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プロローグ
永井楓はいつも一人だった。普通に考えると不思議な行動をする彼女は周囲に気味悪がられ、幼い頃から友だちはいなかった。そんな彼女を優しく慰める家族もいなかった。
しかし独りではなかった。『声』だけは常に一緒だった。家にいようと、学校にいようと、いくつ歳を重ねようと一緒だった。あっけらかんとしていて、楽しそうに話す『声』は、彼女の話し相手だった。
『声』がいてくれたおかげか、楓はどんなに一人でも、寂しがったり、人や、世界に対して絶望することはなかった。むしろ彼女は諦めていた。人といること、好かれることを諦め、受け入れて生きていた。しかしそんな彼女にも、初めて『声』以外の友人ができた。ここから楓の物語は始まる。