第39話 ツンデレ?いや違うその2
※ナナ目線です。
野営の準備をして皆で食事を取ろうとしたらロザリアさんが亮助様達から少し離れて食べ始めたので、私とあんずはロザリアさんと一緒に食事を摂るよう命令されました。
亮助様に牙をむくような態度をとった彼女を私は許しません。しかし亮助様の命令なので従います。まったく亮助様は人が良すぎますね。
ロザリアさんに何か話しかけた方がいいか考えていると向こうから話しかけてきました。
「さっきはごめんなさいね。」
「何がですか?」
「あなた達のご主人様にあんな態度取ってしまって。」
どうやら自覚はあるようです。
どうしてあんな態度を取るのか気になりました。
「何か理由があるのですか?」
「おっ男が・・・きっきら・・・」
「えっ何ですか?」
「だから男が嫌いなのよ。」
「えっそういう趣味の人ですか?」
私とあんずは咄嗟に体を引いてしまいました。
「そうじゃないわよ!女が好きとかじゃないわよ、男が苦手なだけよ。」
「そうだったんですか。」
「・・・・・」
「どうかしました?」
「理由を聞かないの?」
「聞いてほしいんですか?」
「ええ、まぁ。」
「では聞かせてください。」
ロザリアさんは長々と話をし始めました。
お父様が不倫して出て行ったせいで貴族としての力を失い男性不信に陥った事、自分が強くなって功績を上げて、お家を復興させたい事等を話していました。
その話の後、昼間の戦闘について聞かれました。
「それにしても戦闘の時すごかったわね、あなた達強いのね。職業は?レベルは?」
「私もあんずも奴隷Lv.5ですよ。それに私達がすごいのではなく、亮助様がすごいんですよ。」
「奴隷Lv.5であの強さはありえない。それに今の言い方だとあの人がすごいとあなた達が強い事になるわ、どうして?」
「お教えできません。」
「何か秘密があるんでしょ?」
「秘密です。」
「えへへ、それはね~~」
「あんず!!!」
「ひっ、ごめんなさい!」
うっかりあんずが口を滑らせそうになったので釘を刺しておきます。
私も職業を教えたのは失敗だったようです。しかし隠しすぎるのも怪しまれるような・・・
ああ、どうしたらいいのでしょう。とにかく秘密だと言い張りましょう。
「なんで教えてくれないのよ。」
「秘密だからです。」
「もういいわ、直接聞いてくるから。」
そう言ってロザリアさんは立ち上がり、亮助様の方へ向かっていきました。
私だって本当は言いたいんです。亮助様を自慢したいんです。
でも我慢です・・・
※亮助目線に戻ります。
「ちょっとあんた、ナナさんの強さの秘密を教えなさい。」
俺はロザリアの言った言葉に対してキョトンとしていた。突然の事で意味が分からなかったからだ。
俺がどう言葉を返せばいいか分からずにいると、しびれを切らせたように話し始めた。
「ちょっと聞いてるの!?どうすればナナさんのように強くなれるか教えなさいって言ってるのよ!」
「ナナはそんなに強いのか?」
「ふざけないで!!国都に行ったら分からないけど、リーンの町でならかなり上位に入る程の強さだと思うわ。亜人という事を考慮しても奴隷であんなに強いなんてありえないわ。何か秘密があるんでしょ!?教えなさい!!」
なるほど、なんとなく話が読めたぞ。
でも俺の答えはノーだ。当たり前だよな、だって強くなるには俺の奴隷にならなきゃないけないんだし。あんな口の悪い奴隷はいらない。
「教えられないよ。」
「なっ!!どうしてよ!」
「知ってどうするんだ?」
「とにかく強くなりたいのよ!!」
「家の復興が目的か?」
「何でそれを・・・ウィリアム!!喋ったのね!?」
「ちょっ、亮助さん聞かなかった事にしてくれって言ったのに。」
「すまんウィリアム。なぁロザリア、秘密を知っても君は強くなれないぞ。」
「どうしてよ!」
「君はナナと同じ様になれないだろ?」
「どういう事よ!」
「自分で考える事だね。君は頭は良さそうだから分かるかもね。」
ロザリアは悔しそうに唇を噛みしめて黙り込んでしまった。
「さぁもう今日は休もう。ガリアムまでの道のりはまだ長い。」
ウィリアムが解散を促し、俺とナナ、あんずは馬車へ戻る事にした。
ロザリアはしばらく唇を噛みしめたまま固まっていたがマイクとアルに説得されて彼らが張ったテントに入っていった。
馬車に戻るとナナが申し訳なさそうに謝ってきた。
「亮助様、申し訳ありません。私がいらぬ事を言ったせいでロザリアさんが暴走してしまいました。」
「いやナナは悪くないよ。」
「でも・・・」
「どのみちナナが何も言わなくてもああなってたと思うよ。まぁこれで諦めてくれればいいんだけどね。」
あの性格だから、まさか奴隷になるなんて言い出さないと思うけど。
そもそも家の復興が目的なんだから奴隷になんてならないだろ。
俺は少し不安を感じながらも話題を変える事にした。
俺は昼間の戦闘について話し始めた。
「昼間みたいにたくさんのモンスターに遭遇した時はやっぱ魔法が便利だと思うんだけど、ナナはどう思う?」
「確かにその通りだと思います。」
「この世界に来て魔法使いはいたけど、実際に魔法を見ていない。この世界で魔法は珍しいものなの?」
「いえ、書物でも魔法が使える職業になれますので珍しいわけではありません。魔法職でなくても魔法技能を持つ人もいます。」
「通常の生活で魔法は使うのか?」
「使う人もいると思いますが、魔鉱石を使った魔道具が普及しているので普段の生活で魔法を使う人は少ないでしょう。」
「なるほど、魔法はどういうのがあるんだ?」
「すみません、魔法の内容までは知らないんです。」
「そうか、じゃあ覚えるしかないか。」
「リーンの町で買った書物を使うんですか?」
「ああ、これから先なるべく戦闘で苦労したりしたくないからな。」
俺は【無限倉庫】を開く。【無限倉庫】は知らない人に見られるとまずいだろうから旅人の鞄につなげて使っている。周りから見たら旅人の鞄から出してるように見えるだろう。中から職業の書物を3冊取り出した。リーンの町で買った戦士・僧侶・魔法使いの書だ。
使おうと思ってたのに、勇者大吾との有意義?な会話や離婚騒動があったせいですっかり存在を忘れていた。




