第3章「白の地」 第1部〜アルケス〜IV
僕はココンの中で目覚めた。
ココンの中での眠りはうっとりするほど心地が良く、その目覚めも頭が澄み渡るようなすっきりとしら快適さに満ちていた。
奴隷としてのこれまでの人生で、ここまで快適な朝は一度もなかった。
僕は大きく息を吸い、身体に満ち溢れる力を感じ、その心地よさを味わっていた。
傍に目をやると、枕元に衣服が置いてあることに気づいた。
その服も、シーツや僕が今着ている衣服のように、白く艶やかな光沢を放っていた。
手に取ると、その衣服には不思議な温かみがあった。
素材は今僕が身につけている服よりも分厚く、しっかりとしていて丈夫でありつつも手触りは滑らかで柔らかかった。
服にはいくつものポケットがあり、村にいた頃、探検家の男たちが服と少し似ているように思えた。
僕はこれからの道のりを想像し、少し躊躇っていたが、やがて身につけていた白くさらさらとした服を脱ぎ、その服へと着替えた。
僕の身体はその衣服にぴったりと収まった。
その衣服はまるで鎧のように僕の身体を守ってくれるような気がした。
僕は立ち上がり、ココンの外へ出た。
ココンの外には、同じく白い色をした靴が置いてあった。
その靴は動物の皮でも植物でもない、見たことのないような滑らかな素材でできていた。
しっかりと重みのあるその靴は新品なのか、傷一つない。
僕はその靴を履いた。
靴紐は光に輝くガラスのような煌めきを放っていた。
その靴も僕の足にぴったりと馴染んだ。
僕はアルケスの中を歩き出した。
昨日と同じように、アルケスの中は白い靄に包まれているようで、明るいがぼんやりとしていている。
フローライトはどこだろうか。
目を凝らすと、僕は遠くの方から光が差し込んでいることに気づいた。
僕はそちらの方向へと歩き出した。
近づくにつれて見えてきたのは、僕がアルケスにくる前に通った扉と良く似たものだった。
扉は6つある。
それぞれ色が異なり、赤、青、緑、白、黒、そして幾つもの色が混じり合ったような色をしていた。
その中でも白い扉がひときわ強い光を放っていた。
「準備はできましたか」
声に振り向くと、後ろにフローライトが立っていた。
フローライトはじっと僕を見ていた。
僕は無言で頷いた。
フローライトは安心したように微笑むと、白い扉を指差した。
「私たちは白の地へ向かいます、シュカ、私の後をついてきてください」
フローライトはそう言うと、白い扉の方へ進んだ。
眩い光が差す中、彼女の身体は白い扉の向こう側へと消えていく。
僕はフローライトの後を追って、白い扉の中へと足を踏み入れた。
瞬間、視界は真っ白な光に包まれた。