二部第36話 変態、激ヤバ迷惑系とそのファンに煽られファイト、オワタ
「兄さん、ついたわよ」
いつの間にか、二世勇者が言ってきた冒険者ギルドの前。
そうだった。ウチにはヤードラッ〇星人も真っ青の瞬間移動の使い手がいるんだった。
とはいえ、あんま多用しないでほしい。見つかって注意されたらいくら特例冒険者でも罰則なり罰金はあるし、それになにより、
「魔力もう残ってないだろ」
生き物を移動させるのは相当魔力を使うらしく、秋菜はふらついていた。
俺にもたれかかる秋菜の肩を抱いて支えてやる。
「ふふふふ」
策士。
こいつ、笑ってやがる……!
俺が支えることまで計算していたのか……そして、アンタは疲れてないだろ、姉さん。寄っかかってこないで。ああ! すっげーいい匂いがすんぞ!
そんな姉さんを引きはがし、秋菜を落ち着かせる。
そして、いざ冒険者ギルドの中へ。姉さんたちが直でぶつかるよりも俺が出た方が確実にもめごとは小さく収まるので先陣を切る。
そして、受付で説明すると、二世勇者たちがいる部屋へいく受付の人。
あっさり話は通ったみたいで案内してもらう。
「よお、来たな。ビビり変態君」
「どうも」
二世勇者を中心としたイケメン冒険者チームはにやにやわらっている!
100パーやらしいのに、イケメンだからやらしいけど素敵ってなっちゃうのは世の中の理不尽を体現していると思う。
SNSの広告で流れる漫画のかわいそうなOLを助ける上司が不細工だったら絶対みんな見ようとしないだろ、くそう! 俺も見ないけど!
「ここに来たってことは勝負を受けるってことでいいかな?」
いいわけねーだろ。おめえ、どこの戦闘民族だ!?
これだから、戦闘民族の王子様系はよお、くそったれとか下品な言葉使ったりするくらい野蛮なんだろ、おめー。
だが、そもそも争う気はない。ぶっちゃけめんどくさい。勝っても負けてもコイツのファンがウザそうだし。なので、説得を試みる紳士更科夏輝。
「えーと、そっちが上でいいんで、もう勘弁してもらえませんかね? 正直困ってるんですけど」
「おいおいおい! みんな聞いたか!? あんなこと言ってるよ、変態が!」
おい、まだ配信したままかよ! 二世勇者がカメラに向かって叫んでる。誰かこいつにネットリテラシー教えろよ! 政府ちゃんと取り締まれ! 迷惑系二世勇者なんてマジで社会終わってんな!
うわあ、ファンもコメントでめっちゃ煽ってくるやん……こわあ。
「俺のチャンネル登録者が怒ってるよ。腰抜け野郎って……分かった分かった。じゃあ、見逃してやるよ。ただ、そんなビビりに、その二人は相応しくない。うちのパーティーに入れよっか」
は?
何言ってんだこいつ?
金も地位もイケメンも持ってる奴はやばいな。なんでも出来ると思ってるクチか。
俺が呆けていると、二世勇者が近寄ってきて耳元でささやく。
「……俺がお前の姉妹二人をおいしく頂いてやるからよ。とっとと女置いてどっか行け、カス」
「わっかりましたー!」
「うお!」
なるほどなるほど、そういうことかー! オラ分かっちまったぞ!
コイツ、馬鹿だ!
ぶっ潰っそ!
「な、なにが分かったんだよ……?」
「勝負してぼっこぼこしてやっぞ!」
もうキレた。
完璧キレた。
こういう奴は分からせないとわからねーんだ!
オラわかっちまったぞ!
「はあ?」
「相手してやるって言ってんだよ。理解おせえな。……一度だけな。それで負けたらもう二度と絡んでくるな。お前のだーい好きでそいつらがいないとなんにもできないお前のファン様に誓え」
「……いいぜ。じゃあ、こっちの条件は……」
「は?」
え? お前が条件出してくるの?
「そっちが条件出してくるんだから、こっちも出していいに決まってるだろ」
決まってねえよ。こっちは絡んでくるなって言ってるだけなんだよ。
「【桃の魔女】【黒の魔女】をこっちに引きぬかせてくれよ。お前にはもったいない。絶対服従の条件で」
「おい、ふざけん」
「いいわ」
姉さんに支えられてた秋菜が口を開く。
姉さんまで頷いてる。
「おい!」
「大丈夫でしょ……絶対に勝つでしょ」
「……分かった。じゃあ、それでいい」
そんな信じ切った目をされたら何も言えねえ。
「おっけ! 賭けは成立だな。じゃあ、折角だから【風鬼の谷】でやろうか。変態も飛べるんだろ? まさか、逃げないよな?」
「……いいだろう」
配信画面のコメントが盛り上がってる。
そうか、そうだな、ようやく俺の中でも盛り上がってきたよ。
お前ら全員黙らせたいって気持ちが。
そして、そのために。
「まあ、精々みっともない姿曝さないようもがけ、変態」
「え? なんだって?」
徹底的に潰す。この羽虫を。
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