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第26話 楽しい時間の終わり。そして

「それで誰が近いのか聞いた理由だけども、早速今日の案を試してみようかと思うのよ。使う案は最後の案よ。一緒にプレゼントを選ぶわ」

「良いと思います!」

「わ、私もです」


 二人が返事をするが、当の本人であるエミリーは反応に困っていた。


「エミリー、何かあるの?」


 エミリーはこくりと頷く。


「私の誕生日まで二か月もない。これじゃあ、かなりギリギリ」


 確かに二か月というのは短い。服など色々な準備をしていたらギリギリになる可能性が高い。

 それはプレゼント選びの時間だけではない。エミリーの誕生日の準備にかかる時間がある。エミリーの家は高い爵位ではないとはいえ、多くの貴族を呼ぶ必要がある。招待する貴族も準備があるので、招待状をできるだけ早く送る必要があるのだ。

 え? まだ五歳の私たちには関係ない? 時間がたくさんある? まあ、確かに多くが大人に任せることが多いけども、街へ出掛ける際には許可もいるし護衛だって必要だ。それを用意するのに時間がかかる。

 そういうことなので、ギリギリなのだ。


「ラヴィリア様! 私もその翌月なので超ぎりぎりです!」


 どうやらエミリーとライラの誕生日の月が連続しているようだ。

 こ、これは忙しい。


「困ったわね……」


 せっかくの誕生日なので、楽しくやりたいと考えていたのだけども、どうも私たちの誕生日プレゼントを買うという楽しいイベントは生易しいものではなかったようだ。


「あ、あの!」


 困っているとミシェルが声を上げた。


「お二人の誕生日プレゼントは一緒に買うというのはどうですか?」

「一緒に?」

「はい。時間がないので、それならば一緒のほうがいいかなと。これならエミリーさんは忙しいのは変わりませんけども、ライラさんのは余裕を持って終わります」

「……そうね。そちらのほうがきっと十分に時間が取れるわ」


 一人ずつ誕生日プレゼントを選ぶたいのだけども、今回はやっぱり諦めるしかない。

 その分その時はたくさんサービスをしよう。


「二人とも、申し訳ないけども、二人一緒で良いかしら?」

「はい! 私は問題ないです!」

「私も」


 二人とも納得してくれたようだ。

 よし、とりあえずこの問題は何とか解決。あとは早急に計画を立てることだ。


「ねえ、その時はみんなで泊まろうかと思うのよ」


 私は二人一緒に誕生日プレゼントを買ったほうが良いのではとなったときに頭の隅にあった一つのことを話してみる。


「そ、それってラヴィリア様と一緒の部屋で、ね、寝れるんですか!?」


 ミシェルが興奮気味に聞いてくる。


「ええ、もちろんあなたたちがいいのなら」


 そう答えると、


「大丈夫です! 問題ないです! それで行きましょう! お二人もいいですよね!?」


 ミシェルの勢いに釣られるように二人も頷いた。


「ふ、二人も良いみたいね。よかったわ」


 二人がミシェルの勢いに釣られて頷いたけども、まあ、嫌な顔はしていなかったので、問題はないはず。


「とりあえずみんな泊まれるということが分かったことだし、まる一日使って一人の誕生日プレゼントを探しましょう」

「あっ、いいですね! まる一日ラヴィリア様と一緒だなんて最高です!」

 

 ライラは大喜びだ。他二人も同じく。

 そこからは日にちは決まっていないけど、ある程度のその日の予定を立てた。

 予定を立てているだけというのにその時間はとても楽しかった。

 そんな楽しい時間も終わりを告げる。

 そう、帰る時間だ。残念ながら三人とも泊まるということはできない。今度は夜遅くまでお話できるようにお泊まり込みで招待しよう。

 で、今は夕食。

 いつものように父と一緒に食べている。


「ラヴィリア」


 突然、父から名前を呼ばれる。


「はい、お父様」

「今日は友人と遊んだようだが、どうだった?」


 ちょっとびっくり。

 まさかこのように父から長くなりそうな話を振ってくるとは思わなかった。父は寡黙なので、家族である私も一度に長く話すなどほとんどなかったのに。


「とても楽しかったですわ」

「そうか。あの子たちと会ったのは二回目だったな」

「はい、そうですわ」

「いい友人になり得るか?」

「ええ、なりますわね。彼女たちは将来も仲良くしてくれますわ」

「それは良かった」


 父は僅かに口端を上げて、多分笑みを浮かべていた。

 あまり表情を表に出さない父なので、こういうときの父を見るとこちらもドキッとする。


「そこまで言うのなら良き関係を続けることができるのだろう。そういう友は将来役立つ。爵位関係なく、な」

「お父様にもそのような友人が?」

「ああ、いるとも。彼らとは今でも連絡を取り合っている。皆、優秀で、時々相談にも乗ってもらっている。それは小さい頃からの交流があったからできたことだ。お前も将来困らないようにその子たちと固い縁を作っておきなさい。困ったときにきっと助けてくれるだろう」

「……はい」


 未来ではそんなに固い縁を作っていないにもかかわらず、私を慕ってくれた四人のあの子たちを思うと大した交流がなく、様々なところで助けてもらっていたことを思うとあの子たちには本当に感謝しかない。

 ふふふ、全く私のどこにそこまでの価値があるのだろう。

 ついそんなことを考えてしまう。

 きっとあの子たちに問いかけたら怒りながら力説してくれるだろう。


「あのお父様」

「何だ?」

「またしばらくしたらあの子たちと遊びに行きたいです、お泊まりで」

「ふむ、良いだろう。交流を深めることは大切だからな。勉学に関してはお前のメイドに任せているから指示に従いなさい。時期に関してもしばらくは何もない。いつでもいい」

「はい」


 よし! これで許可は取った! しかも、日にちは制限されていない。予定を決める上では大きなアドバンテージだ。後は私があの子たちに合わせるだけでいい。


「資金に関しては好きにして構わない。無駄遣いは許さないが、友人のために使うならいくらでもいい」

「ええ、もちろん無駄遣いはしません。きちんと友人のために使います」


 今のあの子たちには何のことかと思うけども、未来のあの子たちにお世話になっているので、そのお金をたくさんあの子たちに使ってあげたい。

 それが私にできる恩返しの一つだ。もちろん恩返しだけではないけどね。


「それと護衛に関してはお前のメイドに任せる」

「よろしいので?」


 シノはただの私付きのメイドだ。特別に大きな力を持っているわけではない。メイド長でもないしね。

 そのシノに護衛に関することを任せるというのは本来あり得ないことだ。

 私の頭で考えるが、やはり理由が思いつかなかった。


「ああ。私や他の者が決めれば、お前たちの周りを護衛で囲ませるだろう。が、しかし、そのような中、十分に楽しむことはできまい。そのようなことをさせないためにお前のメイドに任せる。きっと問題なく楽しむことができるはずだ」

「なるほど」


 確かにシノならば私たちの邪魔にならないようにと努めてくれるはずだ。きっと護衛の配置に口出しするのだろう。


「他に何か必要な物があれば私に言うといい」

「はい、お父様」


 夕食が終わり、就寝時間になる。


「お嬢様、今日のお茶会はどうでしたか?」


 一緒に隣で横になっているシノが聞いてくる。


「とても楽しかったわ。会ったのは二回目だけどもみんなそんな様子もなく話してくれたもの。私、あの子たちのこと、好きだわ」

「ふふふ、あの子たちもお嬢様のことを好きだと思っていますね」

「ええ、本人である私もよく分かるわ。隠すこともなく、その思いが向けられるからうれしくてうれしくて大変だったわ」


 三人の瞳に灯るあの光。あれを見ることができただけでも十分満足できる。


「あの子たち、ずっと私のことばかり話して、聞いているこっちは恥ずかしかったわ。私を褒め殺しにきているわね」

「私も聞いていてお嬢様が羨ましかったですよ」

「あら、シノも言われたいの?」

「当たり前ですよ! 同性同士とはいえ、あんなにモテるのはうれしいですよ! 私もチヤホヤされたいです。あっ、もちろんお嬢様が私をチヤホヤしてくれるのならそれが一番ですよ!」


 そう言ってシノがわざとらしく私に甘えてきた。

 もう、しょうがないなあ。

 珍しく甘えてくるシノの頭を抱え込むように抱きしめ、よしよしと頭を撫でた。


「……な、何だかチヤホヤというよりは甘えているだけですね」

「あ、あら? 違ったかしら?」


 こういうのもチヤホヤしていると言うかと思ったのだけども、どうやらこれは違うようだ。難しい……。


「まあ、いいです。お嬢様、しばらく甘えさせてください」

「私、一応あなたの主なのだけども」

「……たまには甘えたいです」


 しょうがない。ここは私の懐の広さを見せつけよう。

 しばらくシノの頭を撫でた。


「そういえば私、シノからご褒美をもらえる予定だったわよね?」

「え? そうでした?」

「そうよ。玄関でそう言ったじゃない」


 そのご褒美があったから、最初の挨拶は頑張れたと言っても過言ではないので、そのご褒美をもらいたい。


「あはは、そうでしたね」

「嫌だとは言わせないわよ?」

「もちろんちゃんとご褒美を与えますよ。ただ先ほどまで本当に忘れていたので、何をご褒美にしようかと考えています」


 むう、すぐには無理か。

 まあ、今はシノを甘やかしているし、シノが思いつくまでこうしていよう。シノをこうして撫でたりする機会は少ない。たまにはこうするのも悪くはない。


「こうして撫でられるの、嫌じゃない?」

「嫌じゃありませんよ。むしろ好きです。あっ、こういうことを頼むのはもちろんお嬢様だけですよ」


 それは喜んでいいのだろうか。


「こうしてお嬢様に甘えるのもいいですね~。私、かなり幸せです」

「……私も嫌いじゃないわね」


 こういうことを体験するとシノがよく私の頭を撫でる理由が分かる。何だかこうして甘えてくるのが可愛い。シノも撫でられる私を見て、そのようなことを思っているのだろうか。

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