第43話 仲間の死
「マイク!アル!しっかりしろ!!」
「ちょっと!2人共目を開けなさいよ!!」
マイクとアルが2人で火の番をしていたらしく、盗賊に襲われたようだ。
マイクは首が変な方向に曲がりうつ伏せに倒れていて、アルは大量に血を流して仰向けに倒れていた。
ウィリアムとロザリアが倒れている2人へ必死に声をかけているが、反応はない。2人共死んでいるのだろうか?パッと見マイクはヤバそうだ。
俺は【解析】で2人のステータスを見ると、やはりマイクは死亡していた。
アルはHPがかなり少ないがまだ生きている。
アルの所へ行き、右手をアルの体にかざして呪文を唱えた。
「ヒール!」
俺がヒールを唱えるとアルの体全体が淡い緑色の光に包まれた。すると、見る見るうちに傷が塞がっていき、HPも回復した。1度では全回復しなかったのでもう1度ヒールをかけておいた。
マイクの方は死者を蘇らせる魔法を持っていないので残念ながら諦めるしかない。それに死者を蘇らせる魔法が存在するのかさえ分からない。
「魔法使えるなんてすごいな!亮助さん、ありがとう。助かった。」
「気にするな、しかしマイクは残念だったな。」
「仕方ないです。こういう事もあると分かっててこの仕事をしてるんですから。」
ウィリアムは意外とあっさりしていた。
そういう俺も思ったよりも落ち着いていた。【平常心】のおかげもあるのだろうし、出会ったばかりの他人って事もあるのだろうけど、人が死んだのにそんなに慌てていない。
俺は元の世界で葬式にはもちろん出席した事はあるが、直接人が死ぬ場面に居合わせた経験はない。人が死ぬというのは叫んだり、取り乱したり、泣いたりともっと感情的になるのかと思っていた。
この世界の何らかの影響を受けているというのもあるのだろうか?
「ちょっと何であんたが魔法なんか使えるのよ!柄じゃないわ!!」
せっかくアルが助かって喜ばしい空気をロザリアが一瞬で壊した。
「柄で物事決めつけられても困るんだけどな。」
「うるさいわね!やっぱ何か特別な秘密があるのね?教えなさい!」
「嫌だね。」
「何ですって!!」
俺は無視した。こんなのに付き合っても無駄だからだ。
そうこうしている内にナナ達がやってきた。
まだ俺の後ろでキーキー言っているロザリアがいるがとにかく無視した。
「亮助様、奪われたのは荷馬車が1台でした。他は大丈夫のようです。」
「亮助様ぁ~・・・ぐすんっ」
「あんず、どうした?」
「荷馬車の御者さんが亡くなってたんだよ~。」
あんずは耳が垂れてシュンッとしていた。落ち込んでいるようだ。
これが普通の反応だよな。
俺も落ち込むふりをした方が良かったのだろうか?
「亮助さん、すまないがマイクの遺体を一緒に馬車に乗せて貰えないだろうか?仕事が終わったら家族の元にちゃんと届けてやりたいんだ。」
「構わないよ。」
「ありがとう。」
無事だった方の荷馬車に乗せれば?と思ったのだがすでに荷物がいっぱいなのと、亡くなった御者の遺体を乗せたのでもう限界らしい。
ウィリアムがマイクの遺体を馬車に乗せる。するとナナが盗賊の遺体も馬車に乗せようとしていた。
「ナナ、その盗賊の遺体も乗せるのか?」
「ダメでしたか?懸賞金がかけられていれば死んでいても遺体があればお金が貰えるので、一緒に運んでもらおうと思ったのですが。」
「そうだったのか。分かった、乗せてくれ。」
「ありがとうございます。」
その後、少ししてアルの意識が戻ったようだ。
ウィリアムからマイクが死んだと知らされると泣いて酷く落ち込んだらしい。
同じ農民の出だと聞いていたが昔から知ってる幼馴染だったようだ。
盗賊に襲われ、人が死に、懸賞金制度がある。やっぱり異世界なんだなと今一度思い知らされた。
辺りを見渡すといつの間にか夜が明けそうになっていた。




