普通の男子高校生
プロローグ的ななにか
「あ、これ……ねぇねぇ、これカワイくない?」
「お、チョーカワイイじゃん!」
「でしょー?」
「でも、アケミの方がもっとカワイイぜ!」
「も、もぉ! 恥ずかしいこと言わないでよ!」
「恥ずかしがることなんかないぜ、ホントにカワイイんだからよ」
「マー君……」
「アケミ……」
目の前でイチャイチャするカップル。それに対してイライラする俺。
七月ももう終わりに差し掛かり、高校2年の3分の1がやっと終わった素晴らしい日。明日から夏休みだという最高にテンションが上がりそうな日に、俺のテンションはダダ下がりだった。
今、俺の目の前では、おそらく俺と同じ学校の生徒であろうカップルが道をふさいで歩いている。
ここはビルとビルの間の狭い通路。本来ならビルの関係者くらいしか通らなさそうなこの道を、俺は今歩いている。なぜそんな所を歩いているのかと聞かれれば、それはここが近道だからという、ただそれだけのことだ。そしておそらく今俺の目の前でいちゃついているバカップルも同じ理由でここを歩いているのだろう。
ここは結構学生が近道として使っていたりする。そのため、たまに他校の生徒とかと下校時間が重なって混雑する時もあったりする。だが、今日は終業式で他校とは時間が重ならない。だから人が少ないだろうと思ってこの道を使ったのだが……。
「そーだ、マー君。この後どこいくぅ~?」
「明日から夏休みだし、旅行とかいかね?」
「あ、いいねぇそれ~」
「じゃあこれから俺んち来て計画立てね?」
「おっけ~」
確かに人は少なかった。このバカップルと俺の3人しかいない。
しかしこのバカップル、両手に荷物を大量に持っているせいで、実際には横に4人くらい並んでいるのと変わらない幅になっている。この狭い通路で横に4人も並んだら、もうその脇を通り抜けることはできない。
しかもだ。このバカップル、自分たちの世界に入っているのか俺のことに気がついてねぇ。
いや、実際には俺がどけと何度か声をかけたのだから、俺がいるのはわかってるはずだ。だが、こいつら「あ、今退くわ」とかいいなが一向にどこうとしねぇ。
もっと正確に言えば、道を開けようと端によったり荷物を整理したりしたのだが、その度に
「ほら、アケミこっちに寄れよ」
「あっ」
「? どうしたアケミ。どこかぶつけたか?」
「ううん。その……いきなりマー君が抱き寄せるからドキドキしちゃって……」
「アケミ……」
「マー君……」
とイチャイチャしだして、その上荷物が地面に置いてあったままだから道は塞がったままだし。なんか荷物を跨ぐのもいちゃついてる奴の横を通るのも嫌だったし。
それでも荷物をどけてくれというと、一応どけようとはするのだが、余りにも多い荷物で、すごいもたついてるし、なんかいちいち女の方が荷物の中身を見ては男の方に「カワイイ」といって作業が止まるし。
そんな感じですぐに自分たちの世界に入ってしまい、俺のことはすぐに忘れやがるのだ。
もう絡むのも面倒だし、声をかけなくても少しずつ前に進んでるからいいかと思っていたけど……。
「きゃっ!」
「どうしたアケミ!」
「もぉ~……なんか虫が飛んできてウザイー」
「安心しろアケミ! 俺が虫からお前を守ってやるから!」
「マー君、そこまでしなくてもいいよぉ~」
「いいや、俺はお前を守る騎士だからな! お前にまとわりつく悪い虫から絶対に守ってやるよ!」
「マー君……」
「アケミ……」
正直もう限界だ。別にリア充?とか呼ばれているらしい奴らを憎むとかそんなことはないが、流石にこんな間近でいちゃつかれると本気でキレそうになる。
やっと半分まで進んできたが、一度戻って別の道から帰ろう。近道しようと思ってたのに無駄に時間を過ごしてしまった。
「……?」
通路から出ようと来た道を戻っていると、ビルの壁が崩れているのに気づく。崩れているといっても、そこまで豪快にではなく、人が一人通り抜けられそうなくらいの穴が壁に空いている程度のものだ。
「こんなとこに穴なんて空いてたっけ?」
カップルに気を取られていたためか、来るときはこの穴に気付かなかった。
……しかし、こう穴があいていると無性に覗きたくなるのはなんでなのか。
「…………」
あたりを見回してみる。遠くにバカップルがいるだけで、それ以外の人の気配はない。そのバカップルもイチャイチャしていて俺のことは気にしていない。……覗くなら今しかない!
俺は一応周りを気にしつつ、穴を覗き込む。
「……なんだあれ」
ダンボールがたくさん積まれていて、一見普通の物置のように思えるその部屋。しかし、薄暗いためはっきりとは断言できないけど、床になにやら変な模様が描かれていて、それが異様な雰囲気を醸し出している。……なんとなくだけど、あの模様には意味が有る気がする。そしてあまり近寄らないほうがいいと俺の中の何かが囁いている。
というわけで覗くのをやめようと身を引く――
「あっ」
――時に、胸ポケットにつけていた校章が引っかかり、取れてしまった。
「あー……」
神がいるのならだいぶイタズラ好きのようだ。
俺のワイシャツから落ちていった校章はそのままコロコロと転がっていき、そして模様の、おそらく中心あたりで止まる。
「どうすっかな……」
手を伸ばしても届く訳もなく、あれを回収するには中に入らないといけないだろう。
勝手に中に入ることに多少の罪悪感を覚えつつも、それよりもあの模様に近づきたくないという気持ちが強かった。だが、あれをこのまま放置しておくわけにもいかないし。
「仕方ないか」
俺は手に持っていたカバンを地面に置くと、穴に手をかけ、頭から穴に入る。
「うわっ!」
ズルっと、手が滑りそのまま頭から床へと落ちる。穴は俺の腰の位置にあったため、穴から落ちたところで大した怪我はしなかった。が、頭をぶつけてしまった。
「いてて……」
頭を抑えなが立ち上がる。気絶するほど強くぶつけたわけでもなく、意識ははっきりとしていた。……と思う。
「……なんだこりゃ」
自分でははっきりしていたと思ってたのだが、やっぱり頭をぶつけたせいでおかしくなってしまったのか。
模様……というか魔法陣が、光っている。外から見たときは異様な雰囲気こそ醸し出していたものの、光っていなかったはずの、部屋の床一面に描かれている魔法陣が光っていた。
「マジかよ……」
ただ光っていただけならば、魔法陣型の照明だとか、そういうふうに考えられたのかもしれない。
けれど、その魔法陣からモヤが出ていて、しかも魔法陣の中心らしき場所(俺の校章があるあたり)ではよくわからない現象が起きていた。言葉にして表せと言われれば……「歪み」だろうか。
魔法陣から発せられ、部屋中に充満していたモヤは、魔法陣の中心の歪みに吸い込まれていく。そして歪みはモヤを吸い込みながらどんどん大きくなって――
「あ、やば」
このままじゃ俺も巻き込まれてしまうと気づいたときにはもう遅かった。
その歪みは部屋の端にいた俺に届くくらい大きくなって、そして俺は呆気にとられている間に飲み込まれた。
初めまして木葉っす!
アニメとかラノベとか見てたら書きたくなったので書いてみました!
「よくさく木葉」の処女作?なんで、まあ読みにくいかもしれないけど慣れてきたらきっと読みやすくなると思いまっせ
一応次回から本編みたいな感じっす!




