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異世界アラサー転移者の冒険  作者: モッチ~
第3章 貴族の娘と盗賊団編
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第44話 迷宮都市ガリアムへ

俺はウィリアムと御者とこれからどうするか話し合っていた。

どうするかっていうのは進むか戻るかどちらにするかって事だ。

荷物の被害に加えて人も死んだ。こんな状況では戻るのが一般的な考えではないだろうか。

正直俺はどちらでもいい。今回戻る事になったとしてもまた改めて出発すればいいと考えている。

ウィリアムは慎重な姿勢で戻る事を提案している。本音を言えばマイクの遺体を早く家族の元へ届けてやりたいのだろう。

それに対して御者は進みたいと言っている。荷物の一部が被害にあったが、リーンの町に戻る事で残りも期日通りに納品できなくなるとそれこそ信用問題になってしまう。だからこそ進みたい、というのが御者の主張だった。


盗賊に襲われたくらいじゃ取引先が納得してくれないという事なのだろうか?理不尽な気もするが、取引先からしてみればそんなの関係ない。盗賊に襲われても大丈夫なように強い兵士雇えば良かったじゃんって言われるだけだろう。

御者には色々教えてもらったりしたし、ここで恩を売っておけばこの先何かの役に立つかもしれない。進む方向を薦める事にした。


「ウィリアム、俺も進みたいと思うんだが。」

「亮助さんもですか?しかし護衛しきれるかどうか・・・」

「それについては戦闘の際は俺達も迎え撃つようにするよ。」

「う~ん・・・分かりました。但し、また盗賊に襲われる心配もあるので昼夜問わず進むようにしましょう。馬には負担が掛かりますが。御者さんもそれでいいですね?」

「仕方ないだろう。」

「では出発の準備が出来次第、発ちましょう。」


その後ウィリアムに昼夜問わず進んでどの位で着くのか聞いたら1日半程だと言っていた。

各々準備を始める。

俺達も装備を再確認して馬車で待機する。・・・つもりだったのだが、ウィリアムからアルが意気消沈していて戦える状態じゃないと聞かされた。

仕方なく余った騎馬にナナが乗った。

騎馬はウィリアム・ロザリア・ナナの3人、馬車には御者・俺・あんず・アルの4人、荷馬車に御者が1人の配置だ。

最初俺が騎馬に乗ると言ったらナナにあっさり却下された。

ナナは時々俺の言う事を聞いてくれない。俺の事を心配しての事なのだろうが、もう少し信頼して欲しいものだ。

ナナが信頼してくれるほど強くならないといけないという事か?


2つの太陽が昇り始めた所で出発した。

急ぐといっても峠の下りは危ないのでゆっくり慎重に下っていく。

途中ジャイアントアントやコボルトと遭遇し、戦闘になったがナナが片づけてしまうので俺やあんず、ウィリアム達の出番はなかった。

馬車は順調に進み、2つ目の峠も越えようとしていた。


馬車の中で暇だった俺は目の前に横たわっている布に包まれた遺体を見て考え事をしていた。

体育座りで顔を伏せ、落ち込んでいるアルに話しかける。


「アル、落ち込んでるところ悪いんだが、昨夜何があったのか教えてくれないか?」

「マイクと火の番をしていたら突然視界が暗くなって自分は斬られました。薄れゆく意識の中でマイクの叫び声が聞こえたんです。そこから記憶がありません。」

「つまりよく分からないって事か。」

「すみません。」

「じゃあ薔薇の棘って盗賊団を知ってるか?」

「かなり有名だった盗賊団ですよ。」

「有名だった?」

「一時期は50人を超える規模の盗賊団だったみたいですが、近頃は団員が減ってあまり脅威と見なされなかったみたいです。何でも団内で派閥争いが起きたらしく出て行った幹部が団員をごっそり引き抜いたって話です。」

「盗賊の取り締まりとかはしないのか?」

「町の中は自分らのような兵士が見回りしたりしますが、町の外までは手が届きません。懸賞金を懸けて冒険者等に任せます。また、よその国に逃亡した場合はその国で対処されます。」

「俺が倒した奴は薔薇の棘の団員らしいが、懸賞金はいくら位だと思う?」

「そうなんですか?すごい大物かもしれませんね。懸賞金が懸けられるのは幹部クラス以上か凶悪犯となります。どんなに安くても金貨3枚にはなるでしょうね。」

「そうなのか、ありがとう。」

「それにしても薔薇の棘が相手だったなら自分らが勝てなかったのも納得できます。亮助さんがいてくれて本当に助かりました。ありがとうございます。今更遅いですけど、もっと修行しとけばよかった。そうすればマイクがこんな事にならなかったはず・・・自分が情けないです。・・・うわぁ~~~ん・・・」


アルはそのまま泣き出してしまった。

いくら相手が強い相手だったとはいえ幼馴染を失った悲しみはとてつもなく大きいだろう。

俺の隣に座ってるあんずも貰い泣きしている。

その後、何度かモンスターとの戦闘があったが俺の出番はなく無事峠を越える事ができた。

馬車に乗っている俺達は大丈夫だが、出発してからほぼ休みなしで進んだので流石にウィリアム達は疲れているようだった。


「ウィリアム、流石に少し休憩しよう。」

「そうですね、分かりました。」


進む足を一旦止め、休憩をする。

ここから先広い荒野が広がっている。直径2~3メートル程の岩がゴロゴロ落ちている。不自然に整った形をしているがどういうことなのだろうか?不思議だ。

ナナ達が騎馬から降りてきたので平気か?と聞くと全然平気ですと笑顔で答えた。

一方ウィリアムとロザリアは明らかに消耗している。

恐らくナナがすごいだけであの2人の状態が本来普通なのだろう。


「ウィリアム、後どの位で着きそうだ?」

「このまま進めば明日の朝にはガリアムに着きそうですよ。」

「やっぱり夜は休んだ方がいいんじゃないか?疲れてるだろ?」

「大丈夫、何とかなりますよ。このまま突っ切りましょう。」

「そうか、無理はするなよ。」


疲れてるはずなのに何処からそんな余裕のセリフが出てくるのか俺には不思議でたまらなかった。

御者が馬に水とエサを与えていた。俺達も手伝い、終わってから休憩をとった。

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