第12話 母
「あんず、帰ってきたの?そちらの方はどなた?」
「お母さん起きたの?こちらは亮助様っていうの。ジャイアントバットに襲われてた所を助けてくれたんだよ。」
どうやらあんずの母親が寝床で寝ていたらしい。
俺は軽く会釈をする。
母親はゆっくりと体を起き上がらせるとこちらに向かって頭を下げた。
「それは娘が大変お世話になりました。私はあんずの母でナナと申します。こんな格好でごめんなさい。」
「いえ、たまたまですよ。それよりもご病気か何かですか?それにご主人は?」
「2年前にこの村がモンスターの襲撃にあいまして、主人はその時に命を落としました。私もその時足に毒攻撃を受けてしまい、すぐに治療したのですが失敗してそれ以来立つことが出来なくなりました。毒の拡散は止まっているのですが。」
「すみません、変な事聞いてしまって。」
「いえ、いいんです。お気になさらないで下さい。」
話し終わるとナナさんは泣いていた。
こういう話にはとことん弱い。特に女性の涙程弱い物はない。俺はその話を聞いた後、鞄から解毒薬を取り出して差し出した。
はたしてちゃんと効くかどうかは分からないが。
「これを飲んでください。解毒薬です。」
「そんな貴重な物は頂けません。お金も払えませんし。」
あんずの時と同じような反応だ。やはり薬類は貴重らしい。
「いいから飲んで下さい。」
解毒薬の瓶を開封してナナさんに渡した。
意外と彼女は素直に飲んでくれた。良かった、あんずの時は怪我してるとはいえ元気だったから無理やり飲ませたが、流石に毒で2年間動けない人に無理矢理飲ませるなんて俺には出来そうにない。
結果見事に毒は抜けた。流石に長い間寝込んでいたんだし、すぐに歩けるようになる訳ないだろう。リハビリが必要だよね。って思っていたら多少フラフラするもののすでに歩いていた。
獣人の肉体の構造はどうなっているんだ?
すっかり日も沈み外は真っ暗になっていた。部屋に明かりはあるが正直暗い。
俺は【無限倉庫】内の簡易キャンプセットからランタンを取り出して明かりを灯した。
「すごく明るいですね。」
「ナナさん、いきなりで申し訳ないですけど色々分からないことがあるので質問してもいいですか?」
「あなたは私達親子の恩人です。私に出来る事でしたら何でも協力させて頂きます。」
目の前でナナさんがほほ笑んでいる。
ランタンで部屋が明るくなった事で顔がハッキリ見えた。
あんずは既に疲れて寝てしまったようだ。寝床で寝息を立てている。
ナナさんはとても美しかった。落ち着いた清楚美人という感じだ。
髪色は明るめの紺色で髪型はあんずと同じボブカット、その上に耳が乗っている。あんずの耳より大きめだ。
身長は160センチ位だろうか。アンズと同じ位スラッした細身なのに胸はあんずよりも大きい。
やはりブラジャーはないのだろうか?ノーブラだ。
ちょっと恥ずかしかったが聞いてみたら犬人族はブラジャーをする習慣がないらしい。ブラジャー自体は存在するそうだ。
半犬人族のあんずと違って純粋な犬人族のナナさんは腕や脚にも体毛が生えていた。
なるほど、あんずが異種族間のハーフなのは一目瞭然だ。
俺はナナさんに質問する為に煩悩を振り払いながら頭の中を整理していた。
ついでに心の中で妻に謝っておいた。




