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異世界アラサー転移者の冒険  作者: モッチ~
第4章 迷宮都市ガリアム編
60/70

第53話 立派な斧と屋敷での一夜

段々と日が沈み、外は暗くなってきた。

早速今日からこの広い屋敷で暮らす事になったのだが、何度も何度も大丈夫だよな?幽霊出ないよな?と考えてしまう。【平常心】の発動で気持ちが持ち直すものの、やはり怖いものは怖い。

ナナが気になったようで話しかけてきた。


「亮助様、大丈夫ですか?」

「う~ん・・・大丈夫・・・じゃないかな?」

「今までモンスターと戦ってきたのに幽霊はダメなのですか?」


中々鋭い質問だ。でもそれは自分でも分かっていた。


「モンスターは人型だったり動物だったり、姿形があるし怖さはあっても気持ち悪いって事はないだろ?」

「まぁそうですねぇ。」

「幽霊やアンデットの類は実体がなかったり、ゾンビは腐ってたりで怖いし臭そうだし気持ち悪いだろ?だから嫌なんだよ。」

「幽霊もアンデットも扱いはモンスターと同じなので似たような物だと思いますけどねぇ。」

「それにな、小さい頃幽霊を見てしまって嫌な思い出が・・・それがトラウマなんだよ。」

「そうですか、ではそういう時は私達が相手をするようにします。」


本気でビビッている俺の話を聞いてナナはたぶん理解してくれたと思う。

その後、先ほどは簡単に見て周っただけだったので各部屋をナナともう一度周る。あんずは1人で他の部屋に行ってしまった。


今いるこの屋敷は3階建てで敷地面積約1000坪のど真ん中にそびえ立っている。感覚的に勇者大吾の屋敷より少し狭いくらいだろうか。

1階は玄関、2階への階段、広い応接室が2つ、トイレ、風呂、食堂兼台所がある。食堂兼台所ってどんなのだ?って思うかもしれないが要はあれだ、元の世界で言うところのリビングダイニングキッチンだ。俺が異世界にいるからなのか分からないが食堂兼台所という表現の方がしっくりくるような気がした。しかもリビングダイニングキッチンにしては見たことないような広さだった。元家主のアイゼンシュタッドは1人暮らしだったのにこんな広い食堂必要だったのだろうか?

2階へ上がると通路が左右に分かれておりかなり広めの同じ間取りの部屋が8つもあった。この部屋1つだけで充分生活出来るんじゃないかと思う。通路の突き当りはそれぞれ3階への階段となっており2階は左右対称の構造となっているように見える。3階は2階の部屋の何倍もありそうな大きな部屋が3つあった。1つは色々と物が置かれていて倉庫のようだ。もう1つは本がたくさんあったので書庫、残りの1つは同時に5人は寝れそうな大きなベッドが置いてあり寝室のようだ。

1階の応接室と2階の部屋はあまり使った形跡がなかったのでおそらくアイゼンシュタッドは3階を使っていたのだろう。

まぁそんな具合で広さだけなら10人以上で住んでも問題ない位広い。

家具等も一通り揃っているのだが、色々と足りない物もある。例えば屋敷内を見て気付いたが、タンスはあるが中身はない、食器棚はあるが食器がない、ベッドはあるが布団がない、コンロや釜戸はあるが包丁や鍋等がない。

しかしこれら必要な物を揃えればすぐに生活が始められそうだ。

それぞれの階にいくつか見てない部屋があったが鍵が掛かっていた。モーリスから渡された屋敷の鍵とは合わなかったので明日鍵があるか聞いてみようと思う。

一通り見終わったので食堂に移動して夕食を摂る事にした。


「おーい、あんず!夕食にするぞ!」


大声で呼びかけると反応があった。


「亮助様~!こっち来て~!」


どうやら応接室の方にいるようだ。

ナナと顔を見合わせて『仕方がない、行くか。』と目で合図して向かう。

応接室に入るとあんずが部屋の隅を見ていた。


「どうしたんだ?何かあったのか?」

「亮助様、これ見て!斧だよ!!」


そこにはあんずの身の丈程ある大きく立派な斧が立て掛けられていた。


「これは両手斧って奴だよな?何であるんだろうな?」

「亮助様、使ってもいいよね?」


あんずが目をキラキラさせながら聞いてきた。

確かに屋敷にある物は自由に使っていいとモーリスに言われたけど、まだ契約はしていない。まだ断りたいという気持ちも俺の中には残っている。


「う~ん、いいのかなぁ?まだ契約したわけじゃないし。」

「もう契約しちゃえばいいでしょ?」

「幽霊が出るような所には住みたくないぞ。」

「お願いだよ~。私が解決するから~。」


あんずは何故幽霊騒ぎを簡単に解決できると思っているのだろうか?この世界で幽霊はそういうものなのだろうか?

俺が考え込んでいるとナナが提案をしてきた。


「亮助様、幽霊騒ぎを解決したらこの屋敷買っていただけますか?」

「ああ、それなら俺はOKだ。」


そう、俺が不安視しているのは人影を見たとか、明かりを見たという現象だけであり、それを除けばただただ素晴らしいお得な物件なのだ。


「では本契約までに解決させるよう努力するので前向きにお考えください。それまでは一応拝借という形でよろしいのではないでしょうか?」

「まぁ破損等させなければ大丈夫だろう。」

「やったー!ありがとう亮助様、お母さん!」


あんずは飛び跳ね喜んで斧を手に取った・・・が斧はびくともしない。


「この斧めちゃくちゃ重くて持てない・・・」


喜びも束の間テンションが下がり落ち込んだ。

さすがに可哀そうだと思ったので【鑑定】で斧を調べてみた。


名称:重力の戦斧 種別:両手斧

性能:B+ レア度:A-

能力:重力変化


重力変化:魔力を制御する事で掛かる重力を変化させる事ができる。魔力を流し込むと軽く、抜き取ると重くなる。


すごい!この斧は効果付武器だった。

しかも重力変化って何かレアっぽいぞ!

俺は早速斧に手を伸ばし集中する。魔力を流し込むというのが良く分からないので何となくイメージだけで試す。すると・・・


チロリ~ン♪

○上級技能【魔力操作】を取得しました。


上級技能【魔力操作】 魔力の扱いが上達する。


丁度都合のいい技能も取得できてラッキーだ。

そして多分その技能のおかげで魔力を流し込む感じが分かってきた。

俺は重力の戦斧を持ち上げるのに成功する。


「亮助様、すごい!!」

「【鑑定】で調べたらこれは重力の戦斧という武器で魔力を操作する事で重さが変化するらしい。」


斧をあんずに渡そうと思ったが、いきなりは危険だと判断してすかさず【技能付与】であんずに【魔力操作】を付与させた。

あんずが【魔力操作】を取得すればコピーしたのは返ってくるし問題ないだろう。


「あんずに【魔力操作】を付与したから扱えるようになるだろ。」

「ありがとう亮助様!練習してみるね。」

「ちょっと待て!練習は夕食の後にするんだ。それと外で練習するように!壁や床に穴開けられたらたまらんからな。」

「は~い、分かったよ~。」


あんずは少し残念そうだがやっと夕食を食べられる。

夕食といっても食材がないのでいつも通り携帯食料となった。

3人で食道へ移動し携帯食料を食べる。なんか虚しい、何か温かい食べ物買いに行けば良かったと後悔している。

そういえば先程初めて【鑑定】を使った。携帯食料を食べ終えちょっと実験をしてみる。

自分の装備している鉄の剣を鑑定してみた。


名称:鉄の剣 種別:片手剣

性能:E- レア度:F

能力:なし


まぁ初期装備じゃこんなもんだよな。

おそらく冒険者ランクやモンスターランクと同じでFが1番低いのだろう。1つ違うのが+や-が付いている事だ。そうなるとF-が1番低いという事になる。これについてはまた人に聞くなりして調べればいいだろう。

次に鉄の剣を少し離れた所に置いて【鑑定】を試してみる。何度も色んな距離を試した結果、半径約3メートル以内なら手で触れなくても鑑定可能だという事が分かった。最後に鉄の剣を目視できない所に置いて試すと鑑定できないという事が分かった。

つまり店でショーウィンドウの中にあるアイテムや装備品でも半径約3メートル以内で目視できれば鑑定が可能だ。しかし、同じ半径約3メートル以内でも目視できない場合、例えば宝箱の中身や壁に埋まってる場合等は鑑定不可能という事だ。


こんな風に新しい事が分かる度に俺はこの世界に来てまだまだ無知なんだと改めて実感する。

本当のこの世界で暮らしていけるのかと不安にもなる。

なるべく目立たぬよう力をつけて安定した暮らしを手に入れたい。

異世界物ラノベでの最終形は奴隷に稼がせて自分は楽に暮らすってのが鉄板だろうけど、ナナとあんずにそんな事させたくない。俺の良心がズタズタになる。

自分が稼いだ上で楽な生活をしたい。

色々考えてたらかなり遅い時間になってしまったので今日は寝る事にする。

風呂はまた明日確認すればいい。

布団がなかったので【無限倉庫】から毛布を取り出してそのまま食堂で横になった。


「亮助様?2階や3階の部屋はお使いにならないのですか?」

「どこに幽霊が現れるか分からないからな。すぐに逃げれそうな食堂で寝る。」

「分かりました。一緒に寝たいところですが、幽霊騒ぎを解決させる為あんずと他の部屋へ行きますね。」

「ああ、一応気をつけろよ。」

「はい、おやすみなさいませ。」

「おやすみ、亮助様」


おやすみの挨拶をして2人は他の部屋へ移動していった。

何も出ないといいけどな。

薄れゆく意識の中それだけが心配だった。

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