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第五章:誓いの言葉を2

最初がハイズ視点で後半が私視点となり、それから先は私視点となります。

刃を水平にして、俺の肩に置いたエリナ様は静かに言葉を紡いだ。


「ハイズ・フォン・ブルア。貴方は王国に忠誠を誓い・・・・その身を王国に捧げますか?」


「・・・・誓います」


俺は昂ぶる心を落ち着かせ、静かに答えた。


「では・・・・主人の為には?」


「この身が朽ち果て、魂だけの存在になろうと唯一の主人の為に戦います」


ここで本来ならば仕えるべき主人が騎士たる者が護るべき「騎士の十戒」を唱え、それを騎士になる者が誓う。


しかし、俺は・・・・・・・・


「貴女様の為なら自分の身内はおろか一国・・・・神だろうと、俺は戦います。貴女様を護る為ならば後世に如何なる悪評を浴びせられようとやり続けます」


人殺しと罵るなら罵れ。


犬と罵るなら罵れ。


騎士に非ずと言うなら・・・・・断じろ。


「私は・・・・俺は、如何なる汚い手を使い、どんなに残酷で残虐な所業をしても唯一の主人である貴女様を護り続けます」


もし、それを破る時があれば自分で自分を始末する。


それが俺の持つ騎士の十戒だ。


我が唯一の主人---エリナ・ルシアン様・・・・・・・・


「このハイズ・フォン・ブルアの身体も魂も全て永遠に貴女様に捧げます。捧げ続けます」


どうか、その清らかで無垢な魂によって・・・・・・


「この薄汚い俺の忠誠を・・・・・・」


「受け取りましょう。貴方の忠誠を」


俺の言葉にエリナ様は直ぐ答えてくれた。


「貴方が私の為に如何なる事もするならば・・・・私も貴方に最大の礼儀と賛美を送ります」


エリナ様は大刀を俺の肩から上げると静かに口付けを落とした。


そして大刀の切っ先を俺に向けた。


「ハイズ・フォン・ブルア。もう一度だけ問います。貴方は、王国に忠誠を誓い、主人を護り続けると・・・・・誓いますか?」


「はい、誓います」


迷わず俺は答え、向けられた切っ先に口付けを落とした。


それを認めたエリナ様は静かに大刀を俺に差し出し、それを俺は両手で恭しく受け止める。


これで騎士叙任の儀式は終わる。


ところが、エリナ様は片膝をつくと俺の両頬に手を添え・・・・・額に口付けを落としてくれた。


どうして口付けを落としてくれたのか?


分からない・・・・・・・


分からないが、エリナ様がくれた口付けは・・・・・俺を人として扱い、亡き母の面影を残す黒いドレスを着た女性---1番目の女神と同じだった。


「これにより貴方は私の臣下にして家族です。宜しくお願いしますね?」


「・・・・・御意のままに。我が唯一の主人---エリナ・ルシアン様」


俺は頭を深く下げる事でエリナ様に感謝を示した。


ブロウベ達は顰めっ面だが、他人など・・・・・どうでも良い。


エリナ様ただ一人が俺を騎士に取り立て、そして心から騎士になれた俺を祝福して下さっている。


それだけで十分だ。


他を強請るなどエリナ様に対する侮辱であり、俺には無価値にして無意味でしかない。


だからエリナ様ただ一人さえ俺を認めてくれるだけで十分なんだよ・・・・・・・・


そして僅か数日後にはエリナ様の御命を狙う刺客が来たので俺は皆殺しにした。


最後にして唯一の主人を護り続ける為に俺が再び血の海を泳ぎ始めた瞬間でもあったが・・・・・・・・

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「・・・・・エリナ様」


無宿野良犬ことハイズ・フォン・ブルアは唯一の主人との出会いと騎士叙任式までの数日間を・・・・思い出し、小さく息を吐いた。


しかし、直ぐに切れ長で濃い紫の双眸に凶暴な自我を宿した。


いやエリナとの出会いを思い出していた時は消していた自我を戻したのである。


そして髑髏の首狩り騎士が使っていた槍を両手で構える。


穂先が地面に着くような地滑りの構えだが、この構えが最も速く槍が鋭くなる構えだ。


腰を落とし両足を八の字に開く体構えはワイバーンとヴァイパーの攻撃を受け止め、そして捌く為である。


グワァァァァァァ!!


キシャァァァァァ!!


ワイバーンとヴァイパーの雄叫びが間近に聞こえてきたが、ハイズは動じない。


寧ろ幼い日を懐かしむ様子だったが刹那・・・・・・


彼の首を引き千切らんとヴァイパーが襲い掛かる。


ヴァイパーはワイバーンに比べれば小型だが、その分素早く、折り畳まれた牙には神経毒と出血毒が含まれている。


人間なんて一溜まりもないが、ハイズは冷静にヴァイパーの距離を測ると・・・・・地滑りにしていた穂先を跳ね上げた。


キシャァァァァァ・・・・・・・・ギシャァ!?


ヴァイパー2匹の悲鳴が黄昏の森林に木霊した。


見れば前進してきたヴァイパーの背後に・・・・・もう1匹隠れていたではないか。


ヴァイパーの狩りは素早さと狡猾な頭脳を合わせた集団狩猟。


それを幼い日に何度も稽古で味わったハイズは分かっていたのだ。


「ぬぉりゃ!?」


気合いを発してハイズはヴァイパー2匹を槍で上空に押しやる。


これにより急降下で自分を丸飲みにしようとワイバーンを塞ぎつつ・・・・・柄を縮める事により振り回し易くすると穂先を繰り上げた。


穂先は真っ直ぐにヴァイパーの腹と、その上に口を開けていたワイバーンごと貫いた。


あっという間にワイバーンとヴァイパーの計2匹の串刺しが完成したが、ハイズは槍で2匹を抉り素早く槍を引き抜く。


夥しい鮮血が降り注ぎ、2匹の魔物は地面に倒れる。


しかし、ハイズはヴァイパー目掛けて拝み打ちをくれてやり蛇のように伸びた首を切断する事で完全に殺した。


ただ・・・・・まだ後1匹ずつ居る。


ところが瞬く間に仲間がやられた事で警戒したのか、ワイバーンは上空を飛び、ヴァイパーは暗くなる森林に隠れた。


「・・・・どうした?俺みたいな人間が恐いのか?」


ハイズは挑発的な言葉を発しつつヴァイパーを探した。


ヴァイパーの別名は「鎖の蝙蝠蛇」で、肌は網目色をしており一種の迷彩効果がある。


そのため探すのは苦労する筈だが、ハイズは直ぐに見つけたのか・・・・駆け出した。


「おりゃぁ!!」


掛け声と共にハイズは飛翔し、大刀を鞘から抜き一閃する。


ギシャァァァァァ!?


ハイズが大刀を一閃させるとヴァイパーの悲鳴が鳴り、赤い血が宙を舞った。


彼は木の枝に身体を這わせ息を殺していたヴァイパーを見つけたばかりか、尾と片翼を切断したのである。


眼を見はる芸当だがヴァイパーの性質などを知り、そんなヴァイパーを相手に我流の腕を磨いた彼だから出来るのだろう。


ヴァイパーはハイズに片翼を斬られ地面に落下するが、口を開き牙で噛み付こうとしたがハイズは予想していたのか・・・・・左手で片手打ちの剣を抜刀し首を刎ねる。


首を刎ねられたヴァイパーは口を大きく開けた状態で空を飛び・・・・・大きな音を立て地面に倒れた。


グワァァァァァァァァァァ!!


上空を旋回するように飛んでいたワイバーンが先ほど以上の雄叫びを上げる。


それはハイズの業が・・・・・ワイバーンの持つ獣の業を遥かに凌駕する勢いと本能で感じ取り、その恐怖から逃れる為に上げた雄叫びだった。


雄叫びを上げたワイバーンは旋回するや翼を羽ばたかせてハイズに突進した。


本能は逃げろと告げたが、同時に逃げられないという事も伝えた。


逃げたくても逃げられないなら・・・・・・殺すまで!!


そうワイバーンは思ったに違いない。


しかし、ハイズは何処までも冷静だった。


これも経験したからだ。


我流ながらも腕を磨き続けた彼は何時しか・・・・魔物も恐怖するまでに強くなったのだから当たり前だろうか?


いや・・・・・彼は強くなった訳じゃない。


心を強くしようとしているのだ。


唯一の主人を死ぬまで護り続ける為に・・・・・・・・


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