫の姿)とともに、森の奥、魔女の古家へ潜入。全体的に蜘蛛の巣がはっているが一部の壁のだけ少し変だとジゼルが気づき、ハリルがそれで察して解説。

蜘蛛の糸は縦の糸はくっつかない。ゆえに横の糸にだけホコリがおおくつもりがち。といっても2年も経てば大差なく降り積もるが、この一面は見て取れる程度に縦と横の糸のホコリが違う。最近に出入りしている?

隠し扉の奥に書庫。猛勉強により魔女語が読める令嬢、山盛りの本棚の上に一冊、呪い関係の本を発見。猫王が登って落とすナイスコンビネーションプレーでゲット。さっそく読み始める。カタコトながら、「猫は鐘の音が好き」なる文面に引っかかる。

 読んでいる途中、イバラが襲いかかってくる。部屋が塞がれそうになり、慌てて脱出。日が暮れてヒトの姿になった王の活躍で、イバラから逃れるも、読みかけの本を奪われてしまう。命を優先して逃げ延びる。


 魔女の魔法が残っていたんだな…と唸り、本を奪われたのを嘆く一同。「鐘」のキーワードに、教会の鐘を思い出す。

 日暮れと明け方に鳴る鐘…もしやアレのせいでは?

 数日後、日中、再びハリルと猫王との三人で、王都の大教会を訪問。(移動中、猫王は令嬢の膝でだいたい寝ている)

 あの鐘を一日だけでも止めることはできないか、と願い出てみると、勅令でも無理だという神父。あの鐘は、なんと誰も撞いていないのに勝手に鳴っているのだという…2年前から。

 神父はそれを神の奇跡とありがたがっていたが、そんなわけがない。「鳴るならば、落としてしまえ、そんな鐘」と王が命じ、ジゼルは剣一閃、鐘を地に落とした。

 その瞬間、ガランガラン!と激しく音がなり、猫王がヒトの姿@全裸に。ドタバタながらも、よかった〜これでハッピーエンド!と大喜び…が。

 その夜……。

 久しぶりに日中からヒトの姿でいられた王は熱心に仕事に取り組み、終えたのは結局、日暮れ後だった。

「もしや昼夜逆転しただけで、夜に猫の姿になるのではと懸念していましたが、杞憂で良かったです」

「これで、ようやくおまえを抱ける」

 嫁いでから数カ月めの初夜、キスに蕩ける2人。

 しかし、久しぶりにヒトの姿で1日活動したせいか、王は疲れ果てていた。令嬢も同じく。これからいくらでも抱き合えるのだからと無理はせず、口づけだけ重ねて、二人は就寝した。

 そして夜が明け、日が高く昇…暮れても…王は起き出さず。翌日も、翌日も。

 王はヒトの姿のまま目覚めることはなかった。


<眠れる王を目覚めさせよう!>


 2年間、眠らなかった王が突然に昼も夜も話せなくなり、王国は大騒ぎになった。薬師や祈祷師が押し寄せたがどうにもならない。令嬢は再び教会を訪ねたが、あの鐘は跡形もなく消えたのだという。

「もしかして魔女は生きているのでは?」

 ハリルとも相談し、イバラの森の魔女の家へ。

 つい先日きたばかりの古家は、異様な迷路空間にと様変わりしていた。惑わされる二人だが、令嬢は猫の鳴き声に導かれ、真なる扉へたどり着く。扉の向こうには、猫王…もとい、かつて王として喋っていた猫が、檻の中でただニャァニャァと鳴いていた。

 なぜあの猫がここに、それに、檻のサイズが大きい。人間を閉じ込めておけるサイズだ。

 そのそばに、逆に猫を閉じ込めるのにちょうどくらいの鳥籠があった。中には王の瞳と同じ、アメジスト色の光玉が浮かんでいた。

「あなた、あなたですか?」と呼びかける。「ああ、俺だ」と、光玉が王の言葉を発した。

 これが魔女の呪いだった。

 王は日中、猫に变化していたのではなく、魔女の飼い猫と入れ替わっていたのだ。魔女はやはり生きており、飼い猫の魂に王の身体を引き寄せて弄んでいた。媒体である鐘が破壊されいったんは魔法が解けたものの、新たに掛けなおそうとしているという。

「魔女は今度こそ俺の心身をともに奪うつもりだ。だが逃げてくれ!魔女はおまえたちの侵入を悟り身を隠した、この家のどこかに潜んでいる!おまえたちの身が危ない!」

「それはいけない、奥様、ひとまず退却しましょう!」

 ハリルがそう言って令嬢の手を取る。令嬢はレイピアでハリルの胸を刺す。

 ハリルは、魔女の化身であった。迷路空間ではぐれたあと、ふたたび合流するまでに入れ替わっていたのだ。

 血を流しながら、ナゼワカッタ…?と呻く魔女。

「王の忠実なしもべであるハリルは、王妃の体をけっして触らない。そして王の魂を置いて逃げ出すこともありえないわ」

 魔女の絶命とともに、迷路空間が消滅。古家の床には失神したハリル(本物)と、子猫が残る。

「ごめんね、おまえの御主人様は死んでしまったわ」と猫を抱くと、ゴロゴロ喉を鳴らして寝始めた。御猫様は自由だ。

 鳥籠を開くと、王の魂が令嬢の頭上を舞う。


「これで呪いは解けたの?」

「たぶんな」

「…もし肉体に戻れなかったら、魂だけでもそばにいてくださる?」

「肉体が無くてもいいのか。おまえは、俺の容姿や力が気に入ったのだろうに」

「いいえ、わたしは初めからあなたの魂に惹かれていたわ。その強くて優しい、可愛くて猛々しいあなたの心に。体がどんな形になってもあなたが欲しい。だからわたし…あなたがもう私の膝で眠ってくれないのを寂しく思っているのよ」

 光玉は照れ笑いするようにフワフワ浮かんで、令嬢の頬に猫のように擦り寄ると、遠い空へ飛んでいった。


<エピローグ>


 気が付いたハリルとともに森を出て城に戻ると、入り口ですぐ、メイドたちにドレスを着せられる。


「奥様、メインホールへどうぞ!王がお待ちでいらっしゃいます!」


 急ごしらえながら色とりどりの花や宝飾品で飾り立てられ、立派な結婚式場になったメインホール。

 新郎用のタキシード姿の王……もちろんヒト型……が、ウェディングドレスの令嬢を出迎える。あぜんとする令嬢を抱き上げて、

「お待たせ」

「……ええ、待ちました!私、待ちわびておりました!!」

 急ごしらえの結婚式は急ピッチで進行され、サクッと終幕。後日あらためて国を上げての式典にする、それよりも二人にはするべきことがある。

 涙をふきつつ「オトナになって……おめでたいことでございます……」と感無量なハリルの前を通過し、二人はやっとの初夜を迎えたのだった。まだ日中だけど。



 〜〜蛇足のえぴろーぐ〜〜


 夜明け前…うたた寝をしていた令嬢は、王の胸の中で目をさました。

「あなた、昨夜はステキでしたわ……」

 そう頬を寄せると、王は微笑み、令嬢に頬ずりして…

「ニャァ」「!?」

「な、なんだこれは!なぜまた猫に!」

 王の言葉を叫んだのは、床にいた猫だった。

「!!??」

「大変です王!城門に魔女の使いが!烏が手紙を咥えてきて、『あいるびーばっく!』って!」

「にゃ、にゃんだとォ!?」「ニャァ」

「ええと…今度は夜に猫、昼に人間になったってこと?」

「なんにも解決してないっ!ていうかコラ猫、俺の体でハリルにスリスリするな!」

「…ちょっぴり嬉しいです」

「まぁ、少しはマシになったかと。王の肉体はここにあるのでもてあそばれることはないですし。昼間にヒトでいられるなら、夜会に出る以外の政治はできるわけで。夜は猫として眠ってれば健康的」


「そ、それでは、妻が抱けんではないか…」

「……日中のお仕事、頑張って早く終わらせましょう。わたしも手伝いますのでっ」


 拳を握って決起する令嬢。協力いたしますと同じく拳を握るハリル。令嬢の膝の上で寝直し始めた猫@王の体。

 頭を抱えて嘆く王@猫の体。


 王が心穏やかに眠れる日は、まだ遠そうだった。



 〜完〜

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