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第3章「白の地」 第2部〜白の世界〜I

眩い光に閉じていた目を恐る恐る開くと、そこには息を飲むように美しい世界が広がっていた。


あたりは一面の雪景色のように白く光を放っていて、地面は雲のような靄で覆われている。

いくつもの美しい模様を刻んだ柱に支えられた白い建物が空高くそびえ立っており、それは昔見た廃墟となった神殿に少し似ていたが、城のような建物には苔一つ生えておらず、神々しい雰囲気を醸し出していた。

空気は凛と冷たく澄んでおり、勢いよく息を吸うと肺に少し痛みを感じる。

目をこらすと大気に細かい氷が飛んでいるかのように、あらゆるところにきらきらとした小さな煌めきがあることに気づいた。

空を見上げると、雲で覆われているのか、いつも見ている空の青さは全くなく、真っ白な空が広がっていた。

雲の切れ目からは眩い光が差し込み、建物の模様を美しく照らしている。


それは真っ白な世界だった。


「ここが私が暮らしている白の地です」


振り返ると、フローライトが斜め後ろに立っていた。

僕は彼女の姿に目を奪われた。

アルケスの中で見た彼女の姿と、白の地での彼女の姿とは、造形に大きな変化はないものの、その雰囲気、言うなれば存在感が全く異なっていた。

彼女の身体は白く輝くように光を放っていて、美しい銀色の髪の毛やそれと似た色をしたドレスは、ふわふわと浮いているかのように揺れながら煌めいている。

その姿はまるで幻想のように神秘的な雰囲気を纏っている。

しかし同時に彼女は強烈な存在感を放っており、アルケスにいた頃よりもその輪郭ははっきりとしていて、彼女が醸し出す凛としたオーラに僕は圧倒されていた。


彼女の姿をじっと見つめている僕に気づいたのか、フローライトは微笑むと言った。


「この世界で生きる者たちは、それぞれ自分の文明を持っています。

そしてその地にいるとき、最も自分の力を発揮することができるのです」


フローライトは左手を捻りながら前へ出し、右手は何かを掴むような形のまま正面に緩やかに伸ばしした。

そして首を左の方へ少し傾けると、目を閉じた。

彼女が左の指を細かく折り、右腕を大きく一定に動かすと、彼女の身体からは白い不思議な模様をした光のような何かが生まれ、それは宙に浮かび上がった。

その模様は宙にゆらゆらと浮かんでいる。


僕はフローライトが出す模様をじっと見つめた。

その模様は、5つの線に丸と線を組み合わせた記号のようなものがいくつも描かれている複雑で繊細な形をしていた。

やがて僕はその模様から音楽のような音が流れていることに気づいた。

フローライトをよく見ると、彼女の左腕から顎にかけてに女性の胴体のような形の透明なものと、彼女の右腕には同じく透明の棒のようなものがうっすらと見えることに気づいた。

彼女は棒のようなものを、二つのふくらみのあるものへ、なめらかに滑らせていた。

それは楽器で音を奏でているようだった。

その音は美しい調べだった。

僕はしばらくの間、その音に聞き入っていた。


彼女はやがて顎を少し浮かせると、左手を伸ばしながら下げていった。

うっすらと見えていた楽器のようなものは、気づくとなくなっていた。


「私たちは皆、自分の魔力を持っています。

人間の言葉に置き換えるなら、魔法と呼ばれるものです。

その魔法も、それぞれ自分の領域の地にいるときに最も力が強くなります」


フローライトが僕に語りかける。


「フローライト、あなたの魔法はどんなものなんですか」


「……私の魔法はあまり高尚なものではありません。仲間を助けるための魔法です」


「それは僕を助けてくれる魔法ということでしょうか?」


「いいえ、あなたを助ける魔法ではありません」


フローライトはそう言った後、僕の表情が曇るのに気づいたのか、すぐに取り繕うように言った。


「ごめんなさい、誤解を招くような言い方でしたね。

私の魔法は、味方の精霊を助ける魔法なのです。

残念ながら、まだ魔力を持たないあなたには効き目のない魔法です」


「味方の精霊……」


「私たちはこれから3人の精霊と合流し、白の英雄が封印されている地へと向かいます」



フローライトは僕を手招いた。


「行きましょうシュカ。彼らのところへ」


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