第17話 2人の今後
朝食を終えて、俺は早速2人の今後について話そうとした。するとナナさんの方から話を切り出してきた。
「私達2人を亮助様の奴隷として連れて行って下さい。」
ナナさんは毎回、突然、突拍子もない事を言い出す。
「どうしてそういう話になるんですか?」
「最初は亮助様と3人でこの村で生活したいと思ったのです。しかし借金を返済した後このまま村に住んでも期待できる収入源はないし、村人が良く思わない。将来は明るくありません。亮助様に娘を託して村から出しても私の事を気にかけて不安になってうまくいかないかもしれません。亮助様とは別れてあんずと2人で村を出たとしてもやはり暮らしていけないと思います。結局のところ奴隷に落ちてしまうでしょう。他にも色々考えました。折角助けた私達がまた不幸になるのは亮助様は不本意なはず。その私達が無事に暮らせるにはどうするのがいいか?それで一番良いと考えたのが亮助様の奴隷にして貰って一緒に連れて行って貰う事なのです。」
「確かに可能ならずっと協力してくれと言ったが、連れて行くとしても奴隷でなくてもいいんじゃないか?」
3人で旅をする。確かに一緒に旅をする事になるかもしれないと考えはしたが、2人を奴隷にするとまでは考えもしないしその気もない。
しかしナナさんは奴隷の方が好都合だと力説してくるのだった。
「いえ、むしろ奴隷の方が都合がいいのです。人族に限らず他種族を見下す者は多からず少なからずいます。一応、法で他種族の差別は禁止されていますが、そんなのはあってないようなものです。下手すると殺されてしまう、という事があるかもしれません。奴隷になっていれば差別はあるかもしれませんが、他人から手を出される事はありません。皮肉なことですが奴隷の方が法の加護が手厚いのです。」
「何で奴隷になってると手を出されなくなるんだ?」
「絶対ないとは言い切れないですが、ほぼないです。この世界では悪事を犯すと称号に犯罪者、殺人を犯すと殺人者等が付きます。例えば奴隷でない人を口説いて性交渉をしても犯罪者にはなりません。しかし所有者のいる奴隷に同じ事をすると犯罪者になります。つまり他人の物を盗んだという扱いになるのです。」
「なるほどね、でも俺じゃなくてもいいでしょ?とりあえず俺に付いてきて、いい人が見つかればその人の奴隷になるとか。俺には妻以外の女性と暮らしていくなんて・・・」
「それは元の世界の話ですよね?この世界とは違います。今は関係ありませんよ。それに私は昨夜言いましたよ。亮助様に好意を抱いたと。」
ナナさんは少し頬を赤らめて言ったが、あっさりと妻の事を否定しやがった。
隣であんずもうんっうんっと頷いている。
何か話を聞いてたらそれが正しいように錯覚してきた。これ以上反論しても俺に勝ち目はなさそうなので、ナナさんの提案に仕方なく乗る事にした。
「はぁ~~~分かりました、分かりましたよ。連れて行きますよ。」
「ありがとうございます。」
「ところで2人を奴隷にするにはどうすればいいんだ?奴隷商人とか呼ぶのか?」
「ご存知でしたか。奴隷商人の技能【奴隷契約】で奴隷にして貰います。」
異世界物ラノベ様様だな。やっぱいるのか、奴隷商人。
ナナは俺が異世界人なのに奴隷商人を知っている事に少し驚いていたみたいだった。
「明後日、金貸しの商人が奴隷商人と一緒に借金を徴収する為村に来ます。その時に契約して貰いましょう。他にも行商人が付いてくると思いますので色々と準備も出来るでしょう。」
ナナの話だと金貸しの商人達が来るのにまだ時間があるらしい。と言っても今の所何もする事がなかった。
村には娯楽が何もないし、村人と話をしようとしてもまともに取り合ってもらえない。ナナさんとは普通に話をするのに・・・ここの村人は徹底してるな。
なので金貸しの商人が来る日まで暇だった。
コウモリの肉は割と量があったので食事は毎回肉じゃがみたいなのと知らない葉っぱのサラダだった。味は悪くない、というか結構美味い。
他の料理も食べたいと言ったら、今の時期他に野菜がないらしく食事はいつも同じだと言われた。
装備の向上も必要だが今は食事の向上が必要だと真面目に思ってしまった。




