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プロローグ
―プロローグ―
私は大切なものを手放そうとしている。いや、正しくは、かつて大切だったものを。
私は本当に欲しいものを見つけてから、それ以外のものに価値を見出せなくなった。
それは私の欲しいものが、未だかつてないほどの価値を宿しているからなのか。
それ以外の全てに、最初から価値なんて無かったのか。
そんな問いすらも、きっと何の価値も無い。
これ以上考える必要など無い。
大いなる目的を前に、手段など、過去など、こんなものなど。
私はゆっくりと、かつて大切だった、かつて私の一部だったものを切り離す。
それはゆっくりと煌めきと暖かさを失い、死んでいった。
蒼い月明かりの中、無数の黒い羽が散っていった。