財布が降る
学校に慣れて、特に何もない平日の帰り道。
そんな所で、私は当惑していました。
今日、落ちてくるのは財布でした。
別にこれが初めてという訳ではありません。
前にも一回あった事です。ただその時は、持ち主が近くにいたので直ぐに返しました。
そして今日はもう既に、登校中に財布が降る不幸は終わったのです。
その財布は、前と同じ様に持ち主に返しました。
もう既に今日の不幸は終わったと、夕食の事を考えながら帰り道を歩いていると、
−ボンッ
衝撃が頭を襲いました。
まさか、と思い手で探ってみると、
そこには赤い大きな長財布がありました。
ズッシリとした重量感があります。おそらく、財布自体の重さもあるでしょうが、中身もしっかり入っていると思います。
「何で?。」
もう午前中に、財布が落ちてきました。
つまり能力が発動するのは、一日一回の筈なのでもう落ちてこない恥ずかしいです。
単純に偶然か、自分が知らない他のルールがあるのかよく分からず、困り果てます。
とはいえ、今はこの長財布の事を考える事にします。
近くには、持ち主と思わしき人はいません。
斜め上を見ると、大きなマンションが見えます。おそらく此処から落ちたのでしょう。
今一度見ても、何とも高そうな財布です。
ネコババをすれば、高いお小遣いが手に入るでしょう。
でも結論から言うと、私はこれを交番に届けようと思います。
確かに、持ち逃げしてもバレる事は恐らくないでしょう。
ただ、私はそこまで精神が図太い訳ではありません。
恐らく此処で持って逃げると、これから先、一生罪悪感に苛まれる様な感じがしました。
そして、流石にこんな高そうなを財布を、道端に放置するのは気が引けます。
幸いそう遠く無い所にあるので、そんなに手間ではありませんしね。
そう思ったが吉日と、直ぐに交番に向かいました。
「そう、どうもありがとうございます。ちなみに何処に落ちてたんですか?。」
警察に届けるとそんな事を聞かれました。
「此処から五分ぐらいの所にあるマンションの所です。」
「ああ、あそこね。後は、期間内に持ち主が現れなかったら落とし物を貰えたりするんだけど。名前とか教えてもらったりしていい?。」
そんな話には、別に貰いたくて持って来た訳では無いのと、面倒臭かったので断りました。
「ではこれで。」
そう言いながら、外に出て家に帰ります。
帰り道、やっぱり名前を出したほうが良かったかなと、少し後悔しましたが、頭を振ってそんな考えを追い出します。
後悔したって、別にやった事が戻って訳じゃないですしね。
ただ気持ちは、不思議とスッキリしていました。