涙の運動会
あれは4年生の頃だった。
運動会。
よその家のように、ご馳走たっぷりとはいかないが、料理の苦手な母が一生懸命毎回作ってくれるので、とても楽しみだった。
そう。4年生までは…。
6年生の兄と合流し、ごはん♪ごはん♪と浮かれていた私。
校庭がお弁当の匂いでかぐわしくなる中、私と兄は、母が来るのを待った。
その年母は足を悪くしており、長く立っていられなかった。
そのため昼頃から見に来ると言っていたのだ。
運動会のメイン。6年生の鼓笛隊だけ見るつもりらしい。
いろいろ思うことはあるが、まぁ仕方がない。
とりあえず腹が減った…。
しかし、いくら待っても母は現れなかった。
残り20分のところで、兄が担任の先生に声をかけられた。
「先生たちのところで何か食べるか?」
「あ~。そのうち来ると思うんで良いっす。大丈夫っす。」
私の担任の先生も声をかけてくれたが、二人で断る。
ご飯を食べ終わった同級生たちが、席に戻ってきていた。
さすがに心配された。
6年生の兄は、鼓笛隊の準備であと5分で集合しないといけなかった。
私も学年リレーの代表で、集まる時間が迫っていた。
その時だった!!
母が現れた!!
「ごめんね~。」
「バカバカバカ!!もう時間ないし!!しおり渡してたでしょ!??」
と色々まくし立てたが時間がない。
こんなに時間をかけて何を作って来たのか!??
ものすごく期待した!!!!
お腹はグーグー鳴っていた!!!!
母が持っていたのは!!!!!
しろくて丸い拳ほどのおにぎりと、麦茶だった――――――。
「…………。」
「…………。」
「…………。」
言いたいことは沢山あったが、このふたつを飲み込んで、集合場所に移動した。
終わった後は家でけんかした。
散々遅れてこれはひどい!!!と。
母の言い分はこうだ。
上手に作れなくて恥ずかしくなり、上手に作れたやつだけ持ってきたと…。
台所には、こげこげ卵焼きや黒いからあげが残されていた……。
白飯の方が恥ずかしくないか?
もちろん、おにぎりには塩も具も入ってはいなかった。
この時はっきり理解した。
(うちの母、料理ヘタだ。)
昨年まではどうしていたんだよ??と思ったでしょう…。
昨年までは、「お祖母ちゃん」が来てくれていました。
そう。お祖母ちゃんの力は偉大だったです……。