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異世界アラサー転移者の冒険  作者: モッチ~
第2章 旅立ち~リーンの町編
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第25話 サイクロプスと勇者

森から現れたそいつは一目で何なのか俺には分かった。

特徴的な大きな1個の目、頭に2本の角、身長は3~4メートル程、黒く頑丈そうな皮膚、そして先ほどコボルトを潰したでかく太い棍棒。そう、こいつはサイクロプスって奴に違いない。


「亮助様!!」

「分かっている、サイクロプスだな!?」

「はい、しかしレベルが48です。異常です。通常は30~40でCランクの筈ですが、これではBランク級かもしれません。」


サイクロプスは棍棒を拾い上げ、こちらを向いて凄まじい咆吼を放った。

クソッ【平常心】でなんとか保っているが怖くて動けない。ナナとあんずも震えて動けないでいる。

サイクロプスが棍棒を振り回してきた。なんとか避けようとしたが3人とも吹き飛ばされ地面に横たわっている。棍棒は直撃でないもののかなりのダメージを受けた。

HPが3人とも半分ほどになり、あんずは気絶してしまっている。まずい、次に攻撃を受けたら確実に死ぬ。

折角異世界に来たのに、元の世界に帰るどころかこんなすぐに死ぬ事になるなんて。

一瞬で色んな事が頭の中を駆け巡っていた。もし知られたら大変だが、こんな事ならナナの夜伽を受けとくんだったとか考えてしまった。


俺はもう100パーセントダメだと思った。いくら【平常心】があっても流石に無理だ。根本的に此奴には勝てない。

しかしこのまま無駄に死んでいくのは嫌だ。じゃあどうする?

咄嗟に俺はナナとあんずの前に立ち、叫んだ。


「ナナ、あんずを連れて逃げろ!早く!!!」


どうしてあんな行動を取ったのか俺にも分からない。

よくドラマで身代りになるようなシーンがあったりするが、俺だったらやっぱり自分が一番大事だから見捨てて逃げるだろ、とか思ってたのに。


チロリ~ン♪

何かログが出たようだが俺に気にしている余裕はこれっぽっちもなかった。


サイクロプスが棍棒を振り上げた次の瞬間、何かがこちらに向かって飛んで来た。

飛んで来たのは翼を持った大きな生き物で鳥じゃない。そう、ドラゴンだった。そのドラゴンから誰かが飛び降り、剣を構えて落下してくる。そのままの勢いでサイクロプスに斬りかかり真っ二つにした。サイクロプスは即死だった。


俺は一瞬の出来事に空いた口が塞がらなかった。その後、【平常心】で落ち着きを取り戻し、震えながらも立ち上がった。


突然現れてサイクロプスを一瞬で葬ったその人物はグリーンメタリックの全身鎧に兜、盾と紫色に光る剣を装備していた。


「ありがとうございます、助かりました。あなたは一体?」

「ふぉっふぉっふぉっ、儂は勇者大吾。危ないところじゃったのう。」


俺は【解析】でステータスを覘いた。


【ステータス】

名前:高橋大吾 性別:男 年齢:70

種族:人族 職業:上級職業【勇者Lv.80】


これだけしか覘けなかった。

間違いない異世界人だ。しかも日本人。かなり高齢だ。それなのにあんな高さから飛び降りれるのか、すごいな勇者。更にレベル80だ。

レベル80って事は職業レベルの最大は少なくとも80以上か?


「いきなり【解析】で覘くのはどうかと思うがのぅ。しかし詳しくは見れないじゃろ?」

「すみません、でもどうして?」

「これじゃよ。」


勇者大吾は俺に指輪を見せた。


「これは隠蔽の指輪という物でステータスを最低限しか見れなくするんじゃよ。能力を隠すにはもってこいの代物じゃ。」

「なるほど。」

「おぬしは異世界人じゃな?」

「分かるんですか?」

「儂は【解析】が使えんが大体分かる。名前は?」

「望月亮助と言います。歳は33です。」

「そうか、こんなとこで同じ日本人にあえるとは嬉しいのう。」


つい素直に話してしまった。仮に隠したとしても相手は勇者だ。隠しきれないだろう。

今度は俺が質問をした。


「ところで大吾さんはどうして此処へ?」

「実はのう、数日前から各地で魔気が乱れてるようなのじゃ。それで今みたいに強いモンスターが発生する事件が起こってるんじゃが、この森も魔気が乱れてるようじゃから儂が来たんじゃよ。」

「そうだったんですか、それといきなりで申し訳ありませんがもう1つ聞いてもいいですか?」

「構わんよ。」

「元の世界に戻る方法を知りませんか?」

「ない。」

「えっ?」

「じゃからないのじゃ。異世界転移、転生は一方通行。戻れん。」


いきなり残酷な事実を知ってしまった。もう元の世界には帰れない。


「厳しい事を言うが元の世界の事は胸にしまってこの世界でどう生きていくかを考えた方がええよ。この世界で幸せを掴むのじゃ。それがお前さんの為にもなる。」

「心の整理には時間が掛かりそうです。」

「まあそうじゃろ。儂もこちらの世界に来た時同じ事を思ったもんじゃ。」

「そうだったんですか。」


俺と勇者大吾が会話しているとナナが意識を取り戻したあんずと一緒に近づいてきた。


「大丈夫だったか?」

「はい、何とか。亮助様、こちらの方は?」

「勇者大吾さんだ。」

「助けていただいてありがとうございました。」

「ふぉっふぉっふぉ、娘さん礼ならおっぱい触らせてくれんかのう。」

「ダメです!!」


まったく何て事言い出すんだこの勇者は。

しかしナナは即答だった。


「これは亮助様の物です。」

「うらやましいのう。」


ナナよ、それは問題発言だ。


「さて、そろそろお暇するかのう。次の現場があるでな。元気でな。」

「ありがとうございました。」


勇者大吾は口笛でドラゴンに合図し、降りてきたドラゴンに乗って北の方角へ飛んで行った。

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