二部第22話 変態、愛娘の身バレ、オワタ
「と、トウカ!?」
岩の鎧……といっても、肩当や薄い胸当てだが、それがトウカの身体にくっついていた。
その見た目は、俺の狂気の仮面道化を、言ってしまえば粘土で幼稚園児が作ったようなもので……トウカは不満そうにそれを見てる。
「うう~、ぱぱのとちがう!」
そう言って、ぎゅっと両手を握り、ふんばるような体勢になって魔力を解放する。
するとトウカの身体についた岩がぐにゃぐにゃと変形しだす。が、
「ふにゃあ~」
魔力切れなのか、くらっとした様子でトウカがよろめくので、俺は慌てて支える。
すると、トウカは魔力の光と化して、俺の中に還っていく。
「……どういうことだ?」
「いやー、びっくりしたー。それが噂の魔力体の女の子か」
「……なんで知ってた?」
楽しそうに笑うエマを俺は睨みつける。トウカの情報はレイラさんによって規制されているはず。
「そう睨まないでって。シンプルに言うと、人なんてそんなもんだって。ただ、手は出されそうにないね、今は」
エマは俺と腹の中にいるであろうトウカをじっと見て言う。
ダンジョン庁だって、レイがリーダーとは言え、一枚岩ではないのだろう。
どこからか情報が洩れていてもおかしくない。それに、エマや鈩君のような予知や予言、はたまた情報収集特化の固有スキル持ちがいてもおかしくない。それで、トウカが知られている可能性はある。
だけど、エマがそう言う以上は『今は』安心なんだろう。
「……分かってくれたようで何よりだ。それに、さっき魔力阻害の踊りを踊ったから、ここで通信しようとしても無駄だからね……カマボコ」
エマはそう言って、カマボコさんの方を睨む。
カマボコさんはエマの発言に驚きながらも、態勢を整え、東江さん達を人質にしようとする。
だけど、ウチには他人の悪意を敏感に感じ取れる自慢の妹がいる。
「アガッ……!」
念動力で東江さん達をカマボコさんから引き離す。
そして、俺はそれを信じ、東江さんのいた場所を駆け抜け、後ろをとって逃げ道を塞ぐ。
「クッ……!」
「あんたのバックも馬鹿だね。アタシの固有スキルを甘く見過ぎてんじゃねーの? ずっと見えてたよ。変な繋がりがさ。いい? アタシは何者にも縛られないし、面倒な事はごめんだ。誰もが自由でハッピーな世界を作る。それを邪魔する奴は……」
エマがゆっくりとカマボコさんに近づいていく。
カマボコさんも覚悟を決めたのか、魔力を放出させ秋菜の念動力を外したようだ。
二本のナイフを逆手に構え、エマと向き合い……俺に斬りかかってくる。
流石A級、文句なしの速さ。だけど、悪手だ。多少、遠回りでも東江さん達を狙うべきだった。俺は、トウカが得た岩と泥の魔力を使い、泥を纏った岩の角を身体に生やす。
泥はナイフの勢いを止め、余裕で岩の角で受け止める速さにしてしまう。そして、そのまま泥はカマボコさんを伝わっていき、身体中にまとわりつき動きを制限させる。
その時にはもうエマは背後にいた。そして……。
「さあ、洗いざらい吐いてもらおうかな?」
エマは、低く恐怖を煽りたてるような歌を歌い始めた。
その魔力込められた歌はカマボコさんの耳へと流れ込んでいく。
あとは、アメリカさんのやり方に任せるべきだろう。
エマの歌と【StarGazer】の相性はいい。音と繋いで歌う音楽と星を繋いで物語を紡ぐスキル。これを応用することで色んな効果を生み出せる、らしい。
今、行っているのは恐らく精神操作による自白だろう。
こういう事もある。これが最前線の世界。これは向こうの問題であり、今は深入りすべきじゃない。
俺は東江さん達を岩餓鬼のいた部屋へ手招きする。あちらで大人しくしているのが一番だろう。エマが俺を見て苦笑いを浮かべていた。
そして、俺は秋菜の元に。
「あ、兄さん……」
「いいサポートだったぞ、秋菜。流石、俺の自慢の妹だ」
俺がそう言うと秋菜はふわっと優しく笑った。
そして、
「ににににににいさん、今の笑顔と一言録画でも欲しいから、ももももういっかい」
そう言った……。
録画でも?
今の一瞬で写真は撮ったのかな?
違う方向にもレベルアップしている妹に不安を感じながらも、一つ乗り越えた妹を褒めながら俺達の攻略は終わったのだった。
お読みくださりありがとうございます。
また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。
少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。
よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。
ハイファンタジー短編を書きました! こちらも是非……!
『英雄たちのアシナガおじさんが冴えない私なので言い出せない』
https://ncode.syosetu.com/n9045ib/
また、作者お気に入り登録も是非!




