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決戦前夜③

「そんなっ……」



 兼光は浩太からの報告を受けて言葉を失った。


 しかし、浩太はまだ安全地帯に向かった30名からなる台湾人の一団が壊滅したことしか伝えてはいない。


 本当に重要なのはその原因にあった。



「魔物の数は三島先輩が見たものより多いようで、50はいたということでした」


「50!? ―――なるほど、確かに全滅するかもだな。でも俺たちには約60人の転職者がいるし、そう簡単にはやられないだろ」



 横で聞いていた服部が言うと、浩太は小刻みに首を横に振る。



「違うんです。彼らはその50体をなんとか倒したんです」


「どういうことだ?」



 梶浦が尋ねると、浩太はゴクリと固唾を飲みこんでから伏し目がちに話し始める。



「50体の魔物はいっぺんにでてきたわけではなく、10匹ずつくらい、間を置いて出現したそうです。ですので、30対50ではなく、30対10を5連戦した形になります」


「なるほど、それなら常に数では勝っているし、なんとかなりそうだ。―――でも、そのあと何かあったんだね」



 兼光の言葉に小さく頷いたあとで、浩太は結論を口にする。



「虎です。大きな、本当に大きな虎が現れて、瞬く間に人を襲って……食べたそうです。フレンド申請を受けてくれたその人をだけを残して、全員を……」



 言葉がでなかった。


 それまではいくらか楽観的に浩太の話を聞いていた服部や梶浦も、押し黙る。


 しばらくの静寂のあとで、兼光は詳細について尋ね始めた。


 その虎の大きさは具体的にどれくらいなのか、魔物解析は実行したのか、なぜその人だけが生き残れたのか、と。


 次々に投げかけられる質問に浩太がたじろいでいることに途中で気が付いて、兼光は「すまない」と頭を下げる。



「いえ、僕も同じようなことを彼女に聞きました。あ、報告が遅れましたが生き残ったのは女性です。その虎の大きさは象の3倍以上。毛皮は青白く、雷のように俊敏に動き、極めて獰猛だと言っていました。彼女は元々戦闘要員としてではなく、救護係として一団の最後方にいたらしく、必死で山を駆け下りて公道にでると、その虎はそれ以上は追ってこずに煙のように姿を消したそうです」


「そいつのレベルは分かるかい?」



 兼光の問いかけに、浩太はゆっくりと首を振る。



「いいえ。魔物解析は実行したそうですが、記載されていたのは魔物の名前だけだったようです」


「……そうか。それで、なんていう魔物なんだい?」



 兼光が尋ねると、浩太の表情がいっそう強張る。


 そして、ファンタジーの創作物が好きな人間ならば誰しもが知っているであろうその名に、確かな畏怖を込めながら口にした。



「―――白虎ビャッコ、です」

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