18.
二日間、ゆっくり休んだ。
正直、王都にきてからずっと忙しかったから漸く身体を休めた感じだ。
今日は王との謁見の日。
今は叔父さんとアルト達を迎えに拠点に向かっている。
そうして、謁見の間。陛下が入室してきた。
「皆の者、楽にせよ。」
頭を上げて前を向く。陛下が一瞬、微笑んだ様に見えた。
「まずは、【疾風の刃】よ。今回の件、良く解決に導いてくれた。よって其方たちに褒美を取らす。まず、リーダーのアルトをAランクにロトをB+にマリアをC++に昇級とする。次にミーナには、ペストリア領主館を進呈する。そして、パーティをAランクにと昇級、名を【紫】と定める。最後に白金貨100枚を報酬とする」
一瞬、周りがザワついた。
それもそうだろう。まさかパーティがAランクの色持ちになるとは。
この国では認められたパーティしかAには昇級しない。そして王より色を貰わない限り色持ちにはなれない。
現在世界中でも色持ちパーティは赤、青、黒、緑の4つだけだ。かなりの功績となる。
「次に今回ペストリア男爵は没名した。よって領地を近隣に分配する。マース地区とオーロラ地区をアズベリー領へ、タモス地区をキャセロン領とする。」
またもザワついた。
「以上で今回の件を収束とする。異議申し立てはあるか」
この場に置いては身分に限らず発言が認めらるている。
此処でグレントロク伯爵が意見を述べた。
「恐れながら陛下、色持ちのパーティにするには些か問題がある様に思います。こんな幼い子供を置いているAランクなど今までに聞いたこともございません。他の色持ちに対して失礼かと思いますが如何お考えでしょうか。」
成る程。私がお荷物だといいたい様だ。
続いてキャセロン男爵だ。
「陛下へ発言をお許しいただきます。此方の領地の分配、現在代理での運営をせざるを得ないアズベリーに分が大きい様に思います。察するにマース地区に置いては王都に隣接する地区を持たないアズベリーへと言うのは納得いきますがオーロラ地区につきましては我が領地との接面も多く、こちらにて管理する方がより良い領地として発展するかと考える次第ですが如何でしょうか。」
こちらは利益の多い地区を寄越せと、代理では管理出来ないとの事か。
この二人なかなか面倒だな。
またまた、グレントロク伯爵が口を開く。
「ナタリア伯爵はどうお考えか。貴方のところはこれでAランクパーティを抱えられるからと多少の事は見て見ぬフリを為さるつもりか。」
棘のある言い方だ。
ナタリア伯爵、この国の宰相であり、アルトの父親だ。領地でAランクパーティをお抱えに出来たなら色々な事がかなり有利になると言っても過言ではない。親子なんだから、その可能性を懸念されているのだろう。
宰相は応えるかどうか少し悩んでいる。下手な発言は墓穴を掘るかもしれない。
「其方らの言い分について、ワシ個人としては聞き入れる気が無いが少々当事者達の意見を聞いてみたく思う。一度、お開きとし、後程、場を設ける。良いな。」
陛下が告げた事により、この場はお開きとなった。
私達に話が聞きたいとの事で別室通された。
応接セットの上座に王が座る。私達四人と叔父さんは順に座った。このメンバーだと私が王の右横になる。
アルトも多少はロトとマリアに関してはかなり緊張している様だ。
「まあ、そう固くならずに楽にしてくれ。先程の件についてだが、その前にミーナ、ここのメンバー達は理解しているのか」
メイドがお茶を支給してくれている。私は終わるのを待ってから
「まあ、大まかな事は話してて理解してくれてるよ。」
「わかった。では三人に聞きたい。報酬は受け取ってくれるのか。まずはお前達の意見が聞きたい。」
三人は顔を見合わせ、そしてアルトが応えた。
「正直戸惑いはありますがありがたいお話では有ると思います。」
「受けても良いとの事だな。」
三人が頷く。
「わかった。ではミーナ、覚悟は出来るか」
「やっぱりそうなるのね。仕方が無いので諦めます。但し、必要最小限にしてください。」
「そうと決まったら早速、アイツらを黙らせるか。その前に宰相に報告だな。お前達はどうする。同席するか。あの子煩い二人にミーナの身分を明かして大人しくさせるつもりだが。」
「俺とマリアは失礼させて貰います。」
流石にロトとマリアはこれ以上身が重い様だ。アルトはどうするのだろ。
「私は、パーティの事もありますのでこのまま同席させていただきたく思います。ミーナの事についても父に何も説明してませんでしたし。」
残ってくれる様だ。
陛下は頷くと人を呼び、ロト達を送っていく様にとナタリア伯爵を呼びに行く様にと指示を出した。
しばらくして伯爵が現れた。
「陛下、お呼びとの事ですが如何致しましたか。」
入室後、コチラを伺いつつ、訪ねている。
「まぁ、座れ。重大な話がある。」
「では、失礼いたします。重大なと仰せですがそこの愚息とミーナさんは同席されるのですか。」
困惑気味な伯爵に叔父さんが事の成り行きを話す。
「宰相いやウルベルズよ、まずは近いものしか居ないのだから、いつものようにしてはどうだ。アルトはともかく、ミーナもそんな事は気にし無いタチだ。」
「お前がそう言うのなら。で、息子とお嬢さんと何か関係のある事なのか。」
叔父さんから聞いてはいたが三人は幼馴染らしい。
「その件について先ずは改めてミーナを紹介する。」
私は立ち上がり挨拶した。
「改めましてナタリア伯爵。私、アズベリー領主、ミーナ・リュー・アズベリーと申します。よろしくお願い申し上げます。」
貴族の礼をした。
「な、なんと。成る程な。ご丁寧に。」
流石にびっくりした様だ。
「アルト、お前は肝心な事は全く報告がないな。相変わらず。後でゆっくり話をしようか。で、紹介だけでわざわざ呼んだ訳ではないのだろ。エドよ。」
叔父さんと陛下がこれまでの事、今後の事、あの二人の事も含めて話をする。
伯爵は納得した上で此方の意見に賛成するとのこと。
「中々の隠し玉だな。いや、面白そうだ。最近、あの二人は特に調子に乗っている。そろそろ痛い目を見てもらっても良いだろう。早速呼びつけるとするか。アルト、お前との話は明日屋敷で聞くとしよう。勿論、ミーナ殿も来てください。きっと妻が喜びますので。」
明日はアルトのお家にお邪魔することになった。当の本人は嫌そうな顔をしてる。
宰相が2人を呼ぶ様に指示を出す。
さぁ、此処からが本番だ。しばらく後、2人が現れた。
「陛下、お呼びとの事で失礼いたします。」
グレントロク伯爵を先頭に入室。ソファを促され腰を下ろした。
陛下が話出す。
「早速だが先程の件、お前達の言い分をもう一度申してみよ。」
2人が順に先程と同じ様に話をする。
「要はミーナ殿が幼く、実力が本当に相応しいとはおもわないから高位なランクにする必要性が無いと言いたいのだな。キャセロン男爵は代理しか居ないアズベリーに国1番の漁港を持つオーロラを運営するのは力作では無いと自分の方が適任だと言いたい訳だな。」
宰相が2人に確認すると頷いた。
「そう言う事らしいのですが陛下、如何いたしましょうか?」
顎に手を当ててしばらく悩んでるいるフリをした陛下は
「では、ミーナの実力を示せばランク昇級の件は解決するのだな。アズベリーについてはエドワード・アズベリー伯爵に案が有ると聞いている。其方を聞こうか。」
キャセロン男爵が一瞬、叔父さんを睨んだ。
「キャセロン男爵よ、何か勘違いしておる様なので今一度この場で伝えるとしよう。アズベリー領は確かに私が代理を務めているが領主がいない訳では無いのですぞ。現公爵が公に出るには勉強中との事もあり、陛下にお許し頂いて表は私が代理を務めているだけです。それでも何か問題がありますか。」
叔父さん、はっきり言い切った。
キャセロン男爵が、赤い顔をして食ってかかる。
「では、公に出れないにしてもちゃんとご紹介いただきたいものです。いらっしゃるのなら可能かと思いますがもし無理とおっしゃるのなら只の戯言と皆しますぞ。」
ほぉ、あくまでも叔父さんが嘘をついていると言いたいのか。
「紹介する事は出来ますか、此方にも事情があってこの事については機密事項となっております故に今後要らぬ詮索や干渉をしないとお約束頂けるのでしたら陛下に一度お尋ねしてみますが如何でしょうか。」
2人とも頷く。
「陛下、如何ですか」
「うむ、仕方あるまい。アズベリー公爵を紹介だけしてやるか。但し、一切の詮索、干渉は許されない。間違わぬ様に。」
目線で促されたので立ち上がる。
「改めましてグレントロク伯爵、キャセロン男爵、アズベリー領主のミーナ・リュー・アズベリーと申します。この度は色々ご心配いただきありがとうございます。」
貴族の礼をとる。
2人は今にも立ち上がりそうな程驚いた様だ。
宰相が軽く咳払いをし、二人が我に返った。
「これで納得したか。今回の件は公爵本人が事件を解決した。よって褒美を取らすのが筋だと思う。実力についても知っての通りアズベリー直系だ。申し分ない。まだ、何か言いたいことはあるか」
二人は青ざめた顔で首を横に振る。
「では、グレントロク伯爵、キャセロン男爵この事については他言無用でお願いします。」
宰相に釘を刺され、そのまま退室していった。
「ふぅ、ひとまず問題は言ってこないだろう。後はいつ何を仕掛けてくるだな。」
叔父さん、軽くトラブル予告しないでください。私は静か生活していたい。
ともあれ、紫の色持ちとなりました。