作戦会議②
しかし、転職計画を遂行するにあたり、最大の難点は食料の確保だった。
攻略の準備には二日を費やす予定であったが、その間、600人とこれから加わる東組の人数分の食料を調達しなければならないのだ。
幸いなことに、風町医院には災害時のための非常食が500食程度備蓄されていたので、この日は何とかそれで乗り切って、明日から動きだすかたちを取れそうだった。
明日からはレベル上げを兼ねて、魔物を討伐しながら市内のマーケットなどをあたってみることにした。
食料を求めてマーケットに訪れた他の人が困らないように、広範囲から少しずつ拝借する計画だ。
また、ホームセンターにも目星をつけて、武器や防具になりそうなものを調達することもその計画には盛り込まれていた。
できればポーションもいくつか用意しておきたいと考えたが、中型モンスターを相手にするのは危険すぎるという兼光の判断でこれは諦めることとした。
しかしながら、それだけの準備をして、多大なリスクを冒してまであの台地にたどり着くメリットが果たしてあるのだろうか。
仮に、あの台地が安全地帯であるというクラッカーの言葉を信じるとしても、それだけでは動機としては不十分だった。
本当にあの台地には魔物が入り込めないとしても、あのまっさらな土地で生活を立て直すほどの余力も資源も、彼らにはない。
だが、その懸念を払拭したのもまた、クラッカーの『つぶやき』だった。
ちょうど会議の最中に届いたそのつぶやきにはクラッカーの言葉でこう書かれていた。
『言い忘れけどよ、安全地帯では簡単に水や食料が手に入るかンな。まあ、たどり着ければの話だが、せいぜい頑張れや』
後半部分の『たどり着ければ』は、きっと大量に出現した魔物のことを示唆しているのだろうとすぐに思いつく。
どういう理屈で食料が簡単に手に入るのかは不明だったが、どのみちこの言葉にすがる以外に選択肢はなさそうだった。
今や全ての交通網は麻痺しており、流通は完全にストップしている。
放っておけばこの町に残された食料などあっという間になくなって、あとは死を待つのみとなることは明白だった。
「必ず突破しよう」
兼光が活気に満ちた表情を造りながら号令をかけると、各々が声を上げてそれに応えた。
少々調子を崩しておりますが、すぐに良くなると思います。
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