外伝第1話 夫が帰ってこない
妻サイドの物語です。
章の終わりにちょいちょい書きます。
私の名前は望月良子、32歳。夫と1歳になったばかりの息子の3人暮らしです。
私は今不安に駆られています。
なぜなら仕事に行ったはずの夫が帰ってこないからです。
いつもなら17時半、本屋とかに寄り道しても18時半には必ず帰ってくる夫が帰ってきません。
とりあえず勤め先の会社の社長さんに電話してみたら、今日は出社していないとの事でした。
事故に巻き込まれたのか?事故なら連絡が来るはずなのに。不安が大きくなり、今度は警察に電話をしました。
夜遅くて対応できないと言われたので、翌日捜索願を出して今は自宅にて待機しています。
家に警察も来て部屋とかを調べていったのですが、特にこれといった手がかりは見つからなかったようです。
私も夫の部屋を始め、色々探したり、調べたりしましたが、成果無しです。
そうこうしている内に数日が経っていました。
今日もいつものように家の中を調べていると、1階のトイレのドアが光っている事に気が付きました。
扉を開けると中はトイレのはずなのに、見た事ない白く広い空間が広がっていました。
その空間の中央に1人の女性が立っていてこちらを見て言いました。
「こんにちは望月良子さん、私は女神です。」
「は?誰?」
「だから女神です。」
「そんなの信じるわけないでしょ!?怪しいわね。」
「旦那さんが今何処にいるのか知りたくないのですか?」
「知ってるの?」
「これをご覧下さい。」
女神となのるその女性は直径20センチ程の水晶玉を私の前に出しました。何かを呟くとその水晶玉に何かが浮かび上がります。
よく見ると居なくなった夫が写っていました。
私はすかさずその女神に聞きました。
「夫は今何処に居るんですか?」
「落ち着いて聞いて下さい。旦那さんは今異世界にいます。」
初めの内は女神の言っている意味が私にはさっぱり分かりませんでした。
ただ、異世界と聞いて夫が好んで異世界の話の本を読んでる事を思い出していました。
夫に早く会いたい私は女神に言いました。
「何故?早く連れ戻して下さい。」
「申し訳ありません。残念ながらもう戻ってこれません。」
「そんな・・・嘘でしょ?」
あっさりと会えないと宣告された私は、一気に絶望にのまれていきました。
更に女神はとんでもない事を言ったのです。
「しかも正式な異世界転移ではなかったので戻れるどころか、今後ご主人にどんな事が起こるか分かりません。突然病気になったり、死んでしまったりするかもしれません。」
それを聞いて私は涙が溢れ、益々落ち込んでしまいました。抱っこしていた息子もいつの間にか泣いています。
女神がそんな私を見ると、続けて言いました。
「突然こんな形でのご報告になって本当に申し訳ありません。これ以上は落ち着いて話ができなそうなので、明日同じ時間にまた来ます。今日はゆっくりと考えて頭の中を整理しておいてください。」
すると女神が部屋と共に急に光りだして消えていきました。
いつの間にか部屋もトイレに戻っていて、私は息子を抱っこした状態で便座に座っています。
何がどうなっているのやら、夢だったのか?考えられるようになるまでに大分時間が掛かりました。
その日の夜。
昼間は不思議な体験をしてしまったが夢だったのだろうか?いや現実か?
よく分からないが女神となのる女性が現れて、夫が異世界に転移してもう戻ってきませんと告げられた。
一体何がどうなってるのやら。
明日また来ると言っていたので兎に角調べようとパソコンを立ち上げて異世界について調べました。しかし出てくるのはラノベやら空想の世界やらで全然答えになりませんでした。
確かに夫は異世界がテーマのラノベを好んで読んでいましたが、それだけの理由で異世界に連れて行かれたのでしょうか?
その辺も明日聞いてみようと思います。




