叔母
私の母はかなりおっちょこちょいだ。
私自身もその気はあるらしくよく周りに言われた覚えはあるが
正直本人たちはその自覚がないのである。
そんな母の姉である。
母以上のおっちょこちょいなのだ。
私がかなり前に従姉の家に泊まりに行った時の事だった。
昔から従姉家族は変わらずであった。
従姉は綺麗でモデルさんのような憧れるスタイルと美貌の持ち主。
叔母は年を感じない風貌であった。
勘違いしてほしくないが従姉家族が美貌の持ち主だからと言って私もそうかと言われるとそうではない。
従姉と言う言葉はかなりずるいのである。
血が少しでも繋がっていると言うけれどそれは本当なのであろうか。
従姉は一人ではない。他にも三人いるのだが、どうしても同じ血を感じないのである。
私達の血縁に外人はいない。母の兄姉も外人と結婚した人はいない。
全くの日本人なのである。
そして母兄姉も結婚相手方も完全に日本人顔であるのだ。
だがなぜか従姉達四人は外人の様な濃い顔立ちであるのだ。
母の兄姉、結婚相手方達も極めて濃い顔立ちの人はいないのだ。
私の家だけかなり顔立ちがさっぱりしているので絶対に従姉と認識されることはないのだ。
神様は不条理である。ずるいのである。
話が逸れてしまったので戻るのである。
美女美男一家である従姉のお家はお金持ちでもあるので、遊びに行く度に心が躍るのだ。
お家も豪華である。
玄関は想像通り広い。そしてなんといっても部屋が暖かい。
遊びに行った日は冬場だったので実家との温度差に驚愕したのを覚えている。
夜ご飯は叔母が料理を振舞ってくれると言っていたので楽しみにしていた。
だがそこでまず第一ポイントのおっちょこちょい事件が発生する。
叔母が夕飯の支度の間、私は従姉とリビングで談笑していた。
もうすでに暖かかった部屋だが叔母は私が寒くないように気を利かしてくれて
かなり部屋を暖めてくれていた。
従姉の家のダイニングは掘りごたつ式のダイニングテーブルになっており
更に床暖房まで完備されていたので、冬場はストーブのみで育った私からしたら
夢のような暖かさだった。少し熱いくらいだった。
冬場に部屋の中で熱いくらいと感じるだけで天国だった。
そんな幸せを感じた時に突然部屋が真っ暗闇になった。
ブレーカーが落ちたようだった。
私は料理中だった叔母が心配になり助けに行った。
携帯のライト機能で叔母の元に行ってブレーカーの所へ行った。
ブレーカーをあげるからライトを貸してと言われたので渡したのだが
「よく見えないわ」
と言われたのだ。
暗闇の中でライトが光っているのが分かるくらいなのでライトが点いているのは明白。
なぜ良く見えないのか?
叔母を覗き込んで見えない理由が分かったのだ。
叔母はライトの明かりの方をブレーカーではなく自分の顔に向けていたのだ。
それじゃあブレーカーどころか眩しくて前が見えないよ・・・
私は笑いながらスマホの向きを教えてあげた。
叔母も一緒になって笑っていた。
そしてブレーカーが上がった瞬間、第二ポイントである。
あらゆる家電の動き出す音がしてきたのだ。
なんと、床暖房、エアコン、ガスファンヒーター、オーブン、電子レンジを一遍に使っていたのである。
私が寒くないように色々準備してくれていたんだなと。
嬉しさ反面、ブレーカーが落ちた理由も分かったのだ。
叔母の優しさと御もてなしに心が和んだのだった。
おっちょこちょいだけでは叔母の良さは伝わらない。
お風呂に入らせてもらってリビングに行くと叔母が寛いでいた。
叔母と話がしたく、体がとろけるようなソファに座った。
叔母は床暖房の暖かさを直に感じたい派らしく床に座りソファにもたれかかっていた。
近況や私の母の話やらで盛り上がっていくのだが少しずつ叔母の視線が下へと下がっていく。
叔母が溶けていく、この表現が一番しっくりくると私は思う。
叔母は完全に溶け切ったのだった。
最終形態は床に寝転んでいた。
話しながら体の寒い部分を暖めたい気持ちと眠気もあり溶けていくスタイルになったのだと
従姉が教えてくれた。
(実際に従姉が言ったのは「いつもこう」のたった五文字である)
こうして楽しい気持ちで眠りにつきたかった私だが
従姉がロンバケを第一話から夜通し見るという無謀な計画を提案してきて
夜更かしを殆どしない良い子ちゃんの私に
結局地獄プレイを強要。明け方近くまで見せられ気絶のように寝入り
叔父に「早く起きろ」と怒鳴られて起きる羽目になるとはこの時知らない私なのであった。




