母とみそ汁2
みそ汁騒動は、まだあった。
あれは、ものごころ付いたころだったはずだ。
何故覚えているかと言うと、そのみそ汁を母が作るたび思い出すからだ。
バ――――――ン!!!!!!!
夕飯時、姉が両手で食卓をたたいた。
そして怒鳴った。
「なんで毎日毎日、同じみそ汁なの?!!」
私はきょとんとした。
幼かったため、具になど関心がなかった。
そのみそ汁は「にらの卵とじ」。
豆腐とわかめではない、「たまご」が入った贅沢品である!
(まだ、母方祖母のスープがみそ汁と気づいていません。)
こんな贅沢なみそ汁にケチをつけるなんて、なんて姉は我がままなんだ!!
私は、母を擁護した。
「わがままいっちゃ、だめだよ!」
「……さすがに飽きるわ~」
「え?」
兄も気づいていたらしい。
私は知らぬが仏状態だった。
その後のことはよく覚えていないが、母と姉が「みそ汁の具」ごときでケンカしたことは覚えている。
「みそ汁の具」でだ。
私はそれから大抵のことは「くだらね~ことでケンカすんなよ。」と言う性格になったのは言うまでもない。
後から分かったことだが、にらの卵とじのみそ汁。
あれは父の好物だったらしい。
父の実家の台所で、私が椅子の上に立って(行儀悪い)祖母の手元をのぞいていると、作っているのを発見した。
「これ、お母さんよく作ってる!」
と、私が言うと、祖母はこう答えた。
「あんたのお父さん、このみそ汁大好きなんだよ~?祖母ちゃんが、あんたのお母さんに作り方教えたんだ~。」
幼いながらも、なるほどなるほどと頷いた。
あれは母なりの愛情表現だったのか。
祖母ちゃんが教えたのか。
………。
これってバカの一つ覚えって言うんじゃ……。
私はにらの卵とじを見るといつも思い出す。
バ――――――ン!!!!!!!
の音と共に。
お母さんごめんなさいm(_ _)m