第26話 野営
勇者大吾が飛び立っていった後、俺達は一先ずHPをポーションで回復させ周囲の確認をした。
サイクロプスの棍棒に潰されグチャグチャになったコボルトも、勇者大吾に真っ二つにされたサイクロプスもいつの間にか消えてドロップアイテムだけが残っていた。
サイクロプスが残した巨人の涙1個とコボルトの残したコボルトの短剣1個を回収する。
こんな時にあれだが何でモンスターの死骸は消えるのか不思議だったのでナナに聞いた。
「毎回思うんだが何でモンスターの死骸は消えてしまうんだ?」
「消えてしまう理由は解明されてないようです。ただ、消えた死骸は魔気となり再びモンスターを生み出すそうです。」
「じゃあモンスターは永遠にいなくならないって事か?」
「現存する最も古い歴史書物にもモンスターの事が記されているようなので、おそらくそういう事です。」
「この場所もまた危ないんじゃないか?」
「今この場所には聖気が満ちています。おそらく先程の勇者大吾様が聖剣を使ったからでしょう。暫くは大丈夫だと思います。」
相変わらずナナは物知りだ。頼りになる。
勇者大吾が持っていた紫色に光る剣、あれが聖剣なのだろう。隠蔽の指輪のせいで剣の名前は分からなかった。手に持たせて貰えば名前が分かった事に後から気付いた。
ナナにアイテムを調べる技能はないのかと聞くと、商人に就けば【鑑定】が使えるようになるらしい。残念ながら商人の就き方は知らなかった。
いつの間にか太陽が沈み始めている。
流石にあんな目にあった後だ。3人とも目に見えて疲れが出ていた。
この場所は今暫く安全らしいのでここで一晩を明かすことにした。
サイクロプスが暴れたおかげで木々が倒され薪は広い放題だった。火をおこし、野営の準備をする。キャンプセットの中にテントがあったので張った。
相変わらすコウモリの肉以来食材を入手出来ていない為、食事は携帯食料だ。
携帯食料を食べながら勇者大吾について話をした。
「それにしてもすごいじいさんだったな。」
「そんなにすごかったんですか?」
「ああ、あんずは気を失ってたっけ?サイクロプスを真っ二つたっだ。今更だけどまだ夢を見てるようだよ。」
「それはすごいですね。」
「しかも【勇者Lv.80】だった。あそこまで上げるのにどの位かかったんだろう?」
「分かりませんが、並大抵の努力ではないでしょう。でも職業レベルの最大が最低でも80以上だという事が分かりましたね。」
「そうだな。まあ俺達には【職業兼業】があるから関係ないけどな。」
「ところであの勇者様は私が昔見た方とは別の人でした。」
「やはりそうだったか。」
そういやナナが見た勇者は今も生きてるなら50歳のはずだ。
名前も違ったし。
この世界にそんなたくさん勇者や異世界人がいるのだろうか?
そんな話をしてた時、俺は戦闘中にログが出た事を思い出した。
ログを確認し、そこに書かれている事に驚いた。
上級職業【勇者Lv.1】を取得しました。
【勇者Lv.1】をメイン職業にしますか? YES/NO
【職業技能】
上級技能【神聖撃】装備武器に聖なる力を付与し、強力な一撃を生み出す。消費MP30
上級技能【光の盾】使用者前方に聖なる光の盾を生み出し、攻撃を防ぐ。使用者の意思もしくはダメージが一定を超えると消える。消費MP30
【パーティー効果】メンバー全員の最大HP+30
【パラメータ恩恵】腕力+10 体力+10
【パラメータ成長】LvUP毎にHP+15 MP+7 腕力+5 耐久+5 魅力+5
なぜ俺が勇者を取得したのか分からなかったが、この職業かなり強い。流石上級職業だ。ただ、技能はMPが足りないのでしばらくは使えそうにない。
メイン職業にしようと思ったがやめた。理由は勇者大吾を【解析】で見たとき勇者と表示されたからだ。俺が勇者をメインにして隠蔽の指輪を装備しても【解析】で見られたら勇者と表示されてしまう。無用な揉め事はお断りだ。勇者はサブ職業にしておいた。別に能力自体は反映されるから問題ない。
そしてステータスを開くともう1つ驚く事があった。
何故かレベルが上がっていた。【解析】を使ってナナとあんずも確認すると2人ともレベルが上がっていた。
亮助
【旅人Lv.6】【奴隷商人Lv.3】【村人Lv.5】
ナナ
【奴隷Lv.5】【村人Lv.9】【獣戦士Lv.4】
あんず
【奴隷Lv.5】
ジャイアントアントだけでこんなに上がるはずがない。ナナによるとサイクロプスを倒していないが戦闘経験を積んだため上がったのではないか、という事だ。
確かにサイクロプスとのレベル差を考えればこの位上がるのかもしれない。
他にする事もなくなったので交代で火の番をしつつ就寝する事にした。




