激流
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
対応は考えてくれそうですね。
「梅香の君!! 大好き」
「この場所、好き!!」
助走を付けて走って来て、抱き着きながら、そんな事を言う子だった。無邪気に笑って、はしゃぐ、焔の様に激情を燃やす子だった。だからつい考えてしまう。この子は私ではない別の神様の管轄に置いた方が良いのではないかと
少し考えて、彼女の同意を得た上で引き合せる事にした。御相手は飆靡様。原初の荒くれ者。あの性格なら、きっと私よりも相性が合うと思う。
「おはようございます。飆靡様。お加減宜しい様で」
「あ゛ん? 悪くねぇぞ。で、その嬢ちゃんが……」
私の背後に隠れて前に出ようとしない子を、ぽんぽんっと軽く体を叩いて催促する。けれども彼女が前に出る事は無かった。袴にぎゅっとしがみついて、離れようとしない。動かざる事山の如し。
そうして聞こえて来るのは、聞き取りに苦労する程の震え声。拒む様に脳裏に響く。
飆靡様は何時もの粗暴な真似はしなかった。ただ黙って上から見下ろして、怪訝な顔をしている。
「飆靡様、お会いして頂き、誠に有難う御座います。けれども、この子は此方で面倒を見ます」
「まぁ別に、構わねぇけど」
そうして飆靡様は一枚下駄をからりと、からりと鳴らして去っていく。突然振り返って、悪戯をする事もしなかった。全てが終わった後に、振り返って腕に抱え込む。
「ごめんね。無理をさせたね。もう大丈夫だから」
そうして午前の不敬をお詫びする為、改めて飆靡様の元を訪れた。飆靡様は酒瓶から直接流し込む真似はせず、珍しく御神酒を猪口に移しながら、ちみちみと嗜む。私にも飲むように手渡されたが、丁重にお断りをする。
「彼奴の気配、かなり此方側だったんだがなぁ。気性が火に近い。強いてあげるなら風か……」
「ええ、私もその様に」
繭気属性。空、風、土、火、水、それらの神社の属性と自らの属性を照らし合わせて、相性の良い神社を探る方法。私もあの苛烈さから紹介したのだが、失敗してしまった。まぁ参考にこそすれど、のめり込む程信仰は良くないという事だろう。
「あぁ。まぁ、それだけに限って判断するのは好みじゃねぇ。彼奴は俺を好まなかった。それだけだ。何、時代が変わりゃ相手自身も変わる事もあんだろ」
それから何年もの年月が流れ、彼女は成人を超えた。けれども相変わらず言動の無邪気さは変わらなかった。変わったのは飆靡様との関係かも知れない。最初こそ怯えていたものの、最近は上手くやっているらしい。そうして今日も無邪気に現れたある日の事。
「梅香の君!! 繭気属性ってご存知です?」
「知ってるよ。空、風、土、火、水。土地からの運気に寄るものだ」
「最近やってみたんです。私は水でした。だから今度、三緒様の元へ顔出しします」
そうして、颯爽とその場を後にした。
「水……水ねぇ」
水は自在に形を変える。動きなく留まる事もあれば、物凄い勢いで流れ落ちる事もある。私と会う時は激しく、飆靡様と会う時は大人しい。余りにも差のある反応。
「あながち、間違いでは無いか」
繭気属性ってご存知でしょうか?
空、風、地、火、水という属性が生まれながらにあって、自分と相性のいい神社を調べる目安になるって奴。
ちなみに同じ属性でも合わない所も無いわけではないので、まぁ、参考程度に。
偶に凄い気まぐれな方もいらっしゃるので。
興が乗らないと、鳥居指さして『帰れ』とか仰る方も。
それを元にして、水属性だけど、火属性と見まごう程に苛烈な子を書こうとしたらこうなりました。
お気に入りの人見掛けると目爛々にして、内心『うぉぉぉぉぉぉお』みたいな感じで突っ込んで来るし、『好きっ』って言って、しがみついて離れないと思います。
※何故こんな振り切った子になったのだろうか。
ちなみに、この子はどんな神様と会っても第一印象は『火属性』です。当たり前なんだよなぁ。
タイトル『激流』はその様を持って名付けてます。
流体故に幾らでも形は変えられる。
初対面では静水、懐くと激流。
梅香の君視点で、最も苛烈な水の形『激流』です。
弱いもの虐めは嫌いそうなんで、マイルド飆靡様です。
慣れてきたら、普通に荒くれだと思います。