雷が降る
入学式から少したった日。
今日は、中学最初の授業の日。少しドキドキとした朝を迎える中。何が降るのかのイメージが浮かびます。
それは、とても明るい電気の塊。
そう、雷です。
昂ぶっていた気持ちは、一瞬で落ち着きました。
雷は雨と似ているようで決定的に違う所は、当たれば死ぬかもしれない所です。
なので、対処しないと自分の命に関わります。
とはいえ、対処は難しいものではありません。
一日中、家の中に閉じ篭れば良いのです。
家のマンションには避雷針がついているので、それでどうにかなります。
私の能力は、別に絶対に防げないという事はありません。
傘を挿せば雨を遮る事はできますし。建物に入れば雷も防げます。
しかし、いつ降るかは流石に分からないので、ピンポイントで建物に入って躱すといった事は出来ません。
雷が降ると分かったらやる事は、そう学校を休む事です。
偶にではありますが、以前から起きるときは起きるので、仮病はもう慣れたものです。
チラッと鞄を流し見たあと、少し体を引きずるようにリビングへ向かいます。
「お母さん、私何か熱があるみたい…。」
そう言いながら、事前に摩擦で38度くらいに温度を上げた体温計を出します。
「あら本当?、他には何かあったりする?。」
朝食の準備をしていたのか、エプロン姿で体温計を覗きます。
「後は、鼻水が出るくらいかな。」
鼻水が出るのは本当です。おそらく昨日少し寒かったせいだと思いますが、命がかかっているのでこれ幸いと、今の事に結びつけます。
「顔も少し赤く見えるし、確かにそうみたいね。分かった。学校には私から連絡しておくから、部屋で寝てていいわよ。」
「分かった…。」
うまく出来たようです。
毎回、お母さんの良心に浸け込むようで少し心が痛いですが、今はこれをやるしかありません。
少し窓を見ると、黒い雲が空を覆っていました。
友達の美宵に休む内容のメールを打ったあとに、とりあえず部屋で寝たふりをしていると。
トントンと、外からノックの音がします。
扉を開けてお母さんが卵粥を持って来ました。
「はいこれ、食べてね。私はこれから仕事に行くから、お昼はキッチンの鍋にある残りのお粥を食べてね。」
「はい…。」
それだけ言うと部屋から出ていきました。
しばらくして玄関からガチャといった音が響きます。
どうやらお母さんは仕事に出たようなので、布団からのそのそと這い出ます。
そうしたら教科書を開いて予習をします。
流石にずる休みで遊ぶなんて事はしません。
幸い勉強に使える物は既に配られていたので大丈夫でした。
授業の初日に休んだので、あまり出来る物がありません。それでも軽くではありますが進めてみます。
少し時間が経ち。
ふと、時計を見ると短針がてっぺんを過ぎていました。
昼休みがてら、リビングで昼食を摂りに行きます。
お母さんが言っていたようにお鍋にありました。
鍋を温めて、残ったお粥を食べていると、
辺りにドーンといった轟音が響きました。
どうやら丁度今、雷が降ってきたようです。
大きな音にビクッと驚きましたが、直ぐに頭を回します。
そのまま行っていれば、学校では昼休みの時間。もしも、外で遊んでいたらと考えると体が震え上がります。
それで気分が悪くなった理奈は、昼食を食べ終わるとさっさっと部屋に戻りました。
それからしばらく経つと、日が完全に沈みます。
すると玄関のドアが開く音が響きました。
「ただいま~。お母さん居なかったけど平気だった?。」
「うん…。特に何もなかったよ。」
雷が降ってきたよ。という言葉を、頭の隅に追いやって返事をします。
「昼に熱、ちゃんと測った?。」
「大体、37.6度くらいだったよ。さっきは37.1。」
そう答えました。
「熱は下がってきているみたいね。良かった…。ご飯は食べれる?。」
「食べれそう。あっ、へっくち!。」
そして小さなクシャミをしました。
「大丈夫?。あまり無理をしないようにね。」
「平気、平気。大丈夫だって!。」
明日は流石に行かないとね!。
そんな決心を胸に宿してその日を終えました。