19.
私はアルトと城をあとにした。今日は拠点に帰る。明日はどうやらアルトの実家に一緒に行かなくてはいけないみたいだ。
「親父がいきなり悪いな。両親共に娘が欲しかった様で、明日はちょっと大変かも知れないが気は使わなくても大丈夫だ。気楽に着いてきてくれ。」
と言うことらしい。
大人しくついて行く事になった。
拠点に到着後、リビングにて4人で改めて今後の事を話し合う。
とりあえずは精霊石を加工しにムートンへ行くになった。
「ついでにオーロラ地区に行ってみるか」
アルトからの提案だ。
「特に急ぎの依頼がないのなら行きたいかな。一月後の収穫祭も久しぶりに見たいな」
わたしの希望と叔父から言われていた事を伝える。
「じゃあ、まずはムートンへ行って石を加工に出してオーロラへ向かってヤックルに会いにいく。で、ムートンに戻って祭に参加して帰りにマースに寄るか」
しばらくの行動が決まった。
「アズベリー領地にいるときは領主館を使えるよ。一応、私の管理だから」
オーロラへは初めて行くので分からないが他の領地なら館がある。折角なので利用する事にした。小さな村も通るが一々村長を相手にするのも面倒なのでそこは宿にとまるなり野営するなりでやり過ごすことになった。
ムートンまではおよそ1週間かかる。明後日出発する事にした。
「念の為、叔父さんには報告しとくよ。ヤックルとは知り合いみたいだし。あの人も多分、収穫祭の頃にはムートンに来るはずだから」
明日、朝一ギルドカードの更新に4人で行く事になり、ついでに報告する事にした。
翌日、まずはギルドへ向かう。
中に入るとみんやが此方を伺いながら話をしている。恐らく色持ちになった事を噂しているのだろう。
受付でカードを渡し、ギルマスの執務室へ。
「おはようございます。」
ノックして入室。忙しそうに仕事をしている叔父さんを訪ねた。
明日からムートンに行く事、オーロラに足を伸ばす事等、とりあえず報告する。
すると徐に手紙を渡された。
「ヤックルへの手紙だ。中を読めば今回のことや、お前の事が分かる様にしてある。これを渡せば話が早いと思うから収穫祭に奴も連れてきてくれ」
話が早くて助かる
「わかった。じゃあ、また収穫祭の時に」
叔父さんの部屋を後にし、受付にカードをもらいにいく。
色持ちのカードは縁取りがパーティカラーになる。
新しくなったカードを受け取りロトとマリアとはここで解散した。
そこからアルトの実家に向かうのだが貴族街の丁度反対側になるとの事で乗合馬車で移動する事にした。
馬車から降りて少し歩くとアルトの実家に到着。門番が此方に気づき、中へと案内してくれる。
扉を開けてくれたのでお礼をいい、館内にお邪魔した。
「おかえりなさい、アルト。昨日旦那様から話は伺ってますわ。此方の方がミーナ様でしょうか」
コロコロと可愛らしい話し方をする女性。この人がお母様のようだ。
「ご無沙汰しております。ここで話すのもなんですし、応接室に参りませんか」
アルトが場所を変える様うながし、揃って移動した。
案内された応接室はとても品が良く、落ち着く。ソファを促され腰を下ろした。
お茶が配られ使用人達が退出する。
「初めてましてナタリア伯爵夫人、ミーナ・リュー・アズベリーと申します。と言いましても普段は平民の冒険者として過ごしております。どうぞミーナとお呼びください」
「こちらこそアルトがお世話になっている様でありがとうございます。堅苦しいのはこのぐらいにして、お茶でもどうぞ。甘いものも一緒に用意したので召し上がってくださいな」
この後、根掘り葉掘り質問攻めにあった。アルトはと言うともはや居てるのが分からなくなりそうな位気配を消している。
突然、勢いよく扉が開いた。
「良く来られた。ミーナちゃん。ゆっくりしていってくれ」
あら、宰相様、お仕事はよろしいのでしょうか?
「丁度仕事のけりがついて、陛下のところに行ったらたまには息抜きでもしてこいと帰らせてくださってな。いやいや、ありがたい」
ようは私がきているから帰らせて貰えたということか。いや、多分無理矢理仕事を押し付けて帰ってきたか。まあ、どちらでも良いが。
「お邪魔しております。宰相様」
「そんな、畏まらずに。気軽にベルズと呼んでくれて構わない。なんなら父と呼んでほしいくらだ。」
「あら、だったら私も母と呼んで欲しいわ」
2人がキャッキャと騒いでる。横でアルトが頭を抱えている。
「じゃあ、ベル父様とユリ母様で。」
夫人はユリアナと言うそうだ。
2人が嬉しそうに頷いている。
「馬鹿両親が、いい加減にしないか。ミーナもほっといたら良いぞ。」
アルトが呆れた様子で声をかけてくれるが聞いてはいない2人とも。
「まあ、良いではないか。此処では。」
散々騒いで漸く落ち着きを取り戻した大人達。
私達は明日、ムートンへ向けて出発する事を話す。
ベル父様曰く、何処であの2人が仕掛けてくるかわからないから、十分警戒する様にとの事。
「まあ、派手にやり返したら良い。しっぽを掴ませる様ならそのまま引きずり落とせ。」
黒い笑顔で告げられた。
こうしてアルトの実家を後にし帰宅する。
「俺はアイツらの所為で疲れた。部屋でゆっくりするわ」
「私は明日からの食料を少し準備したいし、キッチンにいるね。夕食にはリビングに降りてきて。」
片手をヒラヒラ振りながら部屋へと帰っていった。
夕食時、いつの間にか帰っていた2人も合流し、久々の4人揃っての食事だ。
明日からの事を再度確認し、各々就寝した。