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インターフェイス

「分かったことについて、皆で確認してみよう」



 兼光が黒板の前に立ってチョークを片手に声を張る。


 生徒たちは各々の腕輪のホログラムを覗きながら、適当に座り込んでいる。


 生徒たちの分析をもとに、腕輪の機能についてわかったことが黒板に箇条書きされていた。



1.システムの「取り外し」を押せば腕輪を取り外せる。

  腕輪を外すとステータスポイントによる腕力アップの効果は消える。

  腕輪を他人に譲渡した場合も起動はするが、ステースアップの効果は繁栄されない。


2.マップボタンを押すと、半径200メートル近辺の地図が詳細に表示される。

  インターネットのマップサイトなどと同様、世界中の地図を細かに見ることもできる。


3.写真や動画撮影などの機能もついている。システムから操作可能。


4.翻訳機能あり。システムから。


5.スキルアイコンについては不明。

  現段階ではボタンが暗転しており、選択不能。


6.コミュニティアイコンからパーティを組むことが可能。

  パーティーメンバーは最大で5人。


7.「パーティー通話」が可能。コミュニティから。


8.パーティーに属さない個人との通話は、相手のIDが分かっている場合に限り可能。



「そして一番驚いたのがこれだね」



 腕輪の側面には小さなカメラのレンズのようなものがついていた。 


 兼光がアイテムアイコンの「収納」を押してから、壁に立てかけてあった木刀にそのレンズを向ける。


 続けて「決定」にタッチすると、レンズから光が放たれた直後に木刀は音もなく姿を消してしまった。


 次に「アイテム一覧」に現れた木刀の写真にタッチし、「取り出し」をクリックすると、まるで宙に絵を描くかのようにそれが姿を現したのだった。



「アイテムとして収納できるのはトータルで500キログラムまで。食べ物や飲み物も収納できる。けど生き物はどうやら収納できないらしい」



 生き物。これについては風町美砂が検証した。


 というより、いきなり彼女が健吾に向けて「収納」を試したことで発覚した。


 「これで化け物たちも捕まえれたら苦労しないのに、残念だわ」と、震える健吾をよそにつまらなそうな顔をしていた。


 そのあとで、這っていたムカデなどでさらに試してこの結論に至ったのだから、実験の順序が完全に逆である。



「外部と連絡をとるのは難しそうだな。相手のIDが分からないと個人通話できないし……」


 

 健吾が画面を操作しながら肩を落とす。



「あと気になるのは、コミュニティの中にある『取引所』と『掲示板』だね」



 兼光がそう言うと、彼の足元に座っていた児玉浩太が口を添えた。



「多分アイテムの売り買いや、情報交換ができるのだと思いますが、今は使えないみたいですね。未実装なのかもしれません」



 そして最後に、兼光が締めくくる。



「あと他に細かい機能は山ほどあるけれど、重要そうなのはこんなところかな。取りあえずこの腕輪のことを、今後はIFと呼ぶことにしよう」



 あの男は腕輪のことを「インターフェイス」だといっていた。


 それを略してIF。


 兼光は説明を締めくくったあとで、表情を曇らせながら続けた。



「みんな家族が心配だと思う。早く安否を確認しに行きたいのは分かるけれど、まずは自分の身を守ることを優先していこう。僕らにはまだ人を救う余裕は無い。外には奴らがまだ数えきれないほどうろついているし、今の僕らは肉体的にも精神的にも疲労しているからね」



 IF画面のデジタル時計の表示は22時13分。


 生徒たちの中には体調不良を訴えて、すでに横になっている者も少なからずいた。


 目まぐるしく変化する状況に、疲れてしまったのだろう。


 美砂も、熱が下がらず辛そうにしている宝木桜を、歯噛みをしながら見つめていた。



「加えて厄介なことに、どうやら奴らは校内に直接出現することもできるようだ」



 生徒たちの顔色が変わる。



「それについては俺がこの目でしっかりとみた。実際に保健室では風町と宝木があの小人に襲われた」


 

 薬師寺がそう言うと、生徒たちはざわめきながら辺りを見回した。


 

「一匹は倒したけど、薬師寺先生のお話の通りだとすると、まだ校内に数匹紛れ込んでる可能性が高いんだ」



 兼光が付け加える。


 もしかすると校内で沸いた数匹が外に漏れ出て健吾たちを襲ったのかもしれなが、健吾たちが渡り廊下にでる直前まで、校内は締め切られていたはずだった。


 ともすれば、校舎の外と内、同時に出現したと考えるのがこの場合自然だった。



「しかし、小人たちの姿が全く見えないというのも妙ですよね。物音の一つもしませんし」



 梶浦が多目的教室の扉に耳を当てて、廊下の様子を覗いながら呟く。



「確かにそうだね。体力が尽きる前にもう一度校舎内を散策して安全を確認したほうがいいと、僕は思う」



 兼光がそういうと、「もちろん俺も参加ね!」と健吾が金属バットをもった手を高々と掲げた。

 

 その後ろでは梶浦も静かに手を上げていた。



「お、俺も行こう」



 そう言って、最後に手を上げたのは意外にも薬師寺満だった。

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