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前世の私の姉が最強すぎる件について  作者: フライングマッシュルーム
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友人からの厄介事

読んでくださっている方、遅れてすみません。

いつもありがとうございます。

 

 「――――とこのように、戦場では決して闇雲に敵陣に突っ込んではいけません。勇気ある行動と無謀な行いは違うものです。知能の低い魔獣との戦闘においても同じことが言えます。一人の突出した行動により場は乱れ、全体への危機へとつながります。かの宮廷魔導士エメロ=クリスタは異例であり、決して真似はしない様に」

 

 雲一つない昼下がり、教台の上で何度も先週の研修時に見たエメロ=クリスタの戦闘スタイルの解説と絶対に真似をしないよう釘を刺す担任の先生の話に飽きた私は窓の外へと目を向けた。

 先週の戦争が嘘のような穏やかな校庭、いつもなら外から実践鍛錬をしている生徒の魔力を感じるのだが、感じないとなると今日はどのクラスもこんな感じなんだろうな。

 

 私の席は窓際の一番後ろというベストポジションで、いつもこの時間に襲ってくる睡魔と戦うのがつらい。

 温かい日差しがポカポカと当たって今日も眠い。そっと欠伸を噛み締めていると前の席にいるクラスメイト達のヒソヒソ話が耳に入ってきた。

 

 「ねえねえ、先日の研修すごかったよ、エメロ様が敵陣に突っ込んで一気に敵将を捕えたんだよ」

 「いいなあ。エメロ様を見られて。私も研修出ればよかった。」

 「そうだね、あの戦いは本当に圧倒的だった。・・・でもあの戦い方は私達には絶対にマネできないよね」

 「エメロ様の戦い方はどれも私達では真似のできないものばかり」

 「だからこそ憧れるんだよね」

 「そうそう、憧れすぎて最近ではあの戦い方を真似しようと無謀な挑戦をしている生徒が出て来ているとか」

 「ああ、それで今日は一段と先生たちが五月蠅いのか」

 馬鹿よねぇ。とクスクスを笑うクラスメイトに私も内心頷く。

 全く無茶なことをよくするなあ。

 お陰で耳にタコが出来そうだよ。

 

 長い溜息をつき、今にも閉じそうになっている瞼にぐっと力を入れて耐えていると、不意に窓際の反対の方から横腹を突っつかれた。

 「っ」

 咄嗟に悲鳴を上げなかった自分を手放しに誉めたい。

 悲鳴を上げていたら、今頃授業を妨害したとして教台の上に立っている担任の先生に補習を言い渡されていたであろう。

 私は隣の席に座る友人を非難するようにギロリと睨みつけた。

 この国では珍しい褐色の肌に紫の髪と瞳の友人は、特に反省した様子もなくサラリと受け流し、にっこりと笑顔でメモ用紙のようなものを私が見えるように持ち上げた。

 

 『放課後いつものケーキ屋に集合』

 

 メモ用紙にはそのように書かれてあった。

 私は甘いものは好きだが、正直この友人がそういう所に私を誘うときは決まって面倒なことを頼まれることが多い。

 最近ケーキ屋さんに行きたくて友人たちを誘っても、誰も乗ってくれない。一人で行く気力もなくてお預け状態だったから、本当は誘いに乗りたい・・・けどなあ。

 未だに笑顔で、行くよね? と圧を掛けてくる友人を見る限り面倒なことになる予感しかしない。

 ダメもとで、今日はちょっと無理かも・・・ と困ったような顔もしてみたが。

 

 『ケーキ屋に絶対集合』

 と次に太めの文字で書かれたメモ用紙を見せられて私は無駄な抵抗を諦めてため息をついた。 

 「はあ」

 


 

 生まれ育った村を出た私は今、リュートシア王国の首都リガルドにある王宮に隣接して建てられている名門校に通っている。

国内一位のエリート校だけあって、王族や貴族はもちろん、国中の選ばれた魔導士の卵が在籍している。

 因みに首都の名前の由来は初代国王のお名前との事。

 それにしてもさすがリュートシア王国の首都というだけあって豊かだ。

 生活水準も前世の世界に近いし、娯楽施設もそこそこあるし快適だ。

上京した時は村で送った生活との差にビックリさせられたものだ。

前世との違いといえば、向こうは電力で生活が成り立っていたが、こちらでは魔石など魔力を帯びた資源によって成り立っている。

あ、魔力で思い出しちゃった、来月筆記テストがあるじゃん勉強しないとヤバいかな・・・。  

 「・・・ああ、嫌だなあ」

 「ウフィー? どうかしたの?」

 名前を呼ばれ、ふと顔を上げれば、心配そうに顔を覗く友人の顔が間近にあった。

 そういえば、放課後になって2人で町のケーキ屋に来ていたっけ。

 我に返った所で、丁度タイミングよく店員さんが「お待たせしました」と注文したガトーショコラが目の前に置かれる。

 「いただきます」

 フォークで掬って一口食べてみる。

 うん、甘くておいしい。

 「ウフィー、アンタさっきからぼぅとしっぱなしだけど大丈夫?」

 「うん、何でもないよ」

 笑って大丈夫だよと伝えれば、友人はそう、と言って運ばれてきたコーヒーに口をつける。

寮に帰ったら勉強しよ。

 私は、もう一口ケーキを味わってから本題を切り出した。

 「――――――――それで? 今日は何の用で私はを呼び出したの、ジェルミー」

 どうせ面倒事でしょ。とフォークを咥えてじと目で見れば友人、ジェルミーは苦笑した。

 「そんなに警戒しないで訳を聞いてよ。 ・・・実はね私、まだ今月の実践成績を収めてないのよ」

 「・・・・・断る」

 予想を裏切らない友人に速攻で拒否をする。

 「えぇ~、まだ殆ど言ってないよ」

 口を尖らせて言うジェルミーに、私は眉間にしわを寄せて首を横に振った。

 「そこまで聞けば大体予想は付くよ。もう一度言う、断る!!」

 「そこをなんとかホントお願い、今月訳あって実践成績らしいことをまだ収めてないのよぉ」

 拝み倒さんばかりに両手を合わせて涙目で懇願するジェルミーに私は呆れた。

 「収めてないって、今まで何をしていたの。今月後1週間で終わっちゃうよ」

毎月、学校から指定された数あるクエストや研修の中から選び、こなして点数を収めないといけない面倒臭い宿題を出される。 因みに私は今回、研修を選択して充分な程に点数を稼げたから安心だ。

 「・・・今月の初めに合った筆記の抜き打ちテストで赤点を取って、補習で担任にみっちりしごかれてた」

 「うわあ」

ウフフと、どこか遠い目をして笑っているジェルミー。その時のことを思い出したのか、みるみるうちに萎れていく。

私は担任の先生の補習を受けた事はないから分からないけど、実際に補習を受けて亡霊の様になっているクラスメイトを見た時は絶対に補習を受けてたまるかっと心底思った。

以来、前世で嫌いだった予習、復習は今は欠かさずやっている。

 「・・・ご愁傷さまと言いたいけど、補習を受けないといけないような点数を取ったジェルミーが悪いんだよ」

自業自得だよと言うと、ガクッとジェルミーはうなだれた。

大体、私達の担任が凄い神経質で怖い事は分かっているろうに、七三に分けられた銀色の髪、眉間の皴の深さ、吊り上がった瞳に装備された眼鏡、そしてきっちりかっちり着こなされた服装。

見た目そのまま性格もド厳しい、生徒の間にあるブラックリストの上位にも載るほどスパルタな先生なんだって――――。

・・・そう言えば、前に凄い反抗的な生徒が担任の先生に楯突いたのを思い出した。

高位貴族の子息で一般出の生徒を見下してコケにしていたところを担任の先生が注意したんだよね。そしたら逆ギレして先生に掴みかかって、確か眉間の皴がどうのこうのと言って先生を馬鹿にしたんだよ。


―――まさに刹那の出来事だった。


先生が、胸ぐらを掴んでいた生徒の片手を握ったかと思うと、もう既に取り押さえていられていて、そのまま指導室に連行されていった。


・・・速かった、どう取り押さえたのか全く動きが見えなかった。

余談でその後、指導室から出て来た生徒は二分の一に萎れていて、あの生意気な面影はなくなっていた。

あの先生だけは敵に回したくない。


 「・・・分かっているって。―――もう二度と補修なんかになるような点数とってたまるか」

自業自得とは言え、これ以上友人が、悲惨な目に合うのは忍びない。

補習は懲りた様だし次は努力を欠かさないだろう、それに何より私は頼まれたら断れないんだよね 。

 「―――はあ、仕方ない。いいよ」

ケーキ屋に誘われた時点でこうなるのは薄々分かっていた。

 「えっ、ホント?」

うなだれていたジェルミーが勢いよく顔を上げる。

 「うん、手伝うよ」

と、もう一度、頷きながら言うと、向かい側の席から身を乗り出して来たジェルミーが首に抱き付いて来た。

 「ああぁ、ウフィ~、心の友よ~愛してるよお」

 「ちょっ、苦しいって、あと他のお客さんの迷惑で恥ずかしいからやめなさいっ」

首に抱き着いてきた腕を解こうとするが、ジェルミーは持ち前の馬鹿力でガッチガチに締めていて私の腕力では剥がせない。

ああ、まわりのお客さんと店員さんの迷惑そうな視線が痛い。

そしていい加減、本当に苦しくなってきたので、ジェルミーの背中をポンポンと叩いて苦しいとジェスチャーをする。

慌てて手を放したジェルミーはゴメンと言って腰を下ろす。

 「・・・そんでどうするの? 研修はもう今月はないからあとクエストだけだけど」

研修は一回参加しただけでもかなりの点数を稼ぐことが出来る。

しかし、クエストは区々で、ものによっては研修でもらえる点数よりも高かったりする。

でも点数が高ければ高いほど、危険やリスクも大きいので自身の力量と判断力が問われる。

 「実はもうどのクエストを受けようか決めてあるんだ」

そう言って制服の胸ポケットから取り出した用紙を広げ、私は用紙を覗き込んだ。

 「点数の低いクエストをちまちまやるなんて面倒臭いから、一番得点の高いのを取ってきたよ」

 「北の神殿の神域に侵入したモンスターの討伐?」

クエストに大きく書かれた文字をなぞるように読むとジェルミーは大きく頷いた。

 「そ、人を襲う凶暴な魔獣が神域の森に侵入したらしいのよ」

 「らしい?」

 「知ってると思うけど、魔の者たちは神聖な場所や物を嫌う。凶暴であればあるほど、力が強ければ強いほど神聖なものを避ける。なのにどうしてかな?」

「どうしてだろうね」

首を傾げて面白そうに聞くけど私に聞くな。侵入したモンスターに聞いてよ。

 「不思議だよね、だから興味が湧いちゃって、もちろん成績の得点がいいからって理由もあるけど」

ジェルミーの話を聞きながら、クエストの詳細やその下の欄に書かれた点数を読んで固まった。

そして、もう一回点数をじっくり見る。

 「―――――確かに気になるけど、ヤバくない? 下の欄の点数、見違いでなければ今月の目標点数ピッタリなんだけど・・・」

「それについては担任に質問して聞いてみたけど、侵入した魔獣は私達でも倒せるレベルで数もそんなに多くないって、ただ場所が場所だからあまり派手に暴れないでほしいんだって。点数が高いのは多分そのせいだと思う」

それを聞いてホッと息をついた。

よっかた、魔獣が強いからあの点数なのかと一瞬ヒヤッとした。

でも・・・

「・・・もしかしてこのクエスト、私とジェルミーだけで受けるなんて言わないよね? 言っとくけど私、攻撃系魔法は使えないからね」

さすがに2人だけじゃ不安だ、ジェルミーもそう思ったのか

 「安心してさすがに私も2人じゃ心細いからエマとミーシアに助っ人をお願いしたよ」

もう2人の友人の名前を聞いて安心して頷いた。

 「じゃあ、いつものメンバーでいつものフォーメーションだね」

 「うん、そういう訳でよろしくね~」

 

読んでいただきありがとうございました。

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