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人生には何の役にも立たない知識・思考をつらつらと書くエッセイ集

トランプとは切り札の事である

作者: 大狼 太郎

 いわゆるトランプ遊び。皆さんも一度はやったことがあるでしょう。

 ババ抜き、7並べ、神経衰弱。おっと大富豪を忘れてはいけない。

 一人遊びのソリテア、フリーセルなどはアプリの定番です。


 そんな数々あるトランプ遊びにおいて、大のおとなが躍起になって遊ぶものがあります。それがトリックテイキングゲームと呼ばれるゲーム群です。


 そして実は、トランプとは切り札の事なのです!



 説明しましょう。

 元々の意味ではトランプとは、トリックテイキングゲームというジャンルにおいて、切り札を指す言葉なのです。そして切り札とは「強い札」を指します。強いので、それが場に出てくるとゲームに勝てる札です。


 そもそも、我々日本人がトランプと呼ぶ、52枚にジョーカーを足した53枚のカードの事は、英国では「プレイングカード」もしくは単に「カード」と呼ばれます。


 じゃあなんで我々はトランプと呼ぶようになったのでしょう?



 この説明の前に、まずはトリックテイキングゲームの簡単な説明にお付き合いを。


 トリックテイキングゲーム、その中でも最も英国で有名なゲームであるコントラクトブリッジ(以下、単にブリッジ)は、英国紳士の嗜みのような遊びとされています。


 紳士熟女が出てくる英国の古典ミステリーなんかを読むと「登場人物がカードゲームに興じていた」なんて表現が出てきます。これこそ、まさにブリッジの事なのです。


 ベルギー人のおひげの探偵さんが活躍する探偵小説では、ブリッジ自体を題材にした小説が書かれているくらいです。あの頃の英国ではブリッジという遊びは、英国紳士や淑女が集まるサロンでたしなむ、定番の遊びだったようです。


 私が若いころみた海戦をテーマにした映画でも、海軍士官が休憩時間にブリッジに興じていました。こんなところでもブリッジが出てくるんだなあと、ゲーム好きとしては感慨深く見たものです。


 日露戦争時、山本五十六が日本海海戦で勝利した際に、勝利を祝う祝電とその返電にはブリッジの用語が使われたという逸話も残っています。


 閑話休題。


 このブリッジにおいては、プレイ中に切り札になるカード、つまり特別に強いとするカードをオークション形式で決めます。私はスペードを切り札にしたい、いや俺はハートを切り札にしたい。そういう思惑おもわくをオークション、つまり〝競り”をして、切り札の種類を決めます。この決まったスートを指してトランプというのです。


 おっと、専門用語解説。スートとはカードの種類の事。スペードハートダイヤクラブのあの種類ですね。


「今回のゲームにおいて、トランプ(切り札)のスート(種類)はスペードである」


なんて感じで使います。ちょっとカッコいい。


 切り札、つまりとても強い札。なので、トランプという言葉には「とても良い物」「特別なもの」という意味合いが含まれています。



 さてさて、なぜ日本人が「カード」の事を「トランプ」というようになったかという話に戻りましょう。


 ある日本人がゲームをしている英国人を見ていて「トランプ」という言葉を聞きました。その意味を訪ねたところ「良い札(GOOD CARD)の事だ」と説明されました。


 先ほどの私の説明から分かるように、その英国人はトランプの事を「GOOD CARD=強い札である」という意味で言ったはずです。


 ところがその人はそれを「良い品質の札」という意味に勘違い。そしてそれを又聞きした商人が輸入したカードを売る際に「これはトランプですよ」と言って売りだしてしまいました。


 それ以来、日本ではカードの事をトランプというようになったとか。



 という事で、本来の意味でトランプとは、切り札を指す言葉なのです。


 

 さてさてさて。

 という事はですよ。あのトランプ元大統領の名前が気になりますね。

 彼の名前が意味するのは、我々がトランプと呼ぶ「カード」の事ではなくて、実は「切り札」という意味だと分かります。


 彼の名前に対して、一般の日本人には「なんや、トランプっておもろい名前やな、爺さんだからジジ抜きでもするんかい」くらいの意味合いしか感じません。


 ところが、トランプという響きには「切り札」という意味があると分かると一気に変わってきます。あの大統領選の際に、支持者のアメリカ人たちが


 「トランプ! 彼は俺たちのトランプだ! 俺たちはトランプを選んだんだ!」


 と叫んでいるのを聞いた日本のマスコミはそのことを知らないので


「ああ、このアメリカ人はトランプ氏がずいぶん好きなんだなあ。何度も名前を読んで盛り上がってるなあ」


 としか思ってなかったのでしょう。


 ですが、それは支持者たちが


「トランプ! 彼は俺たちの“切り札”だ! 俺たちは彼を切り札に選んだんだ!」


という意味合いで叫んでいたのだと考えると、あの大統領選の盛り上がりと大逆転劇がちょっと理解出来る気がします。 


 そう、トランプ=切り札は競りで選ばれるのです。



 トランプとは切り札の事である。

 こんな話でアメリカ大統領選の話にまで発展するなんて面白いですね。

 ゲーム好きなら知っていて損はない蘊蓄うんちく。いかがでしたでしょうか。



 これを読んだ皆さんは是非、これからはトランプと呼ばず「プレイングカードで遊ぼうぜ!」と物知りげに言ってみてください。


 きっと「はあ?」って言われますよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最期の、オチ!w 笑いました。 [気になる点] 外来文化を必死に取り入れた時の誤爆(?)、誤用ってかなりありますが……そこからさらに意味・中身の改造していったのが日本語なので、どうにも難し…
[一言] トランプマジックとは言わずに カードマジックと言いますからね
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