サイコロに厳しいギャル
三つのサイコロを振った。
出目は、五、五、三。
「合計十三、よし!」
あたしはいつもサイコロをもち歩いている。
何かに迷って困った時、判断をサイコロの出目に任せるのだ。
ルールは簡単。
奇数ならマル、偶数ならバツ。
例えば、ダイエット中、高カロリーなメロンパンを放課後に食べたくなった今。
食べるべきか、食べざるべきか。
答えは十三、食べて良し!
「うまぁ~」
サイコロで決めたのだから、何のうしろめたさも無い。
ちなみに特別ルールもある。
出目が一のゾロ目で三――これはクリティカルで大成功。
出目が六のゾロ目で十八――これはファンブルで大失敗。
「ちょっといいかな」
不意に声をかけられて、あたしはメロンパンに口をうずめたまま振り返った。
背が高く、整った顔立ちの男子が屋上の入り口に立っている。
「うわ、会長じゃん。急にどしたん、何か用?」
「うん……いつも一緒にいる友達は?」
生徒会長は妙に歯切れが悪い。
「ゆっこ達? それなら急にバイトのヘルプ頼まれたっつって……何、ひょっとして気になるコがいるとか? やだセンパイ、誰! 誰っすか!」
「いや……気になってるのは君、というか」
「ん?」
「君、いつも何かをうまそうに食べてるだろ。見ていて気持ちがいいなと思ってて……その、よかったら今度、一緒に飯でも食べに行って貰えないかと」
「ちょ、センパぁイ! 何言っちゃってんすか、それもうデートのお誘いっすよ!」
「俺は一応そのつもりなんだけど……どこかおかしかったかな」
「は?」
メロンパンを飲み下し、あたしは思わず相手に背中を向けた。
は? デート?
正直、憧れてたけど距離遠すぎると思ってた生徒会長。
それが向こうから?
何だこの急展開、どうすんの。
サイコロ……サイコロを振らなきゃ。
ポケットに手を突っ込む。
焦ったためか、サイコロは手元からこぼれて、地面に転がった。
出目は、六、六、六。
うそッ、ファンブルッ?
よりによって今?
やばい、大失敗だ。
ここから早く離れないと。
あたしは、慌てて一歩を踏み出すと――。
転がったサイコロを踏み割った。
「ど、どど土曜日とか! ……あたし今月シフトないんで」
こめかみまで顔が熱くなるのを感じながら、それだけ告げる。
「う、うん、土曜日だな。良かった、もの凄い形相してたからぶん殴られるかと思ったよ」
センパイと連絡先を交換しながら、考える。
いざと言う時のため、当日は三十個くらいサイコロをもって行こう。
何回ぶち割ってもいいように。
なろうラジオ大賞3 応募作品です。
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・テーマ:サイコロ
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