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第13話 高い物になると色々変わる。

 さっそくフォークで刺して、目の前に持ってくる。

 うん、とっても美味しそうな匂い。すぐに食べてみたい。

 でも、見た目が……。


「あっ、そうだ! 食べやすいように切り分けましょう! 切り分けたら中を見ることができますし、一口で食べれますよ」

「……そうね。お願いするわ」


 フォークに刺したまま、シノに渡す。

 シノはいつの間にかナイフを手に持ち、奇麗に切り分けた。

 切り分けた断面は確かに肉の断面。

 外側とは違う中身に驚きしかない。


「どうですか?」

「確かに肉ね。食べやすくなったわ」


 肉だって分かるし、一口サイズだし。


「さっそく食べてみるわ」


 パクっと口へ入れる。


「!! お、美味しいわ!」


 思った以上に美味しかった。

 外側がカリカリで、内側が肉のやわらかさ。

 これは良い料理だ。


「こちらもお気に召したようですね」

「ええ! 何だか貴族の料理よりもこっちのほうが好きになってしまいそうね」

「あはは、気に入ってもらえてよかったのですが、家では我慢してくださいね」

「もちろんよ」


 ただ、私の予想ではいつか未来に庶民の料理を食べるようになると思っている。

 まあ、つまりは婚約破棄後ということ。

 まだまだ先のことだけども、それは変わらない未来のような気がする。

 そう考えたら、こうやって庶民の料理をたくさん食べておくというのは私が料理を作れるようになったときの作りたい料理のレシピが増えるということ。

 私の手料理を未来の伴侶に……。

 頭の中に浮かぶのは質素な家で幸せそうに暮らす私と愛する人との生活。私が料理を作り、それを二人で食べる。

 うん、この未来が私のゴール。

 それを再確認した。


「お嬢様?」


 っと、妄想し過ぎた。


「何でもないわ。それよりも他の料理よ!」


 そうしてしばらく私は屋台の料理を食べた。


「ふう、お腹いっぱいだわ」


 あれからいくつか食べ、お腹いっぱいになった。

 量は大人からしたら大した量ではなかったが、やっぱり体が小さくなったため、それで十分なほどだった。


「少しお腹を休めましょう」

「とてもうれしい提案なのだけども、時間は問題ないの?」

「はい。私の予定ではまだまだ余裕はあります」

「素晴らしいわ」


 今日で全てを回らなければならないというわけではないが、今日一日でたくさん楽しみたいというのはある。

 お預けがより良いスパイスとなるのは分かる。我慢して我慢してようやく得られたものは何となくより多くの喜びがある。

 が、今の私は我慢のできない子ども。

 今日一日で、という気持ちが大きい。


「じゃあ、十分ほど休憩するわ」


 とはいえ、休憩は必要。今日でたくさん回りたいが、目の前のことに夢中な子どもの私はお腹いっぱいで動きたくないという欲求に従う。

 休むためにシノに体を預ける。

 本当はシノの肩に頭を乗せたかったのだけども、身長差があるので胴と腕のくぼみに頭を乗せている。と同時にシノの腕は私の腰に回せている。


「シノっていい匂いがするわね」

「!! も、もういきなりなんですか? びっくりするじゃないですか」

「ふふふ、だって言いたくなったんだもの」


 おんぶやお風呂などでくっつくことは多いのだけども、こうしてふとくっつくとどうしても五感が敏感になる。で、つい言葉に出てしまった。

 まあ、私の偽りのない言葉なので、許してほしい。

 そう思っていたら、


「そういうお嬢様こそ、良い匂いですよ」


 シノにそう言われた。

 その瞬間、一瞬で顔が熱くなった。

 自分の体臭を気にしているからとかそういうのではない。多分照れるとかそういうのだろう。


「あうっ」


 シノの顔を見るなんてことはできず、俯いたまま休憩時間を過ごした。

 休憩が終わると注ぎは馬車に乗る。

 馬車は街の中を移動する便なので、いつも使っている馬車と比べるととても質などは悪い。人を多く乗せることを考えているため、とても狭い。


「人が私たち以外にいなくよかったですね」

「ええ。人がたくさんいたらさすがに乗りたくはないわね」

「ですね」


 将来庶民に近い暮らしをするのだろうと思っている私だが、やっぱりこういうところはある。

 馬車が歩くよりは速く、走るよりは遅い程度のスピードで走り、約ニ十分ほどで目的地の近くへ着いた。

 先ほどの通りと違って、人は多くはない。

 店の雰囲気も高級感があり、普通の庶民を寄せ付けないものがある。

 この店に入れるのは最初に勇気を入れて入ったものか、私たちのようなすでに慣れている者のみだ。

 ちなみに私は問題ない。これでも未来を生きた人間。こういう店には何度も入ったことがある。

 まあ、ここよりももっと高級な店なんだけども。

 つまり、このくらいの店なら怖気づくなんてことはない。


「やっぱり先ほどの通りとは全然違いますね~」

「そうね。騒がしかった通りとは反対ね」


 人が多くない通りは先ほどの通りのような活気はない。


「こういう通りはどうですか?」

「悪くはないわね。どっちも好きよ」


 騒がしいのもこういうやや静かなのもどっちも好きだ。

 まあ、他の貴族だったら私のような反応は得られないと思う。特に高位の貴族は。

 私も高位だけども、将来を庶民、またはそれに近い地位で暮らそうとおもったりする程度は抵抗感はそんなにない。私が特殊なだけだ。


「シノは?」

「う~ん、そうですね。騒がしいほうが結構好きです。買い物をしているって感じがしますから」

「そう?」

「はい。店員の呼び声や客の話声。私の買い物はこれがないと物足りないって感じです」


 さすがの私もシノのそれにはまだよく理解できない。


「それで目的の店はどこなのかしら?」

「はい、歩いてすぐです」


 その言葉通り、歩いてすぐに目的地の店に着いた。

 こちらは最初に言ったおもちゃ屋とは違って、外観からも高級感が漂っている。

 とはいえ、近寄りがたいというわけではない。

 こちらはおもちゃ屋ということもあり、子どもたちの声でいっぱいだ。

 まあ、この通りは高級系の店が多いとはいえ、質のいいものを買いたいという人はいる。

 おもちゃもこちらのほうが色々と質などがいいのだろう。最新のもあるようだし。

 ただ、こちらの子どもは年齢層が高い。

 それはおもちゃが単純なぬいぐるみや積み木などではなく、頭を使う物が多いからだろう。

 でも、私のような子どもが全くいないというわけではない。

 女の子ようの売り場にはやっぱりぬいぐるみなどがある。それも先ほどよりも質のいい奴が。

 ただ、方向性が違うので、買って損したとかそういうのはない。


「こっちのも良いわね!」

「はい、そうですね!」


 シノも怪しい笑みを浮かべて同意する。

 ここで買うのは人形とぬいぐるみ。

 先ほどの店では買わなかったぬいぐるみだが、買った理由は私が持っているぬいぐるみほどではないが、質が良かったのと私の持っていない種類だったので、買うことを決めた。


「ふふふ、たくさん買ったわ!」


 好きな物を買えたということで、私のテンションはとても高い。


「よかったですね、お嬢様!」


 人形などを買ったので、次はドレスなどを買う。


「ドレスはどこで買うの?」

「はい。お嬢様のいつも買っているお店ではありませんが、この街で一番の店です」

「いつも行っている店と比べると?」

「……やや劣りますね」


 まあ、それは仕方ない。

 私がいつも行っている(未来でも)店は王都にある。王家御用達とかそういうものはないけれども、かなり気に入っている店だ。


「まあ、いいわ。そこへ行きましょう」


 シノが選んだ店だ。悪い店ではないのは確か。

 そう思って実際に行ってみると、結構悪くはない外観。中に入り、店員の反応を見る。悪くはない。

 高級系の店の中には自分の立場を勘違いして、金持ち以外は客じゃないという店があるという。

 私は見たことないけど。

 少なくともここは違うようだ。


「いらっしゃいませ」

「あっ、すみません。この子の服をオーダーメイドしたのですが」


 一応、お忍び的なやつなので、シノは私のことを『お嬢様』ではなく、『この子』と呼ぶ。

 これに関して怒りなどそういうのは沸かない。むしろ、シノにはもっと親しく呼んでもらいたいな、なんて思っていたり。


「どのようなデザインに?」

「そうですね。ワンピースでお願いします、白の。それと華美ではない飾りを付けてください」


 ちなみにシノが相手をして注文しているが、ドレス、いや、服の内容に関しては何も聞いていない。

 あれ? ドレスじゃなかったっけ?

 まあ、ワンピースでも可愛いので問題はない。


「かしこまりました。では、軽くスケッチをさせていただきますね」


 店員は一旦店の奥へ向かった。


「シノ、ドレスではなかったの?」

「ドレスなんですが、ここのデザインなどを考慮するとワンピースなどのほうがよろしいかと思いまして。お気に召しませんでしたか?」

「いえ、良いわ。確かにここにある服はドレスというよりも、服などが多いわね」

「申し訳ございません、お嬢様」

「謝らないで。問題ないわ」


 公式な場ではないので、別にドレスでなくてもいい。

 そうだ! お茶会の手紙にはドレスでなくてもよいと書いておこう。


「他にも何か買ったほうが良いかしら? 一着だけというのは少ない気がするわ」

「では、何着か買っておきましょう。私が決めても?」

「いいわよ。でも、きちんと私に似合う服を選びなさいよ?」

「もちろんです! お嬢様に似合う服を選びますよ!」


 シノが張り切っているので、きっとその言葉通り私に似合う服を選んでくれるだろう。

 しばらくすると店員がスケッチブックを持ってくる。

 まだそんなに時間はかかってはいないが、すでに描き終えたようだ。


「どうでしょうか?」

「中々いいですね。これでお願いします。他にも頼みますのでそれもお願いします」

「はい」


 それからはシノと店員との話し合いになる。

 え? 私? 楽しみにしていてくださいねとシノに言われて、別の場所で待機している。

 ちなみにジュースが用意されている。

 この店、中々サービスがいい。

 時間が進んでケーキを食べ終わった頃、シノが帰ってきた。


「終わりましたよ!」

「もう! 遅いじゃない! こっちは暇だったのよ!」

「ふふふ、申し訳ございません。ですが、きちんと似合う服を頼みましたよ!」


 むむっ、そう言われるとわくわくのほうが大きくなって不満が消える。

 しょ、しょうがないなあ。ここは許してやろう。


「分かったわ。楽しみにしているわ」


 服はオーダーメイドということもあり、今日持ち帰ることはできない。後日持ち帰りになる。

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