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二部第32話 変態、両親とある意味涙の対面、オワタ

「いやー、ほんまよかったわ」

「上田さん」


 東江さんの親友、上田あかりさんがニコニコしながらやってくる。


「今日もめんどいことがあったけん。くれくら様がそうやって命令してくれて動いてた方があの子もうれしいと思うけん、よろしくね」

「……何が?」


 俺と上田さんが話しているところに東江さんがほほを膨らませながらやってくる。


「ああー! あかり! あんた、夏輝様のグラスが空いとるのに何しとるんよ!」

「ああー、ごめんごめん! なつき様ぁ。何飲みます?」

「あ、えー、水で」

「水!?」


 東江さんが大声で復唱する。だめなのおお?


「あかり! うちも水!」


 いいのねええ。

 上田さんははいはいと言いながら俺と東江さんのグラスを受け取り、俺に目配せすると歩いていく。


「あ、夏輝様! おうどんです!」


 相変わらずキラキラした目で俺を見てくれる東江さん。

 さっきの上田さんの話を聞いて俺が出来ることは……。


「ありがとう。すっごい美味しいよ。どうやって作ったの?」

「……はい! あのですねー、香川では、学校の行事でうどんつくりを勉強するんですよ」

「マジで!?」


 東江さんの話をいっぱい聞いてあげようと身を乗り出した。


「ところで、他にもおいしいものがいっぱいあるけどさ。これ、みんなで作ったんだよね」

「はい! あの、夏休み明けに学祭がありまして、そこで狂気の仮面道化様のコンセプトカフェをやろうかと考えていまして」

「いや、やめてもろて」


 ふと神棚の隣にある写真達が目に入る。

 クレイジークラウンクレイジークラウンクレイジークラウン……まあ置いといて、上田さんと東江さんのツーショットや、育成組の写真、そして……


「これは……?」

「ああ、うちの両親の写真です。うちを育ててくれた両親の」


 東江さんが拾われた子であることは有名だ。

 ただの捨て子ではないから。

 精霊に拾われた子。

 そして、ダンジョンで育った子。

 それが東江弓香だった。


 ダンジョンに迷い込んでしまった東江さんのお父さんが、精霊らしき存在から託されたという話は、テレビで数回取り上げられていた。

 そして、そのせいか東江さんの髪は世界でも珍しい青色で、魔力を宿している。

 そんな変わった境遇の東江さんを連れ帰ったお父さんは、一度警察に相談。

 そして、研究施設的なところに連れていかれそうになったが、幼い東江さんが拾ってくれたお父さんと離れることを拒否。

 氷の嵐が巻き起こり大惨事となったことで、一度東江さんを拾ったお父さんの元で預かることになった。物心ついてからも、定期的な検査を行うことを条件に東江さんはご両親のもとにいたらしい。


「誕生日も……お父さんと会えた日なんです……本当に大切な日。ここで拾ってもらわんかったら夏輝様にも会えんかったんでほんとお父さんには感謝です!」


 そう言って笑う東江さんは、無邪気なようで、大人っぽくも見えて……俺よりもよっぽど過酷な運命を生きてきた東江さんには本当に幸せになってほしい。

 俺は、早速つけているブレスレットを見て心から笑った。

 そしたら、みんなひれ伏してた。


 いや、マジでやめてもろて。

 楽しい時間にしたいのよ。

 帰り道も最後まで楽しい時間に。だから、


「ゆみか! なあ、パパたちのところに戻ってきてくれよ! パパたちが悪かったから!」


 今更なことを言う東江さんを捨てた方の親は帰ってもろて。

 いや、マジで。


 帰れよ。


お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。

少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。


新連載やってます!

『連載版・英雄たちのアシナガおじさんが冴えない私なので言い出せない』

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また、作者お気に入り登録も是非!

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