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二部第25話 変態、スケスケ美女とスプラッシュ、オワタ

「うきゃああああああ!」


 トウカが楽しそうにスプラッシュなアトラクションを眺めながら水を浴びている。

 スプラッシュなアトラクションは身長制限でトウカは乗れなかったが、跳ねる水を見てキャッキャしている。


「ぱぱ! あれのって! トウカにばしゃーってして!」


 何故だ。

 それ、おもろいのか。トウカは。ただ、トウカが言うなら乗ろうじゃないか。


「わ、わたし、こういうのはダメなので、おねえちゃんといって来てください」


 ジュリちゃんが上に戻っていく落下マシーンをちらちら見ながら苦笑いしている。

 ジュリちゃんは高い所が苦手。覚えたぞ。


「そうか。分かった。では、ナツ、行こうか!」


 ノリノリのレイ。だが、トウカと少し離れた所に行くと、


「離れる。こっちはいいからトウカをしっかり見守ってやってくれ」

『了解』


 ダンジョン庁の部下の人に指示を出し、すぐさま笑顔に戻る。


「すみません、本当に」

「なあに、気にするな。それに、トウカの成長の為にも経験が必要なのだろう」


 そう。神辺先輩の変態チェックによって分かった事がまた一つ増えた。


『ふうむ……外的刺激が多い方がトウカ君の魔力が増加しているね……興味深い内容だ』


 つきまとい対策で引きこもっていた間と、それまでの間だと外に出ていた方が断然魔力の増加量が多かったらしい。神辺先輩曰く、様々な経験を重ねることで、魔力が増えているのではないかという事だった。

 魔力が増えれば、トウカはその分外に出られるし、魔力体にとって魔力は生命力に等しい。上げておくに越したことはない。だから、可能であれば色んな経験をさせた方が良いという事だった。


「トウカを守る為にも早く成長させてやりたいと気持ちもあるからな」

「そう、ですね……」


 そう。トウカを守る為に。

 だけど、ふと思ってしまう。

 トウカはかわいい! マジでガチでほんまにかわいいでええ!

 目に入れても痛くない! いや、痛いかもしれないがぱぱ我慢できちゃうくらいかわいい!

 だけど、だからこそ、トウカを失いたくない。

 勇者候補でしかない自分の所にいるべきなのかと。


 【黒龍】がもし、トウカを狙っているのなら、俺じゃあ守り切れないかもしれない。

 だって、向こうは【黒の勇者】という歴代でもトップクラスの勇者、そして、二世勇者を含める数名の勇者候補と、専属メーカーや提携企業を持つ巨大なグループだ。

 俺では、守り切れないかもしれない。


 遠くで俺に手を振ってくれるトウカは無邪気でかわいくて……。


「トウカをダンジョン庁の施設で預かるという選択肢もあるが」

「え?」

「飽くまで一つの選択肢だ。君の場合、家族への負担も考えるだろうしな。もしくは、君とトウカだけダンジョン庁の施設にやってくるか」


 現状を考えれば、それがベストかもしれない。

 俺とトウカが特に狙われているだろう。

 秋菜は、家族のみんなと一緒なら安心だろうし。

 だけど、


「ぱぱー! ぱぱー!」


 俺は遠くで手を振るトウカを見る。

 俺はまだまだガキだ。トウカのお世話も母さんのアドバイスなしでは失敗ばかりだ。

 そんな俺と二人でトウカは大丈夫だろうか。


「おい」


 そう言いながらレイは俺のほっぺを思い切り引っ張りながら顔をレイの方に向けさせる。


「ナツ、お前は抱え過ぎだ」

「は?」


 レイの白く美しく整った顔のやはり綺麗な瞳が俺を見つめる。


「多分、お前は、早くに色んな事を学び過ぎた。比較される存在、挫折、命のやりとり、近しい者の死……それがお前に大人の階段を何段飛ばしかさせたんだろう。だけどな、もっと楽しめ。お前はそれだけ頑張ってきたんだ」


 レイの声が俺の耳を通り、脳? 心? なんかそういうのを通っていく。それは熱を帯びていて、俺の中を温かくしていって……。


「レイ……ありがと……」

「ふふ、ほら、これももっと大声出して、びしょ濡れになってしまえ!」

「うわあ! おい! レイてめえ!」


 アトラクションが落下する瞬間、レイは俺のカッパのフードをとってしまう。


「うわあああああああああああああああ!」


 そのせいで俺の顔はびっしょびしょだ。

 おかしい。ふは。マジで! もう!

 ありがてえ!

 俺の周りには優しい人がいっぱいだ。

 楽しい。

 楽しいんだ。

 遊園地には二度と来ないと思ってた。

 冬輝との思い出が多すぎるから。

 俺だけ楽しむわけにはいかないから。

 だけど、こうやって連れ出してくれる友達がいる。

 笑おう。

 もっともっと。


 そして、いっぱい感謝して、いっぱい力になろう。


「ありがとな、レ」


 びしょ濡れの顔のままレイの方を向くと、レイは何故かもっとビショビショで……そして、レイは今日に限って、いや、もしかして今日だからか、白のワンピースで……赤のアレで……はっきり透けていまして。


「いや、レイ赤いのが見えてるんだけど!」

「三倍見せてるぞ。レイだけど見せてるぞ」

「いや、言うてる場合か、ビショビショじゃねえか!」

「楽しいか?」

「どきどきはしてるよ!」


 下心も本心も透け透けにしてくれているレイにどきどきさせられっぱなしでしたとさ。

お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。

少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。

よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。


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