風町美砂の焦燥⑥
「……そうね。桜には偉そうなことをいってしまったけれど、正直今回は二人に助けられたわ」
「じゃあ、お礼として私たちに教えてくれないかな。ポーションにこだわる理由」
「ジムに入れってのはどうしたのよ」
「今は多分、こっちの方が大切だと思うんだ」
どうやら朱音の無邪気な笑顔には敵いそうにない。
美砂はポーションを収納した後でIFを閉じて朱音に向き直った。
エキドナの命を奪った直後で茫然としていた桜もハッとして顔を上げると、食い入るように美砂を見つめながら言葉を待っていた。
「……脳にダメージを受けたせいで植物状態になってしまっている父に使うのよ。停電にでもなって生命維持装置が止まれば、父の命はないわ。だから急いでいるの」
「なるほど、超納得だよね」
「はい、おしまい。借りは返したわよ」
「ちぇー」
そういって歩き始めてしまった二人の背中に向かって桜が慌てた様子で声をかける。
「ちょ、ちょっと! もっとこう、秘められた過去、みたいなお話の流れになるところでは……」
美砂は振り返ると、肩をすくめながらそれに応えた。
「父親がそうなってしまったのは私のせいなの。だから焦りもするし、無茶もする。OK?」
困ったように微笑む美砂を見て、桜は後悔した。
始めて美砂が自分に笑顔を向けてくれた。
けれど、そのことを喜ぶには、余りにも悲しい笑顔だった。




