目覚め
遅くなりました。
悩みに悩んでようやく書きました。
あの恐ろしい殺人鬼に殺された後、一言で表現するなら私は転生をした、らしい。
ふと気が付けばそうなっていた。
ろくに動かない身体、視界に入るのは見慣れない天井。
意味のある言葉を発することも出来ない私の顔を覗き込んでくるのは見知らぬ若い女性。
優しげな笑顔、甘い声。
「おはよう、私の可愛い娘。」
起きたばかりの私をそっと抱きしめ、可愛らしい女性が囁くようにそう言った。
―――娘?
目の前の女性がそう言ったが私にはピンとこなかった。私が娘だと言うのなら、あなたが私の母親だと言うの?
私の母と言えば、私を40歳の時に産んでくれた少し年配でしつけに厳しい人で、こんな若くて小柄で優しそうな人ではなかった。
違う、この人は母じゃない。
そう思う一方で本能的な部分だろうか、この人が私の母だと主張して困惑する。
「サーラ、起きたのかい?」
「ええ、早く貴方も抱いてあげて」
騒々しく部屋の中に入ってきたのはこれまた若い男性だった。
話の内容から察するにこの人が私の父なんだろうか。
恐る恐るといった感じで私を抱き上げると、頬が蕩け落ちないか心配なるくらい男性の相好が崩れた。
「おはよう、ウフィー。今日もいい天気だよ」
とろんとろんの表情で、さらにワントーン上がった声で話しかけてくるところ申し訳ないが、怖いです。
この人も華奢で一見女の人のように見えるが、声が男の人の声で違和感ありまくりだ。
私の父は私が二十歳になるころには70歳近くのお年だったけど、この人の場合どうなんだろうか。
起きたばかりの私を抱いてはしゃぐ2人は、まだ二十歳も超えてない様にも見えた。
死んだ記憶がある、そして転生した自覚も。
だからと言ってそんな簡単に切り替えられるものでもない。
2人に父と母だと言い聞かせられる度に、必ずと言っていいほど前の両親の顔を思い出す。
今、2人はどうしているだろうか。
やっぱり悲しんでいるのだろうか。
父と母に会いたい。
けれどもう会うことは出来ないのだろう。
伝えたいことがある。
――――先に死んでごめんなさい。
親不幸者でごめんなさい。
ああ、こんなことになるなら父と母をもっと大事にすればよかった。
無条件で与えられる愛情を当たり前だなんて思わなければよかった。
後悔しても、もう遅い。
すべて終わってしまったことだから。
ただ・・・。
あの時私と一緒にいた姉は無事だろうか。
あの殺人鬼に襲われなかっただろうか。
それを確かめたくても今の私では知ることは出来ない。どうも私が転生したこの世界は前世の世界とは違うようだ。
たた無事であることを祈ることしかできない。
どうか、姉は無事でいますように。
そう願いながら、疲れた私はゆっくりと眠りに落ちていった。
ありがとうございました。
もうちょとペースを上げれたら良いなと思ってます。