第55話 Bランク冒険者
さっきのお姉さん、ええ乳してたなぁって思い返しながら歩いていたらあっという間に迷宮に着いた。
中に入ると何やら騒がしい。受付前に人だかりができている。
ヘレンさんがいたので尋ねてみた。
「ヘレンさん、おはよう。何かあったのかい?」
「あっ亮助様、おはようございます。実はレア度の高いアイテムがドロップしたようで、それを聞きつけた人たちが一目見ようと集まっているんです。」
何と、それは俺も見てみたい。
どんなアイテムなのか?どんな奴がドロップさせたのか?何か特別な技能によるものなのか?興味がある。
人だかりに近づいて見ると亜人の男が見物人にアイテムを見せて自慢していた。
「すごいだろ?こんなアイテムめったにドロップしないぜ!」
更に近づいてよく見るとそれは綺麗な装飾がされたナイフだった。
すかさず【鑑定】で調べてみる。
名称:聖炎なる幸運な旅人のナイフ 種別:短剣
性能:E レア度:A+
能力1:聖属性 能力2:炎属性 能力3:幸運上昇
聖属性 攻撃時、聖属性が加わる。
炎属性 攻撃時、炎属性が加わる。
幸運上昇 装備者の幸運を上げる。
※属性が2つ以上付いている場合、相性の悪いものでなければ同時発動が可能。相性が悪い場合、いずれかの発動もしくはまったく発動しない。
能力が3つも付いている。レア度がA+だからあんずの重力の戦斧より高い。性能がEなのはおそらくベースが旅人のナイフだからだろう。属性がついて少し威力が上がってるようだ。
一番気になったのは属性発動の相性についてだ。このナイフの場合は聖属性と炎属性だから2つ共発動するだろうけど、例えば聖属性と闇属性だったら片方しか発動しないもしくはどちらも発動しないって事だと思う。
これは戦闘で魔法を使う時も同じかもしれない。ファイアボールとウォーターカッターを同時に敵にぶつけたらどちらかのダメージがなくなるかもしれない。最悪相殺されてノーダメージという可能性もある。後々弱いモンスターとかで試してみようと思う。
「もういい加減にしなさい!自慢もいきすぎるとただの嫌味よ。」
アイテム自慢をしている男の後ろから女の声がした。
「別にいいだろ?このナイフがすごいのは事実なんだから。アリシアはいつも口うるさ過ぎるんだよ。」
「なっ!?何ですって!!私の何処が口うるさいのよ!!もう兄さんからも何か言ってやってよ!!」
何か分からんが喧嘩が始まった。しかしすぐに女の言った兄さんが登場して場を収めた。
「ロイもアリシアもその位にしておけ。みんなの前でみっともないぞ。」
「リーダー、だってさぁアリシアが・・・」
「いいからとりあえず落ち着け!」
「はい。」
どうやら2人の喧嘩を収めたのがリーダーで、妹と亜人を含めた3人でナイフをドロップさせたという事らしい。
とりあえず3人を【解析】で調べておく。
名前:エドワード・アーバイン 性別:男 年齢:30
種族:人族 職業:上級職業【聖騎士Lv.47】
名前:アリシア・アーバイン 性別:女 年齢:22
種族:人族 職業:上級職業【賢者Lv.26】
名前:ロイ・ウルフィス 性別:男 年齢:21
種族:狼人族 職業:中級職業【拳闘士Lv.40】
エドワードは全身鎧を身にまとった細身で茶髪の優男。
アリシアはローブ姿で杖を携えた正に魔法使いという出で立ちをしている。エドワードと同じ茶髪で可愛らしい感じの女性だ。しかし胸は・・・ない。
ロイは軽さを重視したような装備を身に着けている。背は俺より低い170センチ位だが、ガッチリ体型の銀髪青年だ。狼人族らしいが、犬人族のナナと比べると野性味が溢れてる感じがする。狼だからか?
3人共俺より若いのにとても強そうだ。職業も2人上級だし、レベルも高い。技能は?と思ったが全員隠蔽の指輪を装備している。やはりそれなりの実力者には隠蔽の指輪は必須なのだろう。近い内にナナとあんずの分も確保したいところだ。
「おや?あなたは亮助さんではないですか?」
急にエドワードが考え事している俺の方を見て話しかけてきた。
「俺の事を知ってるのか?」
「盗賊団【薔薇の棘】暗視のベスを倒した有名人だからね。」
俺が不思議そうにしているとヘレンさんが教えてくれた。
「エドワード様はBランク冒険者であると同時にこの街の兵士長でもあるんですよ。」
「ああ、それでか。成程。」
納得した。しかし仕事しないで迷宮に潜ってていいのだろうか?今日は非番か?
エドワードが話を続けてくる。
「あなたとは一度会っておきたいと思ってたんだよ。どんなに強い人なんだろうと思ってね。」
「それで?会ってみた印象は?」
「正直に言ってしまうと普通かな。力を隠してる可能性もあるけど第一印象はそんなところだよ。」
普通の人・・・俺にとっては嬉しい言葉だ。兵士長なんかに認められてしまったら有名になりすぎて厄介事を頼まれたりするかもしれないからな。
「でもホッとしているよ。」
「何でだ?」
「マーガレットがね、すごく戦いがってたんだ。あいつは強いに違いないってずっと言ってて、亮助さんがガチムチの脳筋だったらどうしようかと思ってね。だからだよ。」
「?」
よく分からんがまさかこいつそっちの気があるんじゃないだろうな。そうだったら勘弁してほしいがそれを聞くわけにもいかないしな。
とりあえず話題を変える。
「2つほど聞いていいか?」
「どうぞ。」
「迷宮なんか潜ってて兵士の仕事はいいのか?」
「あははっ!成程。僕が仕事サボってるように見えたのかな?」
「別にそういう訳じゃないさ。」
「まぁそういう事にしとくよ。迷宮の攻略はこの街の兵士達の仕事の1つでもあるんだよ。」
「そうなのか。それともう1つ、その亜人の青年は奴隷ではないのか?」
「何だと!!俺が奴隷だって言うのか!!」
特に悪意があって聞いた訳ではない。ただそうなるとは思っていた。亜人=奴隷という事をよく思っていないに決まってるからだ。
しかし予想以上に食い付いてきた。
「亮助さん、彼は奴隷ではありません。その強さに惚れ私が引き入れた仲間です。」
「そういう意味で聞いた訳じゃないんだけどな。すまない、勘違いさせてしまったようなら謝るよ。」
とりあえず謝っておく。
すると聞いてもいないのにペラペラと喋り始めた。
「彼は狼人族の王家の末裔なんですよ。」
「俺は狼人王キング・ウルフィスの血を受け継ぐ者、そしていつの日か狼人族の里を復興させる、その名はロイ・ウルフィスだ!!覚えておけ!!」
「ああ、覚えておく。」
何か啖呵を斬られたようだがここは冷静に受け止めとく。
だがムキになった理由が分かった。ロイはああ見えて王族だ。それを奴隷と言われたら怒るのは当たり前だ。
まぁさっきあやまったからとりあえず大丈夫だろう。
「エドワード達は今日はもう帰るのか?」
「ああ他にも仕事は色々あるからね。そうだ、後でギルドに寄ってやってくれ。」
「どうして?」
「盗賊の討伐をしたから亮助さんは冒険者ランクが上がったんだよ。手続きはギルドじゃないとできないから。」
「分かった、後で寄るよ。」
「確かに伝えたよ、じゃあね。」
人だかりもいつの間にか解散し、エドワード達は帰っていった。帰り際ロイには睨まれたけど。
俺はヘレンさんに手続きをしてもらい、迷宮へ入っていった。




