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第24話 私の実力なら三人倒せる!

 見ている三人、いや、シノを入れて四人がごくりと喉を鳴らした。

 そ、そんなに見られると困るのだけど。というか、ちょっと怖い。

 とりあえず、言われた通りぬいぐるみを抱きしめた。


「さ、最高です!! ラヴィリア様、可愛いです!!」


 最初に声を上げたのはミシェルだった。

 ミシェルはいつもの大人しさを捨て、かなり興奮している。


「ですです! とても可愛いです!」

「お持ち帰りは可能?」


 他二人からも好評のようだ。

 え? シノ? メイドのシノも声には出してないが、雰囲気で喜んでいることが分かる。


「こ、これで満足?」


 ぬいぐるみを抱きしめるなんてポーズを見られるためにしたのは二回目だけども、一回目とは違って人の目が多いせいだろうか、やっているこっちはかなり恥ずかしい。


「もうちょっと! もうちょっと何かください!」

「も、もうちょっと?」


 ミシェルの注文にどうこたえようかと思ったが、そこで一回目のシノにされたあの時のことを思い出した。

 そういえば、シノには様々なポーズを教えてもらった。ミシェルの注文に応えるにはちょうどいいのでは?

 そう思ってさっそくやってみる。

 ぬいぐるみの頭に顔の下半分を埋め、そこから上目遣いで覗き込むようにして四人を見るようにした。もちろんその時の表情はいたいけな少女をイメージして。

 ど、どう?

 そう不安な口に出ない問いをするのは一度もそのポーズを見たことがない。いや、正確に言うと見たことはある。ただし、それはシノのポーズ。

 だけどもそれは本来の破壊力は存在していないと思う。

 そのポーズをしたシノは私に教えるために大袈裟にしていたし、そこまでの破壊力はなかった。

 つまり、私がした場合にのみ本来の破壊力が見られるということ。それを見たことがないため、そう問いてしまう。

 そして、その答えはすぐに出た。


「きゅ~~」

「はうっ」

「!!!!! !?!?!?!?」


 ばたんと倒れるミシェル、胸を抑えて思考が停止するライラ、真紅のように真っ赤になったエミリー。それぞれ別々の反応を示す。

 うん、どうやら間違ってはないみたい。

 え? シノ? シノは少し表情を崩したくらい。まあ、少し崩しただけでもかなりの反応と言っても過言ではないだろう。シノは完璧なメイドなので。


「ちょ、ちょっとミシェル。大丈夫なの?」


 ほかの二人はともかく、ミシェルは倒れたので怪我をしていないか、心配である。


「大丈夫です、お嬢様。こういうこともあろうかとミシェル様の周りにクッションを用意しております。なので、倒れた際に怪我はまったくありません」

「さすがね」


 よく見てみるとその言葉の通り、ミシェルはクッションに囲まれるように倒れている。痛そうとかはなく、気持ち良さそうだ。

 ちょっと試してみたい。


「それにしても、他の二人もまだ会話ができない状態ね」

「それほどお嬢様の破壊力がすさまじかったということです」

「……恥ずかしいけど、認めざるを得ないわね」


 これは私の必殺技にでもしておこう。恥ずかしいけど。

 つまり多用はせず、いざというときに使うということだ。

 まあ、使うことがないと良いのだけども。

 こういうのは純粋無垢な今の年齢だからできることで、大きくなった女性がするものではないだろう。今は精神は大人だけども、見た目が子どもということで少し恥ずかしい程度で済んでいるが、見た目も立派な大人になった姿でやればそこにあるのは痛い女性の出来上がり。

 それは誰も得をしない。やってるほうも見てるほうも。……一部のマニアには受けそうだけども。


「でも、シノ、あなたはいつも通りね」


 すでに二人きりの時にやっているとはいえ、三人の反応を見た後では何だか悔しい。もっと何か反応してほしいくらいだ。そう、一回目のときのような。


「いえ、いつも通りじゃないですよ。メイドはあまり表で表情を出すことは良しとされてませんから」

「じゃあ、メイドとしてのシノはかなり表情が崩れていたってことなのね」

「はい。これでも完璧なメイドですからね」


 完璧なメイド、ね。普段のシノを知っているか完璧なメイドのイメージがかなり崩れている。


「その完璧なメイドの私が思わず表情を崩してしまったのです。それほどお嬢様の破壊力はすさまじかったということです。誇ってもよろしいと」


 そう言われても素直に喜べない……。


「あっ、そろそろ三人ともお目覚めのようです」


 シノはすっと壁際まで下がる。


「ラヴィリア様! さっきの、あまりやらないでくださいね! あれは破壊力が高すぎです!」

「何度も受けるのには私たちの身が持たない」

「ら、ラヴィリア様のあれを、み、見ていいのは私たちだけです!」


 すっかりと回復した三人はすぐにそう言った。


「他の人たちにする予定はないわ。安心してちょうだい」


 一度は大人になった身。さすがにこれを他の人間にやればどうなるかは分かる。絶対にあまり良くないことが起こるだろう。色んな意味で。


「良かったです。ラヴィリア様のあれは私たちだけで十分ですものね」


 やや妖しい光を灯しながらミシェルが言う。


「です!」

「ん!」


 そして、他二人も。


「それでまた何かポーズを取ったほうが良いかしら?」


 ややノリノリな私。


「い、いえ! ダメです! こ、これ以上されたら私たちの身が持ちません!」


 ミシェルが慌ててそう言う。

 ほかの二人も激しく頷いていた。


「そう? じゃあ、止めておくわ。でも、またやってほしかったらやるわ」


 残念。


「そ、そのときは頼みますね」


 ぜひ次の機会に頼んでほしい。

 い、いや、これは別に私がやりたいからとかそういう理由ではない。うん、これは三人を喜ばせるためだ。


「ぬいぐるみはどうしようかしら?」

「あっ、それは持ったままでお願いします!」


 さっきとは変わって興奮気味にミシェルがそう願った。


「でも、普通に、普通に抱きしめるだけでいいですからね? さっきみたいにしなくていいですからね?」


 ミシェルが念を押す。

 むう、何だかそう言われるとやりたくなってしまう。


「さっきみたいのってこれ?」


 先ほどやったようにポーズを取って見た。


「きゅ~~」

「「!?」」


 突然の不意打ちにミシェルが再び倒れ、他二人は顔を逸らすことで耐えきったようだ。


「ラヴィリア様! やっちゃダメですよ!」

「これはわざと。私たちの反応を見て楽しんでる」


 二人はこちらを見ないようにしながら、そう抗議した。


「ふふふ、ごめんなさい。ついやりたくなったのよ」


 こういう悪戯は未来では全くと言っていいほどやったことがなかった。それをやってみて悪戯をする子の気持ちがよく分かった。これ、結構楽しい。

 でも、やり過ぎには気を付けよう。

 こういうのはたまに冗談でやるから許されるのであって、常日頃からやると嫌われる要因となるということを小説などの物語から情報を得ている。


「向いていい?」

「いいわよ」


 二人がこちらを向く。

 私がただ普通に人形を抱いていることを確認した二人は、ふう~と息を吐く。


「ミシェル様は避けきれなかったようですね!」

「私たちが避けれたのは偶然。少しでも遅かったらミシェル様のようになってた」


 二人は幸せそうな顔で気絶しているミシェルを見る。


「な、なんて幸せそうな顔を……!」

「一度目の私たちもきっとこんな幸せそうな顔」

「見ているとミシェル様みたいに避けないほうがよかったって思っちゃいます!」


 ライラの言う通りミシェルの幸せそうな顔を見れば直視しなかったのは間違ったことだったのではと思ってしまう。

 まあ、さすがにその顔を晒すのは恥ずかしいからやらないけど。


「ラヴィリア様、ミシェル様を起こしますか?」

「ええ、お願いするわ」


 ミシェルをこうした張本人が言うセリフではないが、ミシェルがこのままだと仲間外れにしてしまう。三人で話をして、ミシェルが起きてからもう一度となると面白かった話も二度目ということで場の空気が悪くなるし。

 二人はミシェルの体を揺すって起こす。


「あううっ、わ、私、またラヴィリア様のアレを受けてしまいました……」

「あれは仕方ないですよ! 私もあと少しで受けるところでした!」

「同じく。避けることができたのは運がよかった」


 落ち込むミシェルを二人は慰める。


「あっ、ラヴィリア様!」


 私に気づいたミシェルは可愛らしく頬を膨らませて怒りを露わにする。


「なに?」

「さっきのはずるいですよ! もうやっちゃダメ……とは言いませんけども、こ、心の準備が終わってからにしてほしいです」

「ふふ、分かったわ」


 ミシェルの抗議を見るともっとやりたくなるのはなぜだろうか。


「そういうわけでラヴィリア様、普通に抱きしめるだけでいいですからね? 次は本当の本当にです。振りじゃありませんからね! 本当に怒っちゃうくらい本気です!」

「わ、分かったわ」


 さすがに同じことを連続で繰り返すことはしない。

 それは面白みに欠けるし、やられているほうも嫌になってくる。それを知っているので、これ以上はやらない。

 それに今度のミシェルは本気の本気で言っているから。ちょっと怖い。


「やっぱりラヴィリア様はそうしているだけでも絵になりますね」

「ラヴィリア様のこの姿の人形が欲しいです!」

「分かる」


 いや、分からないでほしい。


「私の人形なんていらないでしょうに」

「いります! ラヴィリア様の人形があればずっと愛でていられます!」


 ミシェルの発言にやっぱり他二人も同意する。

 これは喜ぶべきなのだろうか。ただ、喜ぶ場合、私に似た人形を愛でる三人の姿を覚悟しなければならない。

 それは……うん、ちょっと嫌。

 私に似た人形を三人が愛でる。想像するとかなり不気味。


「三人とも私に似た人形なんて注文しないように」

「「「うっ」」」


 三人揃って同じ反応。

 え? まさか本当に注文しようとしていたの? は、話の冗談でほしかったのだけども。


「ラヴィリア様のお人形、きっと可愛い」


 終わったかと思った私の人形の話。

 だけども、エミリーは諦められずに私を説得しようとしてきた。


「ダメよ。逆に想像してみなさい。私があなたたちの人形を愛でているところを見て、不気味に思わない?」


 他二人も諦めていないようなので、一緒に言う。

読んでいただきありがとうございます。ぜひ下にある評価をお願いします。

(かなり遅れました。申し訳ございません)

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