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異世界アラサー転移者の冒険  作者: モッチ~
第2章 旅立ち~リーンの町編
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第35話 神託

前言撤回だ。

朝起きると俺が寝ているベッドにナナとあんずが潜り込んで来ていた。

両脇にピタリとくっつかれ、俺は動けない。


「2人とも起きろーー-!」


2人を起こし、ベッドから出ようとしたが、腕を掴まれキスされた。


「ちょっと何してんだ?」

「おはようのチューですよ。」

「やめなさいって言っただろ!」


2人は少し落ち込んだように見えたが、してやったりって感じでニヤリとしていた。

ロザリーさんが朝食の準備が出来たと呼びに来たのでそのまま部屋着のまま向かった。

席に案内されパンとスープが運ばれてきた。勇者大吾は朝食パン派なのか?

勇者大吾の姿が見えないのでロザリーさんに聞くと、先に朝食を済ませて神殿に向かったと言っていた。

俺達もすぐに朝食を済ませ、着替えて神殿に向かう事にした。

ロザリーさんに見送られて俺達は神殿に向かって歩き出した。昨日神殿の前を通ったから場所は分かっている。

到着すると神殿周辺は人でごった返していた。

神殿前の広場にも人が殺到して大混雑している。おそらく皆神託を聞きに来たのだろう。

神殿の入口にいた神官らしい人が俺達に近づいてきた。


「亮助様ですね?勇者大吾様から中に案内するよう言われています。付いてきて下さい。」


その神官の後を付いて中に入る。途中人々の視線が痛かった。

神官に聞いてみた。


「他の人は中に入れないのか?」

「普段は転職や病気・怪我の治療の為に身分の差なく入れますが、神託がある今日は特別な人しか入れないのです。」


人々の視線が痛い理由がよく分かった。

ようするにただの冒険者と奴隷が何特別扱いされてんだ?って思われたんだろう。

奥の部屋に通されると祭壇があった。そこには勇者大吾と神官が1人立っていて、周りにも何人かいた。

その神官は俺達を案内した神官より位が高そうだ。

勇者大吾がこちらに気付く。


「おお、待っとったぞ。」

「すみません、遅くなったようで。」

「神託はまだじゃ、安心せい。紹介しよう、こちらはこの町の神官長クラウス・パリスト殿じゃ。」

「初めまして、亮助と言います。後ろにいるのは連れのナナとあんずです。この度は特別に中へ入れていただきありがとうございます。」


ナナとあんずが軽く頭を下げる。

クラウスを【解析】で覘くと名前は聞いた通りクラウス・パリスト、歳は52、人族で職業は【大神官Lv.38】だった。大神官、あれか?僧侶の上級職的なやつか?

クラウスの見た目は白い高そうなローブを着たガッチリ体系のあごひげ生やしたダンディーなおっさんだった。


「そんなに畏まらなくていい。クラウスと呼んでくれ。勇者殿から話は色々聞いている。そろそろ神託が下されるから皆膝をついて祈りを捧げるように。」


勇者大吾は俺の事を話していたようだ。どこまで話したかは分からないが。

神官の言葉で周りにいた数人の神官も跪いて祈り始めた。

クラウスが祭壇の前で祈り始めた。

一体どんな神託が下されるのだろうか?俺にとって吉と出るのか凶と出るのか?

祭壇が一瞬眩しく光るとクラウスの手には手紙のようなものが握られていた。

勇者大吾がクラウスの元へ行き話しかけた。


「クラウスよ、どうじゃった?」

「勇者殿、そう焦らずに。神託は逃げたりしません。おい、書記官は準備をしなさい。」


今の会話だとお告げを聞く事が出来たのはクラウスのみのようだ。

クラウスの言葉を聞いて1人の神官が何やら準備をしだした。何をしてるのか聞いたらお告げを書き取って町の人々に伝えると言っていた。


「それでは神託を告げよう。下されたのは3つだ。1つ目は、数年先そう遠くない未来に魔王が復活し世界が今だかつてない未曾有の危機に陥るだろう。2つ目は、それに伴いベストスリア王国の何処かに迷宮が生まれるであろう。3つ目は、未曾有の危機は世界が団結し合わないと乗り越える事は出来ない。戦力を整え、協力して事に当たる事。以上だ。」


クラウスの言葉を書記官が一生懸命書き記している。


「あの、クラウスさん。これをそのまま公表すると混乱が起きるんじゃ?」

「大丈夫だよ。パッと見は絶望的な事が書いてあるように見えるが、理解すれば前向きな事として考えられる。」

「どういう事?」

「良い意味で捉えれば、迷宮が生まれるとその周辺が活性化して金が動く。未曾有の危機は世界が団結すれば乗り越える事が出来る。という事だ。」

「なるほど。」


そういう考え方も出来るのか。この人意外とポジティブだな。


「おい、クラウス。それでその手紙は?」

「勇者殿、落ち着いて。これはですね何故か分かりませんが亮助殿に渡すようにとのお告げでした。」

「なんと!」

「えっ!」


俺もナナもあんずも勇者大吾も周りの神官も、皆驚いた。

まさか個人に対して神から手紙がくるとは思ってもみなかった。

クラウスから少し厚めの手紙を受け取った。何が書いてあるのか興味がある反面怖いとも思った。

クラウスは興味津々だったが、一旦勇者の屋敷に戻ってから中を見る事にした。


その日の内に神託がリーンの町の住人に公表され、それから数日内に各地に知れ渡った。クラウスの言った通り、中には絶望する者、逃げる準備をする者等がいたようだが大きな混乱は起きなかった。

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