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二部第21話 変態、空想家の泥団子喰わされ、オワタ

 固有スキル【StarGazer】。直訳すると星をじっと見る人、占星術師とかそういうのらしい。で、そこから転じて、【空想家】。


 エマ・ゴールドバーグの固有スキルは、魔力の『起こり』を星として見つけることが出来るスキルで、その星を読み取り、攻撃や防御につなげる。エマが出来ると信じれば信じる程その攻撃の成功率が上がるというとんでもスキル。

 ただ、不可能な事は出来ない。飽くまで、可能そうな要素だけだ。

 ブレスを起こせそうな魔力だまりの星を見つけて、魔力を吐き出す。歌を歌う事で散らばる魔力の星に反響させて身体強化付与や誘導を行う。相手の位置や弱点を見つける。

 全ては、エマの柔軟な能力と思考力だからこそ出来るものだ。

 そして、その為に、コイツは、たゆまぬ努力を続けている。


 彼女は、プロだから。

 まあ、


「いよっし、じゃあ、この泥で世界一綺麗な泥団子作ろうぜ!」


 普通に常識のない変人ってのもあるけど。


「兄さん……」


 秋菜が青白い顔でやってくる。その後ろには、東江さんや鈩君、上田さん、カマボコさんもいる。恐らく、秋菜を追いかけて来たんだろう。さっきの戦いも見ていたようだ。

 チクワさんが近づいてるし詳しい説明をしてくれるだろう。

 エマは綺麗な泥団子マジで作ってるし。

 なら、俺は。

 秋菜が近づく俺を見て悔しそうに口を歪ませる。


「わたし、何も、役に……!」


 俺は秋菜の言葉を遮って、頭を思いっきりぐしゃぐしゃにしてやる。


「ぐにゅ……! に、兄さん! ふざけな……」

「さっきの戦闘では、な。勘違いするなよ。お前は弱くなんかない。俺の自慢の妹だ。だけどな、本当に俺と一緒に来たいんなら強くなれ。もっともっと強くなれ! 俺は、お前が一人でも大丈夫で、怪我とかしないようになるまでは、俺が最前線に行くことになっても絶対に連れて行ってやらないからな!」


 俺がそう言うと秋菜は瞳を潤ませながらじっと俺を上目遣いで見つめる。


「じゃ、じゃぁ……強くなったら、兄さんと一緒のチームになって、一緒に行って、いいんだよね……?」


 そう聞いてくる。俺は返答に困るが……いや、もう決めていたことだ。秋菜を真っ直ぐ見据え、教えてやる。


「ああ、お前が本当にちゃんと強くなれたなら、一緒に行こう」


 秋菜はまだ、絶対的に経験値が足りない。最前線は俺もそこまで知っているわけではないが、絶対に過酷だ。俺が今まで出会った異常事態が普通の世界。そして、純粋に強力な魔物だけでなく狡猾で非道な魔物、狂気じみたダンジョン、それが毎日のように繰り返されることだってある。その上、人間同士でだって大変だ。個人や、各団体や国の思惑が入り乱れながらの攻略はシンプルにダンジョンを攻略すればいいってものじゃない。

 戦争なんだ。その中に秋菜を連れていきたくない気持ちは本当にある。いや、秋菜だけじゃない。俺の家族、友達は出来れば連れていきたくない。

 だけど、確実に近づいている。戦いが。そして、それが分かっているからこそコイツは。


「んん? なんだ、この泥団子はお前にはやらないぞ、ナツキ」


 エマは、みんなを連れてきたのだろう。今の自分達の状態では戦いにならないことを。

 東江さんも上田さんも唇をかみしめている。鈩君も悔しそうだ。

 【神託】と【StarGazer】は似た固有スキル。だけど、圧倒的にエマは使いこなしていた。

 もしかしたら、エマは鈩君にこそ自分の戦いを見てほしかったのかもしれないな。


「にっひっひ! できたー! はーい、じゃあ、どうぞお食べ」


 エマがそう言って俺に泥団子を差し出してくる。ツルッツルに磨かれた泥団子を。


「いや、結局俺に喰わすんかい!」

「ナツキじゃねーよ、ベイビーちゃんにだよ」


 そう言ってエマは俺のお腹の前に泥団子を差し出しじっと見つめている。すると……寝ぼけ眼のトウカが現れる。


「ト、トウカ!?」

「んあ~」


 おかしい。今までの流れなら、今日は中日で明後日までは出てこないはずなのに。


「この匂いにつられてきたんだよなー」

「ん……いただき、ます……」


 おおおおお! トウカいただきますが言えて偉いぞ! って違う!


「トウカ! それは食べ物、じゃ……!」


 俺の言葉を聞かずにトウカはエマから渡された泥団子を食べ始める。

 むしゃむしゃと何も気にせず美味しそうに食べ始めるトウカに俺達は呆気にとられ、エマだけがニコニコ笑ってる。


「エマ……どういうことだ?」

「ん~、わからん! トウカ、だっけ? この子っていうか、ナツキの腹に星が出てきて、この泥団子と繋がってたから、アタシはその繋がりを強くしただけだよ」


 トウカは凄く美味しそうに食べているから、悪い影響はないのだろう。岩餓鬼の泥を食べるトウカは……どんどんと食べて、全部食べ尽くしてしまった。


「ごちそうさまでぃた……」


 そして、ちゃんと両手を合わせてごちそうさま出来たトウカは偉い!

 だけど、大丈夫なの?! ぽんぽん痛くなってないの!? パパ心配!


「ト、トウカ、お腹痛くないか?」

「おなかー? いたくない! でも、あつい!」


 そう言ってトウカはおなかのあたりを触る。すると。


「ぱぱといっしょ!」


 トウカの身体から光が放たれ……その光が止んだ頃に、トウカの身体に、岩の鎧がくっついていた……。



 は?

お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。

少しでも面白い、続きが気になると思って頂けたなら有難いです……。

よければ、☆評価や感想で応援していただけると執筆に励む力になりなお有難いです……。


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