プロローグ
朝、腕の中で眠る女の甘ったるいシャンプーの香りで目を覚ます。
お世辞にも高いシャンプーとは言えない安っぽい香り。あまり生活は豊かではないのだろう…
『この後、アフターどう?寿司でも食ってその後は……』そう言って俺は指を4本立てた。
ぶらりと入ったキャバクラで俺の隣に座ったこの女。暗い店内でも中々の上玉だ。コロナ禍で収入減でもなきゃ4万程度で靡かなかっただろう。
ハーフタレントだと言ってたっけ?
最近ではハーフタレントのバブルも弾けて、余程頭の回転が早く弁が立たなきゃ需要はない。まぁ、そのおかげで俺も久々に濃密な夜を過ごせたわけだ。
マジマジと女の顔を見ていたからか、急に女が目を覚ました。
「ん…んん…おは…なーに?人の顔を穴が開くほど見たりして…」
「いや、中々可愛いなぁって…」
お決まりの褒め言葉に笑顔で照れる。照れ隠しからか急に饒舌になる。
「そう言えば貴方ってお仕事何してるの?このホテルの部屋も自宅がわりに常宿にしてるんでしょ?でも見た感じ社長さんって感じでもないし……」
「あー俺の仕事?それは…」
そこまで言った時、ベッドサイドに置かれた俺のスマホが震えた。見知らぬ番号に警戒しつつ電話に出る。
電話口で名乗った相手に
『なんで俺に⁈』とか『本物かよ?』と思いながらも背筋が伸びる。
相手からの要望を聞きつつメモを取り、スマホを置いた。
「お仕事?」
「あーそう。俺の仕事は殺し屋だから次のターゲットの連絡だよ」そう言って手でピストルを真似る。
「えー怖ーい〜♪」
「でも今のターゲットはお前だけどな。もう一回殺してやろうか」
我ながらクサイ台詞を吐いたなと思いながら、女の待つベッドに飛び込んだ。
女は全く信じてないけど俺の仕事が殺し屋ってのは真実。とは言え血は全く流さない。
でもターゲットにされた方は殺された方がマシって思ってんだろうけど………